1話 坂本宗司
珍しくすぐ投稿するの次話書いてないからだっていう話
憂鬱だ。
何が憂鬱だなんて、全てだ。
何のために生きて何のために働くのかすらわからなくなってきた。
間違いなく会社のためじゃないし自分のためにしたいのだが、働いて働いて、また働いて…
自分の時間が取れないならそれは自分のためと言えるのだろうか?
「はぁ・・・」
ため息も考えて出すのではなく自然と出てしまう。
子供の頃、いや高校大学まではなんでもやれる気がしていたんだ。
それが、今はペコペコと頭を下げて自分の自尊心をガリガリ削りながら、毎日を過ごすためにまた頭を下げる。
下げて、下げて、下げて。
上を見上げることなんてどのくらいしていないのだろう…わからない。
「そこのお兄さん」
ただ、声が聞こえた。
人がたくさん居た。自分だけじゃない、若いだろう人はたくさんいたんだ。
でも、俺だと何故かわかった。
凜とした声で、こちらを見る男か女かわからない人物。
ただ、その声に従うように足は動いたし、無意識から意識を取り戻したとき、今の現状から抜け出すことが出来るとそう思えた。
「お兄さん、現状に不満がおありですか?」
「ああ・・・ああ!」
何かを変えてくれる。そんな気がして久しぶりに感情が大きくなる。
「では、異世界に興味はおありですか?」
・・・?
「えっと・・・」
「ああ!最初はよくわからないですよね。ですが、私は貴方が主人公に、貴方が求める異世界をご提供いたします。」
意味がわからなかったが、もう乗った船だ。勢いに任せることにしよう。
・・・何より、それだけでも楽しいものだから、久しぶりの娯楽じみたことだから辞めるのももったいない気がした。
「そうだなぁ・・・自分が主人公、ですよね?」
「ええ。自分が主人公になる場合でも、産まれてくるか、そのまま今のあなたの姿で行くか。他にも色々注文できますよ?」
「むかしやったゲームの内容に近いのがいいなぁ~。伝説の勇者の子孫っつって!後はやっぱり転移じゃなくて転生かな。楽しそうだし、子供の時期を楽しみたいんだ!」
「ええ、ええ。わかりました」
「えっと、でもお高いんでしょう?」
お決まりの文句だ。深夜の通販番組で何故か必ずっていうぐらい言われるレベルのやつ。
だが
「いいえ?お金は頂きません。今貴方から頂くものは一切。必要なものは、異世界に行った後、貴方の最も大事な物だけです。それ以外は全然。後はこの書類に目を通していただいて、名前をサインしていただければ大丈夫です。」
そうしてカバンの中からキレイなファイルを取り出して書類を2枚、ボールペンを一本こちらに渡してくる。
そしてそれらに言われたとおりに、書類に目を通しながらサインをしていく。
「えーっと」
・御代は異世界で得た貴方の最も大事な物です。支払いは貴方が幸せになった瞬間、得た際に取引をさせていただきます。時と場合に応じて徴収をしますが、例外なく徴収は行なわれます。
・貴方が異世界で老衰または戦死などで死ぬ場合、異世界に飛んだその瞬間に戻ることも出来ます。
勿論、その場で本当に死ぬこともできます。
・異世界の設定などは貴方が自由に決めることが出来ます。しかし、不可能な部分も勿論あります。貴方に幸せな異世界ライフを!
という書類というよりは説明書、チラシみたいなものだった。
「はい、どうぞ」
「はい。ありがとうございます。坂本宗司さん、今から異世界転生を始めますか?時間はこの時から1秒も進みません。しかし、心の準備等遣り残したことがあるようでしたら番号をお渡ししますので電話をかけていただければ向かいます。いかがいたしますか?」
もう、決まっている。
俺はすぐにでもこの地獄から抜け出したい。
「いえ!今からお願いします!」
迷い無く。
自分の新しい生と、望んだ設定を生きるのだ。
「では!貴方の楽しい異世界ライフを!!」
その瞬間。自分の世界が白く、新しくなるのを感じ、意識が途切れた。