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3-22.奪回作戦(1)

 よし、出発準備オッケーかな?

 一応、マリア様と家族に挨拶してから行こうかな。


「マリア様、それでは偵察を兼ねて散歩に行ってきます」

「ヒカリさん、私が言うことでは無いけれど、命を最優先で守って頂戴ね。

 貴方には母親としての役目もあるのだから。

 万が一のことが有ったら、彼女や彼らが悲しむわ」


「承知ました。肝に銘じます。緊急事態の際は念話でのご連絡をお許しください」

「勿論よ。いってらっしゃい」


 よし、次はリチャードだね。


「リチャード、4人で作戦を練ったから散歩に出かけてくるよ。良いかな?」

「ヒカリ、散歩なんだな?」


「うん。通行証を預けても良いよ?」

「お前は前科があるから、そんなものは役に立たない。

 魔族と人族の全面対決になるようなことは無いな?」


「無いよ。散歩するだけだし」

「フウマが明日出発する。ヒカリが求めている情報を得るためにだ。その結果を待つわけには行かないのか?」


「村まで片道一週間以上掛かるって、クレオさんが言ってた」

「ああ。魔族が迷宮から溢れた村よりは近いらしい。だが、道が整備されていなくて険しいため、その分、移動に時間が掛かるらしい。

 空飛ぶ卵も使わないのだろう?」


「あれは、話題に出しちゃダメだってば……」

「ああ、スマン……。だがな……。」


「うん?」

「正直心配だ。

 ヒカリの『ちょっと行ってくる』が、後でとんでもないことになっていることが多いからだ」


「だから、散歩だってば……」

「まぁ、良い。リサとシオンは挨拶したのか?」


「朝ご飯を一緒にたべたじゃない」

「片道一週間以上の距離だぞ?」


「リチャードが身体強化レベル2と飛空術を組み合わせることが出来れば、距離の概念が変わることが判るよ。

 ただ、普通の生身で空を飛び続けると色々と問題があるから、別の魔法も必要になって来るけどね。

 リチャードには、留守番して貰っている間、飛空術までは身に着けておいて欲しいかな?」

「ああ。リサと一緒に学んでおく。念話の使い方についてはシオンと良く話をしておくことにする」


「シオンは割と普通の子だから、あまり無茶させないでね?」

「ヒカリ……」


「うん?」

「分かってて言ってるよな?」


「なにが?」

「シオンも普通の子ではない」


「チョッとだけ、成長が速いのと、水の妖精の加護持ちなぐらいで……。

 あと、ちょっとだけ不思議な前世の記憶をもってるかも?」


「聞いてないぞ?」

「何が?」


「妖精の加護持ちだと?」

「ええ?」


「何を言ってる?」

「何をって、何が?」


「妖精の加護が得られたら、女性なら聖女認定。男性なら英雄または勇者として語り伝えられる。

 上皇妃のシルビア陛下が聖女なのは妖精の長ドリアードの加護持ちだからだ」


「ああ、うん。じゃあ、今の話は無しにしよう。後にしよう」

「ヒカリ?」


「ほら、散歩の時間がなくなっちゃう。皆も待ってる」

「シオンに聞くぞ?」


「良いよ。シオンじゃ何が何だか分からないから」

「なら、リサに聞くことにする」


「リサも判んないよ」

「なら、母に聞く。クワトロに聞く」


「マリア様もクワトロも判んないよ」

「誰なら分かるんだ!」


「分かってても、判らない振りをするから、誰に聞いても判らないよ」

「なんなんだ、それは……」


「念話とか身体強化レベル2と同じ話だから……」

「全然わからない。だが、ヒカリだから仕方ない。飛空術を習得してから改めて質問をする」


「うん。じゃぁ、行ってくる」

「ああ、気を付けてな」


 うん。この最後の部分が普通の会話なんだと思う。

 『ヒカリだから』をさりげなく混ぜられてるけどね。


 何で散歩に行くだけなのに、こんなに挨拶が長いんだ?

