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鴨が鍋に入ってやって来た  作者: さわZ
カモの原作乖離、あぶり焼き
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序章 許される存在(強制)

マーサ王女からオリハルコンの捜索を任命されてから二日目の朝を迎えたカモ君。まだ太陽が顔を出したかどうかの時間帯に目を覚ました彼は、上半身を起こして腕を軽く回す。ようやく体調・魔力ともに万全に回復したことを実感した。

武闘大会では本当に死ぬ。致命傷を受けたにも関わらず、この世界の回復ポーションと魔法の効果は前世での医療技術を優に超えている。

最大レベルの回復魔法は、首が取れ、心臓が潰れようとも、その魂魄を粉微塵にされようとも復活させることが出来る。


それって拷問で使われたら最悪だよな。死ぬほど追いつめても復活させることが出来るよね?

神の慈悲のような奇跡を通り越して、悪魔のような所業も出来る回復魔法。出来るだけお世話にならないようにしよう。


さて、そこまで考えていたカモ君は現実逃避を止めた。

今の自分は寝間着を着ている。ただし、上の寝巻は剥ぎ取られていた。眠る直前まではしっかりと着こんでいた。はずだった。でも上半身は裸。

原因は分かる。自分のすぐ傍で眠っている少女。

コーテの手にカモ君の上の寝巻が握られていた。

この少女は二日続けて眠っているカモ君の寝巻を剥ぎ取ってはうつぶせにして致命傷になった背中の傷の所在を確かめる。

彼女は武闘大会後、常にカモ君の背中に幻視するのだ。深々と突き刺さった石のナイフを。彼の体から噴き出る大量の赤黒い血を。静かに目を閉じているその表情からは生気が抜けていく浅い呼吸を重ねてしまう。

ひな鳥のようにぴったりとカモ君に付き添い、眠りに就いても不安は拭えなかったのだろう。だからこそ、二日も続けて自分の寝巻を剥ぎ取り確認したかった。そこは理解できる。しかし、確認したらちゃんと寝巻をつけて欲しい。まあ、それに気づかないまま眠り続けている自分も悪いが、この状況を誰かに見られたら絶対に誤解される。


そう。目の前で絵筆をとっているミカエリとこの部屋の入り口で待機しているメイドの二人みたいに。


「…続けて」


何をだ。と言ったら、情事を。と、返されるだろう。というか昨日の朝も言われた。


情事。事後。成功E。


どれもやってないからな?

コーテがやったかもしれんが、こちらからはやってないからな。

息子の状態確認。よしっ。今日も元気だな。


そんなアホな事を考えているカモ君だからこそ息子が静まるのを待ってからベッドから這い出ていき、ここの家主。侯爵令嬢のミカエリの傍に行って彼女の絵筆を取り上げる。


「続けるも何もただ寝ていただけですよ」


「え、エミール君が受け?アニ×ロリかと思ったらロリ×アニ?」


見た目は成人男性なカモ君だが十二歳。コーテは十三歳。もうすぐ十四歳だからどちらかと言えばアネショタなんだよなぁ。じゃなくて。


「お世話になっている人の館でそんな事を働くわけがないでしょう」


「え、私がオカズにされている?」


確かにミカエリは美人だが、中身が残念なのだ。性格面が。


「確かに私は美人だけど目の前でその事を言うのはセクハラよ」


「美人は認めますけど、他は断固として認めねえ」


「ちなみに私がやっている事はパワハラよ」


「存じております」


「それでも私は一向に構わんっ」


「俺が構うんだよ、馬鹿野郎」


構えよ。侯爵令嬢。本当にあんたに襲っているかもしれんぞ。しないけど。あの忍者の姿も気配も感じ取れないがきっと見張っているに違いない。なにより、この中身が男子中学生な残念美人に性欲が全然湧かないのだ。


えー、本当~?

と言いながら未だ眠っているコーテの様子を見に行ったミカエリ。掛布団をめくり、コーテの体をまさぐる。

同性とはいえ、あそこまでまさぐる事は許される事なのだろうか?


「…嘘つき」


「ついてねえ」


ミカエリがカモ君の方を見てかうような表情を見せる。


やってねえ。やってないよな?どこかのエロコメ主人公みたいに無意識下で事に及んでいないよな。そうだよなマイサン?


