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地味・ボンヤリの伯爵令嬢、俺様系王太子殿下と魔女討伐に抜擢される ~残念鈍感美少女が単にイロイロ巻き込まれるだけの話  作者: buchi


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第28話 婚約破棄

ローザは、手紙を読んだ翌日は、ケネスに会いたくなかった。


学校に来る前、両親はヴァイオレットとケネスの婚約を話題にしていたから驚きではなかったが、やはり妹を選んだのだと思うと嬉しいわけではなかった。


食堂には行かず、ナタリーに頼んで食事を持ってきてもらった。


「そう。妹と婚約したの……」


ナタリーは言った。ローザから婚約者差し替えの話を聞いたのだ。


「別に驚いたり、がっかりするようなことじゃないけど……」


ローザはうつむいて言った。わかっていたことだった。


「もっと、しっかりケネスを捕まえておけばよかったのに。ジョアンナなんかに紹介したりせずに」


ナタリーは言いたいことを言う。


「ケネスがジョアンナと婚約したわけじゃないもの。それは関係ないわ。この手紙の様子じゃ、家同士の取り決めみたいだし。実際、ヴァイオレットはケネスを大好きなので」


「ケネスは、あなたのことが大好きみたいだったけど」


「ヴァイオレットが目の前に来たら違うと思うの。ヴァイオレットの方が美人だから。家ではそうだったわ」


そんな男って、どうなの?とナタリーは考えた。ケネスの好感度がちょっと下がった。



「ねえ、ケネスから呼び出しよ? ローザに来て欲しいって」


キャサリンが乱暴に部屋のドアを叩いた。


「え?」


「寮の入り口に来ているわ。絶対、来て欲しいって!」



一体、何の用事だろう? 婚約のことなら、ケネスにもローザにもどうしようもないことだろう。



ケネスは女子寮の入り口まで来ていた。


「あ、これ、なんか、まずいやつ」


ローザは口の中でつぶやいた。


長年、婚約者(仮)をしているだけあって、ケネスの表情を見ればすぐわかる。


「ケネス?」


「ローザ、家から手紙が来て!」


ケネスは怖い顔をしていた。ケネスにしては珍しくタイが曲がっている。いつもは非の打ち所がない整った身だしなみなのに。


「私のところにも来たわ」


「僕はヴァイオレットが好きなんじゃない! 君が好きなんだ」


「ケネス……」


ローザはびっくりした。

そんなことはない。ケネスは、伯爵家へは、ヴァイオレットに会いに来ていたのだ。


「違うよ! いつだって、ヴァイオレットが先に出てくるんだ。そしてつれて行かれてしまう。君の妹だから、いずれ僕の義妹になる人だ。強引に振り切ることも出来なかった。学園に来たら、君と一緒にいられると我慢していた。それなのにこんな結果になるだなんて!」


「でも、ケネス……」


「君はどうしたい? 僕は家に手紙を出した。結婚したいのは君だと。ヴァイオレットじゃないと」


「でも、ヴァイオレットは信じてるわ。あなたに好かれていると」


「ヴァイオレットを嫌いじゃないさ。だが、結婚したいのは君だ。君じゃなかったら婚約なんかしたくない!」


ローザは驚いてケネスの顔を見た。知らなかった。


「ヴァイオレットが好きなんだと思っていましたわ。だから、お邪魔にならないように……」


ケネスはイライラした様子になって大きな声で言った。


「違うよ。どうして気が付かないんだ!」


「でも、両家とも納得して、正式な手続きを取るって。そして、親善パーティーにはヴァイオレットが来るそうよ。正式な婚約者なら参加できるから」


「お披露目なんかやめてほしい。君と結婚できなくなる。ローザも手紙を書いて! 僕と結婚したいから、ヴァイオレットとの婚約はやめてほしいと」


ローザは考えた。


「多分、書いても聞いてはもらえないと思うわ」


「? なぜ?」


「私だって、ケネスを好きだった。でも、問題は妹だけじゃないの。母が私のようなぼんやりでは伯爵夫人は務まらないって、反対だったの」


「ぼんやりじゃないよ! 特にこの頃は落ち着いてて、以前のマヌケがウソのようだ」


思わず眉間にシワを寄せた。マヌケだったんだ……否定しにくいけど。


「親善パーティーに、私は出ないの」


「え?」


ケネスが髪を振り乱したまま、ローザの顔を見つめた。


「欠席で出してしまった」


「どうして? 全員、出席するもんだと思ってたよ」


「ジョアンナの騒ぎがあったでしょう?」


「君はバカだ。あんなもの、僕が婚約者だってハッキリ言えば良かったんだ。そしたら、ジョアンナは他人の婚約者に手を出した悪者になる。完全なマナー違反だ。それに、後の他の男連中も誰一人伯爵家の嫡子の僕に対抗しようだなんて考えない」


意外にケネスは爵位を意識していた。


「でも、婚約者じゃないかもしれないでしょう? あなたはヴァイオレットの手を取っていたし、母はヴァイオレットとの婚約を望んでいた。もし、そんな勝手なことを言ったら、取り返しがつかないし」


「僕が言えば良かった」


ケネスはローザを抱きしめた。


「君は僕のものだと。婚約者だと。もっと早く」


万感の思いを込めてケネスは耳元で言った。

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