 リチャードもイライラしてるだろうね……。

 まぁ、ゆっくり考えて行こう……。


ーーー


「みんな、お待たせ」

「ヒカリさん、宜しいので?」


「うん。クレオさん、案内宜しく。一応、みんな光学迷彩を掛けるからちょっと待っててね」


「ヒカリさん、直線的に移動できず、おおよその道を上空から辿る形になりますが、宜しいでしょうか?」

「うん。迷子にならないならそれで良いけど、村に到着した後で、索敵し忘れていたとか。そういうのは無しだよ」


「了解です。


 今回目指す修道院があった村は、ある程度大きな村であり、前回の上級迷宮のある村と同じ規模と伺っています。そうであるならば、上空から見分けることも容易いと思います。

 また、それなりの金額を積み上げて、地図も入手しておりますので、地形と現在地から、凡その距離も割り出すことが出来ると思われます」


「色々と準備ありがとうね。 ステラとユッカちゃんも大丈夫かな?」

「ヒカリさんの散歩に付き合うのは慣れていますわ」

「お姉ちゃん、冒険だよ!本気出して良い?」


「二人ともオッケーだね。じゃ、4人で仲良く飛ぼう。

 クレオさん、先頭で道案内をお願いね。

 あれ?念話は未だだっけ?」


「大丈夫です。間に合いました」

「うん。だったら、何か問題があったら、直ぐに念話で知らせて。『お腹が空いた』とか、そんなのでも大丈夫だよ」


「承知しました!」


ーーー


 王都から南東方向に向かって、ジグザグと飛行する。

 ジャングルの中に道が見え隠れしているから、どうしても直線的に飛ぶことは出来ないね。クレオさんなりに地図を見ながら自分なりの目印を見つけて、その区間ごとに飛んで確認してを繰り返している。


 朝から出発して、半日ぐらい掛けて遠くに修道院らしきものが見えてきたので、一旦着地してご飯をすることにした。


「皆様は、いつもこのようなペースで移動するのですか?」と、クレオさん。

「いつもでは無いわ。ヒカリさんと一緒のときだけよ」と、ステラ。

「いつもは、こんなに遠くへ出かけない。ヒカリお姉ちゃんと一緒のときだけだよ」と、ユッカちゃん。


「つまりは、ヒカリさんと行動するときは、飛ぶことが多いのですね」

「え。あ。ええと、馬車も使うよ!あと、走るときもあるよ!」


「分かりました。ヒカリさんの道案内をするときは、上空からの移動を視野に入れて地図を作り、目的地へ到達することを心掛けます」


「クレオさん、街中とかは飛ばないからね?」

「ヒカリさんは、飛びますわ」

「お姉ちゃんは、飛ぶよ」


「承知しました。いつでも飛べる様に心掛けます。

 それでヒカリさん達はいつも活動的な軽装を心掛けていらっしゃるのです」


「私は汚れても良い格好が好きなの。メイド服とか、鎧とかドレスもあるけど、おいてきちゃったよ」

「私はエルフ族の正装ですわね。

 森の民ですので、華美な衣装は基本的に行動の妨げとなります。

 最近はヒカリさんの影響を受けて、杖すら持たないことが増えてますけどね」

「私はお母さんが作ってくれたものを、エストさん達が手直ししてくれていて、それを着ているの。でも、カバンにはニーニャさんが作ってくれた鎧も入っているの」


「そうでしたか……。

 そうしますと、着替えの衣装とかは不要でしたか……。」


「うん?」

「1日2回の着替え3日分と、予備を3人分ご用意させて戴きました」


「日帰りじゃないかな?領地マーカーを置いておけば、次回からは直線的に飛んで来れるから、もっと早いよ」

「ヒカリさん、領地マーカーは設置させて戴くとして、日帰りは無理かと思います」


「なんで?」

「見張りの交代時間の監視、手薄なポイントの確認、行動経路と避難経路の確保。それらを魔族に察知されない様に慎重に進める必要があります」


「索敵なら、もうちょい近づけばできるよ。

 こっちが検知されていないことが判れば、光学迷彩だけ纏って堂々と村の中を調査すれば良いし。あとは、罠とか結界が無いかを確認して、解除しながら教会に入るだけでしょ?」


「ヒカリさん、それは皆様で共有している作戦なのでしょうか」

「魔族が何をしてくるか分からないけど、人間に類する行動をとるとすれば、今言った方法で攻略できると思うし、ステラやユッカちゃんも同じことを考えていると思うよ」


「ヒカリさんは何と戦ってきたのですか?」

「クレオさんと一緒に上級迷宮をクリアしたでしょ?あんな感じ」


「知性のある魔物は少ないです。こちらの作戦の裏をかくことは無いでしょう」

「そういう意味では、エルフ族の族長代行には参ったねぇ~。えらい被害が出たよ」


「ヒカリさんが負けたのですか?」

「勝負は勝ったけど、被害が甚大。天災級の被害だったよ」


「ステラ様の前で失礼ですが、エルフ族の方達は天変地異を呼び起こせるというのが本当だったということですか?」

「うん。人族なんか簡単に滅ぼされるね。ステラにお願いして、助けて貰ってるから大丈夫だと思うけど」


「す、ステラ様、出来れば南の大陸の人族にもご加護を戴けますでしょうか」

「クレオさん、ヒカリさんの言うことを真面に取り合ったらダメよ……。

 早く行動を起こした方が、帰りが暗くならなくていいわ」


「は、はぁ。気を付けます。それでは早速、索敵を掛けながら進みます」


 なんか、こう……。

 朝のリチャードに続いて、ステラの物言いに納得いかないんだけど?

 でも、早く行動を起こすことは賛成だから、黙ってついて行こう!


いつもお読みいただきありがとうございます。

明日(4月5日)までは、なんとか連続更新できる。(はず!)


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