う~ん。たぶんやってないよ、ダディ。


信じるからなマイサン。

自分の股間に意識を向ける。そこには日常的な感触しかない。だからやっていないんだ。


そんなこちらの心情を知ってか知らずか、ミカエリはこの部屋の入り口付近で待機していたメイドから新しい絵筆を受け取り、再び絵の作成に取り掛かる。


「完成!」


「はやっ」


もうほとんど完成していたみたいだ。なにやら絵の製作者のサインを記すだけだったようだ。


「どう、上手に描けていると思うのだけれど?」


「絵はうまい。それは認める。だけど内容は認めねえ」


ミカエリは会心の絵が出来たと満足のいく表情を見せながらカモ君にその出来を尋ねてくる。


なんだ、この絵は。

ベッドの上で下種な表情をした大の大人が怯えた幼女に向かって迫っているそんな絵画。

え、これ俺?このスリムなギネみたいな男が俺?そして涙目になっている幼女は七歳のルーナよりも幼く見える少女がコーテか?あまりにも酷すぎるのに絵のレベルだけは高い。

まるで神絵師にポルノ絵画を描かせたみたいな絵だ。


「一割の真実と九割の妄想で描いたわ」


「もう、出演者の性別くらいしか合ってないじゃないか」


ほぼフィクションな絵だった。

てか、この才能の塊みたいな才女。たしか王女から仕事を任されていたのではないのか?

そんなカモ君の疑問がのった視線にミカエリはクスリと笑って見せた。


「王女さまからの仕事は…。山積みよ」


「じゃあ、なんでここに居るんだよ」


ミカエリはこの国の宝である大剣。シルヴァーナの修理を頼まれている身だ。

王族からの仕事を放っておいてこんな馬鹿な事をしていていいのだろうか。


「だって材料が無いんだもの。オリハルコンも、エンシェントゴーレムの核も、光のマジックアイテムに組み込まれている魔法回路も無いのよ。凄腕のコックだって材料が無ければ美味しい料理を作れないでしょう」


まあ、言われてみれば確かに。それらのアイテムの蒐集は王女が自分に課した任務だ。

王国にもそれらの備蓄が少しはあるだろうが、まだ学生の身分のカモ君に蒐集を命じてくるほどのレアアイテムだ。もう底を尽いているのだろう。

それらのアイテムが見つかるのは文字通り死地。ラスボスのいる地域をうろつくか、深層と言われる30階層以上のダンジョンでしか見つからない貴重な物。持っている方がおかしいのだ。


「なにより、貴方をいじれる絶好の機会よ。私が逃すわけがないじゃない」


「貴女はそう言う人だよ、コンチクショウめ」


天賦の才能に、整った容姿。更には魔法の才能まであるミカエリ。そんな彼女の兄達も超人レベルの才能と実力を持つ。

セーテ侯爵家の未来は盤石だ。性格に目を瞑れば。

きっと才能に数値を振っている分、性格にマイナス補正がかかっているんだろう。

いや、それでも大概だ。侯爵家。一個くらい才能を分けてくれてもいいだろう。と思う全属性の魔法使いのカモ君。お前も大概やぞ。と言ってくれる人間は残念ながらいなかった。

侯爵家という相手が上位の人間という事もあるが、ミカエリに何度も助けられたという恩もある。それなのにカモ君がこのようなコミュニケーションをするのは単にミカエリが許してくれたから。カモ君の事をある程度認めたからこそこのようにふざけ合えているのだが。

ミカエリは初めて出来た(ハラスメントが許される)友人に絡むのが楽しいのだ。実はまだやるべき仕事は残っている。

しかし、カモ君をからかうのが楽しすぎる為、早々に仕事を切り上げて、寝る間も惜しんで彼を弄ぶ。先程描いた絵も、下地にしている布地には国宝シルヴァーナの補修図。設計図が描かれている。

エコよね。と思っているミカエリだがこれも立派な国家機密。期間二日間。計六時間かけて書いた絵画は、カモ君の火の魔法によってふざけた絵と国家機密は人知れず灰になった。

ちなみにこの絵画。その筋の人に見せれば大枚はたいて買われた名画であった、


「私の大傑作がっ」


「その才能をもっと違う事に活かせ」


「酷いわ、エミール君!私の、大事な物だったのにっ」


「深刻そうに言っているけどただのセクハラ絵画だからな、あれ」


カモ君とミカエリがふざけ合っていると、その騒動に目を覚ましたコーテ。彼女が見た物とは。


床に膝をついて女の子泣きしているミカエリ。その頬と白い絵の具。足元には赤い絵の具がはねた跡。

そしてカモ君の下半身を覆っている寝巻にはミカエリとふざけている間についた微量の赤と白の絵の具がついていた。

視界の隅には灰になった元絵画があったがすぐに忘れた。


現状をなんとなく把握したコーテ。


「…エミール。ギルティ」


「なんでぇっ」


事実を曲解したまま把握したコーテはカモ君の顔に魔法で作り出した水球をぶつけた。


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