第21話 探していたもの
生まれて初めて、本当の魔法を見た。
噂には聞いていたが、目の前で実際に見るだなんて……。
ローザは目を見張った。
手を差し伸べるだけで、モノが動くだなんて。
「ローザ、あなたも箱を開けて。もし、特に気に入ったものがあれば取り出してください」
ぼんやり見とれていたローザは、先生に注意された。
アレクは、ローザに背中を向けて、箱を開ける作業に取り掛かっている。
(得意そうにしてはならないことになっている)
ローザも箱を開ける作業に戻った。
いくつかの箱を取り除けていくと、他の箱の下から、とても気になる箱が出てきた。
どこが気になったのかと言うと、その箱だけ、新品だったからだ。
ほかのはみんなホコリまみれで、相当古そうなのに。
薄べたい箱は、しゃれた装丁で、どう見ても女性向けだった。
ローザの好きな優しい青の色合いで、複雑に絡み合う銀の花と葉の意匠で飾られている。
おかしいではないか。
いくらローザがのんびり出来ているとしても、この箱は変だと思った。他と違いすぎる。
アレクやエドワードや先生に目をやったが、みんなそれぞれの作業に忙しそうだった。
反対側では、アレクがエドワードに手伝わせて、とても大きな箱を開けようとしていた。
「アレク様、面倒くさいです」
エドワードが、ぞんざいに言う声に、ローザが振り返った時、箱のフタが外れて、中の物が外へ倒れかかってきていた。
「えっ?!」
だが、アレクが片手を上げると、ガチャンと言う大きな音を立てて床にぶつかる瞬間に見えた大きな盾は(それは盾だった)、空中で停止して、並べられた机の上にゆっくり移動していった。
(なんなの? どうなっているの?)
ローザは、心の中で考えた。
「気になるな」
アレクは夢中になってその盾をなでた。
ローザは呆れて、アレクを眺めた。すごい。
アレクがちょっと振り返ってローザを見た。
黒髪と薄青い目の彼はとってもかっこいい。
そしてアレクは、ローザの目線の意味を悟るとニコっと笑いかけた。
「アレク様、盾に傷をつけないでください。扱いは丁寧に」
エドワードの冷たい声が響いた。
「ローザ嬢、その箱が気になるのですか?」
先生に聞かれたローザは、手に取っていた箱の方に目を戻した。
「先生、この箱はおかしいです」
「え?」
先生は変な顔をして答えた。
「どこが?」
アレクもエドワードも怪訝そうな顔をしていた。もっともエドワードは、倒れかかってくる、盾が入っていた箱の木蓋を支えるのに手一杯な様子だったが。
「いえ。……ええと……」
みんな、変だと思わないのかしら?
ローザは自信を失った。
「その古ぼけた黒箱ですか? 開けてみてください」
ローザは、はっとして、先生の顔を見た。
古ぼけた黒い箱? このとてもきれいな青と銀の箱のこと?
だが、ローザはそれ以上聞くのは止めた。
彼女は黙って箱を開けた。
中には一枚の古い地図が入っていた。
「羊皮紙……が、一枚」
先生が言った。
「地図が一枚です。先生」
ローザが訂正した。
「地図?!」
先生の異常な声がした。
「地図? なんの地図?」
「え?」
ローザは羊皮紙に目を落とした。
それはどうやら王城から、別な城への道案内に見えた。
正確な地図ではない。
ところどころに目印が記されているだけで、ほかの山だの村の説明は一切なかった。
「城への地図ですよね? まるで招待状のようですけど」
先生は天を仰いだ。そして、つぶやいた。
「やっとやっと、見つかった……」




