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地味・ボンヤリの伯爵令嬢、俺様系王太子殿下と魔女討伐に抜擢される ~残念鈍感美少女が単にイロイロ巻き込まれるだけの話  作者: buchi


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第54話 身分違い

旅は迎賓館で始まり、迎賓館で終わった。


王宮での王弟殿下と国王夫妻との会見が終わると、ローザとアレクは学校へ帰ることになっていた。



ローザが馬車を降りてアレクと一緒に迎賓館へ入ろうとしたところで、冷たい目をした女官に止められた。


「ウォルバート伯爵令嬢はこちらでございます」


別の部屋に入るように、うながされた。




「お着替えを済ませられましたら、学校の寮に戻られて結構です」


何人かの女官が黙って着替えを手伝ってくれたが、ローザに見えないところで誰かが聞こえよがしに言っていた。


「王太子殿下におかれては、カスターシャ姫とのご婚儀も近いと言うのに、なぜ、こんな格下の伯爵令嬢などとご一緒にお出かけになられたのでしょう?」


「王弟殿下のご命令で。親善パーティでダンスを踊ったのも王弟殿下の命によるものだったそうですわ。その娘はお勤めは立派に果たしたとのこと。もう、二度と王太子殿下とご一緒されることはありますまい。あまり、このような娘の話を広めてはなりません。カスターシャ姫様に失礼でございます」


着替えを手伝ってくれた女官たちは誰も一言も発しなかったが、全員に、その声は聞こえているに違いない。



知らなかった。アレク様には婚約者がいたのか。


急にお腹の中までスーと冷えていくような気がした。


信頼していたものが消えていく気持ち。


身分違い。


考えてみればアレク殿下に婚約の話が進んでいても当たり前だった。

彼も、もうそんな年頃だろう。それに一国を担う王太子殿下に、隣国の王女はふさわしいと言えた。


着替えを手伝っていた女官のうちの一人が、小気味よさげにチラリとローザの顔に目を走らせた。


わざと自分に聞かせたに違いなかった。


無関係。

そう。自分とアレク様は無関係なのだ。そして、それは当然だった。


「申し訳ないけれど」


突然、ローザは、自分の着替えを手伝ってくれた女官に、どの女官にも負けないくらい冷たい声で話しかけた。


「これをレオ殿下にお返ししておいて。レオ殿下所有の魔道具の一つです」


ローザは指輪を抜いて女官に渡した。

アレクとお揃いの指輪だった。まだしていたのだ。忘れていた。


女官はローザから冷然と話しかけられるとびっくりしたようだった。

下に見ていた小娘から用事を言いつけられるとは思っていなかったのだろう。


彼女は、王弟殿下の要請で、王太子殿下と一緒に仕事をしたに過ぎない。女官たちが王家に仕えているのなら、王家の仕事に関するローザの命令は聞かなければいけない。


身の程知らずにも結婚を願ってついて行ったわけではない。この女官たちは勘違いしている。


女官は武骨で古い形の魔道具に仰天したようで、触るのを嫌がった。


「魔法力のない者には影響はありません」


ローザはなんの感情もない声で説明した。


ローザは伯爵家の令嬢だった。この女官たちは伯爵家の令嬢である彼女に相応の敬意を払うべきだ。王家の跡継ぎとは身分違いだと思い知らせるために、わざわざ冷たい態度を取るなら、逆にローザの方が彼女たちより身分は高いのだからローザに冷たい態度を取られても仕方ないだろう。



明日から始まる学校生活では、殿下とは、話をする機会すらなくなるだろう。婚約者が決まっている男性に話しかけることはタブーだった。


そして、まわり中がよってたかって、ローザに身分違いを思い知らせに来るだろうことは予想が付いた。




彼女へのアレク殿下の妙な態度は、レオ殿下が仕組んだものだと、今のローザにはよくわかった。


親善パーティーで殿下が、なぜローザを選んだのか、なぜ、あんなに高いドレスが簡単に仕立て上げられたのか……


多分、全部レオ殿下の手が裏で回っていたのだろう。


ローザの魔力とアレク殿下の魔法、両方がそろわなかければ、レオ殿下の最愛のアリス様はこちらの世界に帰って来れないのだ。二人が知り合いになることは必須条件だった。



学校の寮へ戻る暗い道で、ローザは自分を取り戻した。


一緒に戦ったアレク殿下はもういない。守り、守られ、二人で力を合わせて魔女を潰した。だが、そんなことは二度とない。


もう、ローザと一緒にいる必要はない。ローザは一人だった。

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