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地味・ボンヤリの伯爵令嬢、俺様系王太子殿下と魔女討伐に抜擢される ~残念鈍感美少女が単にイロイロ巻き込まれるだけの話  作者: buchi


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第60話 王家側の視点(紹介前)

数日前のある夜、学園の迎賓館でアレク殿下は陛下の侍従と秘密裏に会っていた。


侍従とはマックスウェル卿のことだった。

陛下の幼馴染で、公爵家の次男。王家の血筋でもある。よく太り、半分眠ったような目をしていたが、彼が来たと言うことは、その場にいる全員の緊張を誘った。


全員とは、アレク殿下と卿のほか、エドワードとローゼンマイヤー先生がいた。

殿下と侍従は腰かけていたが、他の二人は立っていた。



「殿下はローザ・ウォルバート嬢との婚約をご希望ですが、それについての国王陛下のご意見をお伝えするため、マックスウェル卿はお越しになられました」


お付きのエドワードが会合の目的を告げた。マックスウェル卿がうなずく。


アレク殿下は表情を変えなかった。


「ウォルバート家は裕福で、古い家系だ。領地も王城に近い一等地を広く治めており、当主も有能な人物。ただ、爵位は伯爵位と、王家と縁を結ぶには低すぎると陛下は判断された」


マックスウェル卿は話し始めた。アレクは黙って、きわめて冷静に聞いていた。


「私が陛下から最初のお尋ねを受けましたのは、親善パーティーの前でございます。その時の陛下のご判断は、親善パーティーにローザ様を伴って出るのはよろしくないとのご判断でございました」


エドワードは言った。


「それなら、なぜ、親善パーティーにローザを連れて行くことに、ああも簡単に許可が出たのだろうか?」


アレクが当然の質問をした。


「親善パーティーの参加は、レオ殿下の強いご推挙によるものでございました」


マックスウェル卿が言った。


「どういうことだ?」


アレクがわずかばかり眉をしかめて聞いた。


ローゼンマイヤー先生が、マックスウェル卿に促されて説明した。


「わたくしからも推薦させて頂きました。先を見越しました。もし、ローザ様の魔力が判定どおりとするなら、これは国にとっての大問題でございますから」


卿は平板な口調で言った。


「私は当然、白の魔法など信じなかったし、どれほどの力なのか知らなかった。レオ殿下が陛下に説明し説得した」


アレク殿下とエドワードは、内心げんなりした。またか。またレオ殿下か。


「アレク殿下の魔力は知っていた。私が知らなかったのは白の魔法だ。あれほどの力は脅威だ。人の心に強い影響を与える……戦時には最強の武器になり、平時には人心をまとめ上げることに資するだろう」


「従いまして、国外は出すことはもってのほか、国内においても、この事実が明らかになれば、教会勢力をはじめとした各勢力の争奪戦が予想されます」


「大げさじゃないのか? そんな大した力ではないと……」


アレクは言いかけた。まあ、妙なものが視える程度だろう。石油とガソリンの区別がつかないのはどうかと思うが。


「ローザ嬢の力は無限」


ローゼンマイヤー先生は宣言した。


「アリス・フィロッツィ嬢が最初にあの城へ行った時に、修道院の祈祷所に地図が仕込まれていたと言っていたのを覚えていますか?」


「あ、ああ」


「今や、全国の祈祷書のほとんどがこの有様です。教会や修道院は気味悪がって、悪魔の仕業だと不安がっている」


ローゼンマイヤー先生のしわがれた手にある祈祷書は、一枚目のページが黒く変色していた。アレクは奇妙なものを見る目つきで祈祷書を眺めた。


「なぜ黒いのだ。どういうことなんだ?」


「元々魔女の力のあるものが視れば地図が読めるように、魔力を仕込んであったのでしょう。魔女がいなくなったので、魔力も消えて黒に戻ったのでしょう」


「それは魔女を倒したアレク様がすごいと言うことになりませんか?」


エドワードが尋ねた。


「いいえ。むしろ、魔女の力が膨大で巧妙なのでしょう。でも、瞬時に黒くなったわけではない。徐々に黒く染まっていったそうです」


アレクは思い出した。


「ああ、ローザがそう言っていた。魔女の影響を徐々に消滅させると。しばらくなら持ちこたえられるからと」


ローゼンマイヤー先生は、ビックリした。

あきれたように、アレクを見た。


「知っていたのですか? それなのに、何もお考えにならなかったのですか?」


「ローザが自分でそう言っていた。そんなものかと思っただけだ」


「そんなことが簡単に出来るわけがありません。私はアリス様に聞いたのです。城の崩壊も普通のスピードではなかったと。落ちるスピードが違っていたと。時間を止めたのか、人の感覚を変えたのか?」


アレクは黙っていた。異常なことだらけのあの日、シャンデリアの落下速度が遅くなったことも、城の崩壊に時間がかかったことも当たり前のように思っていた。


だが、魔女たちはもう死んで、いや、消えていなくなっていた。魔力も当然一緒に消えたのだろう。


「どちらにせよ、すべてローザ嬢一人の力でしょう。この祈祷書の紙の色も」


四人は黙った。


「それはどれほどの力なのか?」


しばらくたってから、アレクが聞いた。ローゼンマイヤー先生は答えた。


「わたくしは三日前、陛下にローザ・ウォルバート嬢の話をさせて頂きました。わたくしは陛下に説きつけました。ローザ嬢を国外に出してはならないと」


マックスウェル卿がおもむろに言った。


「彼女に罪はない。だが、みすみすあれほどの力を流出させるわけには行かない。これがわかれば、総司教様は必ずやローザ嬢を聖女認定して教会に取り込むだろう」


ローゼンマイヤー先生が付け加えた。


「敵兵は錯乱させられるでしょう。戦いにならない。病気の者のうち体内の力がまだ残っている者は聖女の力、すなわち白の魔力で回復させることが出来る」


アレクは、仰天した。そんな案件になっているだなんて全く知らなかった。


「あなたはどうなさるおつもりですか? 殿下?」


マックスウェル卿が、垂れ下がった(まぶた)の下から、アレクをにらんだ。


「え? どうとは?」


「このままだと聖女認定されてしまいます。教会にとらわれ、ローザ嬢は、一生独身……」


アレクは一瞬で脳みそが沸騰(ふっとう)した。


なんのためにこの会合が開かれたか、をようやく理解したのだ。


「王家に取り込むから!」


彼は叫んだ。


「いいか? 教会などに手出しさせん。いいように使うつもりだろう? ダメだ。王家のものにする!」


「ええ。陛下もそうおっしゃっていましたよ」


薄ら笑いを浮かべて、マックスウェル卿が言った。


「アレク殿下にその気がないなら、少し年が離れるが、弟君の誰かと婚約させると」


アレク殿下はエドワードをギロリと見た。

初めて、エドワードは、アレク殿下をちょっとだけ怖いと思った。

だが、エドワードはそれは優雅に微笑んだ。


「お任せくださいませ。殿下」

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