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地味・ボンヤリの伯爵令嬢、俺様系王太子殿下と魔女討伐に抜擢される ~残念鈍感美少女が単にイロイロ巻き込まれるだけの話  作者: buchi


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第58話 紹介された男

アレクが立っていた。その部屋にはアレクだけしかいなかった。


まっすぐでサラサラな黒い髪、薄青い目、それは意味ありげにもなるし、意地悪そうにも見える。

だが、今はじっと見つめていた。


なぜ、アレクが?


「エドワードの同僚だ」


アレクが自己紹介した。


「……え?」


「私がエドワードが見つけてくれたあなたの婚約者候補だ」


アレクはローザの方へ一歩近づいた。


そして、その手を取った。


「ローザ、結婚してくれますか?」





「カスターシャ姫との婚約は……」


「断ったよ。もちろん」


付け加えた。


「あなたがいるのに、ほかの人のことなど考えられない」


「え?」


「そんなに僕のことが嫌いだった? 魔女退治ではあんなに距離は近かったのに」


ローザは顔をそむけて、アレクの直視を避けた。


「いえ……。嫌いだなんて、そんな……」


「ケネスの方が好きなのか?」


声が険しくなる。思わずローザは言ってしまった。


「違うわ!」




ケネスと一緒だったら、彼はローザにいろいろ命令したことだろう。

薪を拾って来いとか、火の番をしろとか。


幼馴染のケネスは完ぺきな貴公子だった。だけど、ぼんやりのローザを放っておいてくれない。

無意識のうちに、ケネスはローザを縛っていた。彼の気に入る行動を常に期待している。

ローザがマヌケをすると静かにとがめるだけで、次はちゃんとしようねとやさしく言ってくれるが、許してくれるわけではない。

彼の言うとおりにすると満足げだ。ローザを愛すれば愛するほど、要求も大きくなっていく。


でも、アレクは違う。彼に対しては自由だった。好き放題に言えるし、向こうも好きなことを言ってくる。だけど、アレクはローザが本当に嫌がることはしなかった。彼はローザの心を読めるのだ。黒の魔法使いのくせに! なぜだかわからないけど。




「じゃあ、誰が好きなんだ? ケネスより、俺の方がずっと顔はいいんだぞ?」


出たな。俺様発言。ローザは呆れてアレクの顔を見た。そして真っ赤になった。


アレクは本当にきれいな顔をしていた。

そして、その目が真っ直ぐにローザを捕らえていた。



カスターシャ姫との婚約話を聞いた途端、アレク様を好きなんだと気が付いた。

でも、許されない。

どんなに欲しいと心の中で思っていてもダメだ。


だけど目の前で今、それがひっくり返されてしまった。



「それから、ローザはいろいろ言ってたが、ウォルバート家の場合、ヴァイオレットより、姉の方がずっときれいだからな。ほんとうだ」


「え?」


「親善パーティーで見たよ。誰よりもローザが一番きれいだった。わかってないな。自分でわからないかな?」



アレクはローザの手を取って指輪を探した。


「指輪はどうしたの?」


「女官を通して、レオ殿下にお返ししました」


アレクはちょっと傷ついた顔をした。


「俺は持っている。どうして、そんなことを」


「だって、女官たちが……もう殿下とカスターシャ姫との婚約は決まっていると」


「バカなことを。信じたのか」


「だってまさか事情通の女官が殿下の婚約を知らないはずないでしょう……婚約者のいる殿方に近づくことは……」


それで避けられていたのか。


「俺を嫌いなのか、ローザ、そうではないと言ってくれ」


薄青い目は真剣だった。


ローザは絶体絶命な感じに危機を覚えた。

ケネスに愛を告白された時とは全く違う危機感だった。


この手を取れば、そのままアレクに抱きしめられてしまうかも知れなかった。


そして、ケネスと違ってアレクに抱きしめられたら、心が一杯になって、満たされて、猛烈に恥ずかしい気がするけど、もうそのまま離れられない気がする。


一生懸命、目を背けてきた 自分ではどうしようもない事実を、本人を目の前にして認めろと言うのか。


ローザが言わない限り、許してもらえそうになかった。


「アレク様、好きです。本当は大好きです」

62話で終わります。

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