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地味・ボンヤリの伯爵令嬢、俺様系王太子殿下と魔女討伐に抜擢される ~残念鈍感美少女が単にイロイロ巻き込まれるだけの話  作者: buchi


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第48話 エドワード、アレクを殴る

まわり中から、彼らに向かって緑の草がみるみる走ってくるようだった。


灰色一色だった世界が、美しい生き生きとした緑に染め上げられていく。



「帰りたくない」


アリスは悲鳴を上げた。


「元の世界だろ?」


「私を待つ人は誰もいないのです。私が愛する人も」


「新しい生活を築けばいい」


「ダメです。それができないから私はあの世界の住人になった」


「アリス様、あなたは誰なの?」


突然、ローザが尋ねた。


「あなたが、私たちと同じ世界の同じ世代の人なら、私たちもあなたのことを知っているのかもしれないわ。あなたは誰? お名前は?」


「私は、私の名前は、アリス・オランジェ・フィロッツイ。フィロッツイ侯爵の娘です」


アレクが真剣に驚いて、アリスの顔を振り返った。


「それは!」


アレクは、何か言いかけたが、突然、緑の草原と一緒に近くまで走ってきた、怒り狂ったエドワードに頭を殴られて転倒した。


「上等じゃありませんか!」


エドワードは息を切らせていた。


「このっ、このっ、バカ王子」


「痛え」


本気の一撃だったらしく、アレクは涙目になっていた。


「エドワードじゃないか。なんてことするんだ。仮にも王太子様を捕まえて」


もう一発殴られた。


「元気じゃありませんか!」


「元気のどこが悪い?」


「私たちが! どんなに! 心配して! そこらじゅうを探し回って! あれほど門の中には入るなと……」


一言ごとに殴りかかるエドワードをヒョイヒョイとかわしながら、ようやくアレクは事態を理解した。


「本物のエドワードだわ!」


ローザが目を見張って叫んだ。


「私たち、助かったのね! 本当に助かったのね!」


ローザがアレクに抱きついた。


「すごいわ! アレク! 缶詰で魔女をやっつけたのね!」


ちょうどうまい具合に、ローザがアレクを抱きしめて固定してくれたので、エドワードにはチャンスだった。


エドワードは狙いすまして、強烈な拳固げんこをアレクの脳天にかまし、アレクは気を失って地面の上に倒れ込んだ。


「ナイスアシスト! ローザ嬢」


エドワードは本気だった。


「あ、あのね、エドワード、実は……」


門の中にふらふら入って行ったのはローザである。アレクは止めようとしていた。

言い訳しようとしたローザは、エドワードの顔を見て黙った。


振り向いたエドワードの顔は見ものだった。


ほおがこけ、目の周りにはクマがくっきり浮き出していて、目はと言えばぎらぎらと充血していた。ヒゲが伸び放題で、急にローザは、エドワードが自分たちよりずっと年上だったことを思い出した。


「あの、向こうの世界へ引っ張り込んじゃったのは、私なの」


エドワードは目を剥いた。


「あの、ごめんね? 気がついたら中にはいちゃってて」


「お前かッ! お前が犯人かッ!」


エドワードはマジだった。

シュッと手が伸びてきた。


それをさっとつかんだ者がいた。


「レディを殴るだなんて許せませんわ」


アリス・フィロッツイ侯爵令嬢だった。

その声の調子は冷たく、犯しようのない威厳に満ちていた。


エドワードは、アリスを穴が開くほど見据えた。


何かひどく驚いた様子で、そして、同時に訳がわからないと言った様子で。


「ローザ嬢、この方は?」


ローザはエドワードの反応にひどく戸惑いながら答えた。


「ア、アリス。アリス・フィロッツイ侯爵令嬢」


エドワードの目玉が飛び出しそうになった。


「それは……そう言うこと……だったのですか」


どう言うこと?……ローザは思った。

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