表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
地味・ボンヤリの伯爵令嬢、俺様系王太子殿下と魔女討伐に抜擢される ~残念鈍感美少女が単にイロイロ巻き込まれるだけの話  作者: buchi


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

44/62

第44話 魔女を爆破してみた

缶詰は影響なんか受けてない。アレク自身と一緒だ。


もう、それしかなかった。


アレクは女の頭めがけて『石油』缶を投げつけた。多分、あのへんが頭だろう。物理的攻撃だ。


女の影が揺らめいた。影が薄くなった。当たったのかもしれない。


『潤滑油』の缶を投げた。次は『鯖缶』を投げた。魚は嫌いだ。惜しくない。潤滑油は食えないし。


火の魔法を放つ。届いてくれ! 缶がうまく当たったせいか、ポッと小さく火が出た。


いけるかもしれない。渾身の力で放つ。石油なら引火するかも。ガソリンだったらいいのに。


他に何かないか? 荷物の中に棒があった。なんだか知らないが溶けてない金属の棒だ。風魔法で缶をぶっ刺す。頼む。穴をあけてくれ。引火してくれ。


ぼやけた音が何か騒いでいる。何かを通して聞いているような音だ。風の音のようにも聞こえる。

やっと缶切りが出てきた。風魔法で缶を切れるだろうか。そんなこと、やったことないが。


だが、缶切りをどうこうするまでもなく、どおおーーんとものすごい爆発音がした。


魔法の音ではない。それはクリアにアレクの耳に届いた。


バカな。石油は爆発しないだろ?


アレクは目を見張った。


急に視界が開け、数メートル先に倒れているローザが目に入った。


「ローザ!」


駆け寄りローザに触れると、途端に、ドレスを着た女の姿が鮮明に見えた。女の口が、唇が半分無くなって歯茎が見える口が、くぐもったような声で叫ぶ。


「誰? この男は!?」


「お前こそ誰だ?!」


顔をあげた女を見て、アレクは腹の中がグッと冷えた。顔、怖い。


女は、爆発のせいか破れた真紅のドレスを着て、顔の半分が溶け始めていた。


物理だ。物理が一番効く。さっき投げた金属棒が、爆発のせいでこっちに帰ってきていた。


今、やらなければ殺される。アレクは棒を握ると走り寄り、女を力一杯殴った。


「何をするの!」


また殴って、殴って、殴った。


「止めて! 殺される……」


溶けていく。殴られた部分から溶ける。殴られて溶けだすなんておかしい。


「止めて、アレク」


後ろから抱き着いてきたローザを振り払った。


ここはおかしい。


この世界は異常だ。


「異常って言うのはね、自分の側じゃない方のことを言うのよ!」


アレクの考えを読んだかのように、しゃがれた女の声がささやきかけた。


「ここに住んでいれば、あんたたちが異常なのよ」


目がとろけて、眼窩から出てきた。左ほおも黒ずんでへこみ骨が見えてきた。大理石の床に落ちた目が転がったが、直ぐに溶けて黒いシミになった。指先から黒ずみドロドロした液体になり、床にとろとろと落ち広がった。足がかくんとなって、膝をつき、黒い汁になって溶けた。女の残骸の汁だ。


「アレク、お願い。ひどいことをしないで」


「どちらがひどいんだ!」


アレクは力の限り女をぶちのめしながら叫んだ。こいつを殺さないと、もとの世界に戻れない。こんなところでひるんだら、俺は間違うことになる。


『元の世界に戻りたい人間ばかりじゃない』


頭の中に声が響いた。


『見たくないものから、目を逸らすことが卑怯だとでも?』


アレクは女の残骸を滅多打ちにした。もう、ほとんどが黒いどろどろした液体になっていて、それさえ乾き始めていた。


『お前は生きることが残酷だと知らない』


ハッと顔を上げると別の女がいた。


それは年を取った女だった。年は取っていても背中はまっすぐで威厳にあふれ、アレクをにらみつけた。


「止めて! アレク様」


「俺の名前を忘れていたくせに!」


アレクはローザを突き飛ばして、その不気味な年寄りの女の方に火の魔法を放った。


「黒の魔法使い!」


女は叫んだ。


だが、魔法の火は女の服の裾をかすめただけだった。

魔法なんかダメだ。

アレクは「キャットフード」「ピクルス」、ちょっと惜しかったが「チリビーンズ」を次々に投げて、どれかが女の頭に命中した。


グラッと倒れたところを、アレクはさっきの棒で殴った。金属棒が実は魔法の杖だったことがわかってきた。元の形を取り戻しつつあったのだ。


だが、かえって、そのせいで殴りつける威力が落ちてしまった。


アレクは走って行って、前の女のそばに転がっていたグリース(潤滑油)の缶を風魔法で拾うと急いで缶に穴を開けて女にぶっかけた。さっきの爆発の熱でグリースは溶けていた。


後ろに下がると火の魔法をぶっ放した。


殴れば白の魔法力は弱まるらしい。


「ギャアアア」


老婆は叫んだが、さっきの女と同じように溶け始めた。

これが一番効くらしい。


「アレク様、なんてことを」


ローザが泣き出した。


「あなたがそんなことをするだなんて」


この大バカ女! この世界に閉じ込められるとこだったんだぞ!


「早くここを出るんだ!」


アレクはローザに命令した。


老婆は床に座り込み、溶けて黒い液体となり、さらにはその液体も乾いていったが、黄色い骨が最後に残った。


「あああ……」


骸骨を見たローザが震え声をあげた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