第22話 魔道具
「ローザ」
先生がしゃがれたような声で、ローザの名を呼んだ。
振り返ると先生は、頭のてっぺんの毛をつかんでゆっくり上へ引きはがし始めた。
薄い皮がむけて、下から別の顔がのぞく。
「きゃ……」
印象の薄い男は消え去って、四十がらみの濃い褐色の髪とひげを生やした、顔立ちの整った中年の男性が現れた。
鋭い茶色の目をしている。
「叔父上……」
アレクが呆れて言いだした。
「こんな娘に正体をばらしておしまいになって……これから、どうするおつもりですか?」
だが、アレクに叔父上と言われた男は、アレクの言葉に頓着しなかった。彼の目は一心にローザを見つめていた。
「恐ろしいね、この娘は。いや、お前もだが」
深いいい声だったが、少し震えていた。
「見つけ出したのか。こんなにたくさんある中から。私たちには、わからなかった。ずっとずっと探し続けてきたのに」
「これは何なのです? この妙な剣だとか盾だとか」
エドワードが尋ねた。
「これか。この箱の中身は全部魔道具だ。いや、魔道具だと伝えられたものだ。何年もかけて私がコレクションしたのだ。だが、本物なのかどうか、私にはわからなかった」
偽の先生はきょとんとして自分を見つめるローザを見返した。
「私は何年も何年も探していたのだよ。その地図を」
「探す? どうしてですか? こんなに目立つ箱に入っているのに?」
ローザが不思議で仕方がないと言った様子で聞いた。
先生の目が光った。
「目立つ箱? どういう風に目立っている?」
「だって……」
ローザは箱に目を落とした。ひとつだけ新品で、色も違うし模様も違う。
それなのに、エドワードもアレクも不思議そうにローザを見つめていた。
「古ぼけた黒い箱にしか見えない」
ローザはためらった。
「どんな箱なのか、説明してもらえるかな?」
先生が優しい声で聞いた。
「え……。この箱は、ほかの箱と違って、ブルーのきれいな箱で、銀色の花と葉っぱのきれいなデザインですわ? とても美しい」
「女性向けかな?」
「ええ。もちろん」
「ああ。間違いない。それこそが私が何年も探していた魔法のお城にたどり着ける地図だ」
魔法のお城?
先生が正気なのかとローザは思ったくらいだった。そんな話は聞いたこともない。
「アレク、ローザ嬢のそばに寄ってごらん」
ローザはびっくりした。アレクは、一瞬赤くなったようだったが、直ぐにローザのそばに近づいた。
「失礼」
二人は、先生だった男の顔を見た。これが何だと言うのだ?
「どうだい?」
「特に何も?」
「あなたはどうだ、ローザ嬢?」
「え? なにかあるのですか?」
男は笑った。
「何もない……それなら大丈夫だろう。ローゼンマイヤー先生を呼んできてくれ。もう授業は終わっているだろう」
先生を呼んでくる間に箱は片づけられ、机の上には剣と盾、地図と古い本が残された。
「ほかはないかね? なにか興味があるとか、変に感じるものとか」
先生だった男が尋ねた。
「ビンと缶、それにアクセサリーと、それから……」
ローザが言った。どうしてわかるのかわからない。でも、ほんのりと温かく、わずかに発光しているように感じられるのだ。
ビンと缶は発光していなかったが、ラベルには妙な力が感じられた。
アクセサリーも、変な雑貨の一部も光るものとそうでないものがある。
「選んで、分けて」
まるで何かのテストを受けているようだった。
今まで受けたことのないテスト。そして魔力とやらは本当に存在するのかもしれない。
ローザが選んだものは、優しくて温かいものばかりだった。
やわらかな色合い、ほんのり光を放ち、心を落ち着けさせる。
ローザがそう言うと、偽物の先生だった男は真剣にうなずいて答えた。
「そうか。同じような話をある人から聞いたことがある。その時は笑ったものだが。今は本当だと信じている」
彼はアレクに向かって聞いた。
「杖はどうだ? 昔から魔道具に間違いないと伝えられてきたものばかりなんだが」
ローザは首を振った。杖には何も魅力を感じなかった。
アレクは迷っていたが、金属の杖を手にした。
「なるほど。思った通りの物を手にしたね」
先生は言ったが、ローザは訳が分からなくてその男を見上げた。
もし、楽しんでいただけたら、広告の下の☆をポチって★にしてくださると、嬉しいです。
楽しんでもらえると、励みになります。




