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鴨が鍋に入ってやって来た  作者: さわZ
カモ肉のサイキョー風御前料理
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第十六話 金は天下を回る物。ただしカモ君。テメーは駄目だ。

カモ君達は武闘大会会場からミカエリに用意してもらったセーテ侯爵家専用の馬車に乗り、ミカエリ邸へと向かう。

馬車に乗る前にカモ君は病衣から王都に住む平民達が着る私服を着込む。ミカエリから借り受けた戦闘服やジャケットは、ギネに背中を刺された時に出た血で赤黒く変色していた為、一度洗濯する意味も込めてミカエリが従者に渡し、彼女の別荘でクリーニングしている。

それでもカモ君が着ている服はモカ領で着ていた服より上質な物である。都会と田舎の差を感じていたカモ君。きっとミカエリ邸で出された食事もお高いのだろう。

そしてこれから話をするというこの国第二王女マーサ王女。彼女のお話に出される紅茶やお菓子の類は最高級になる物だと少しだけ期待していた。

今回の武闘大会はもの凄く頑張った。

準備期間から試合まで、踏み台の自分には壮大過ぎる戦果を残したのだ。なにかご褒美があってもいいはずだ。

例えば、カモ君の健闘を称えてレアアイテムや大会賞金の賞与。魔法学園の授業料免除。

これらはギネが貴族の地位をはく奪されたことで支払えなくなった学費だ。もともとギネがカモ君を犯罪者扱いした時点で退学になっているかもしれないが、それらを貰えるとしたらとてもありがたい。

シュージとの決闘や模擬戦を行い、負けることにより彼を。この世界の主人公を強化できる機会を潰さない為にも必ずもぎ取らなければならない事例だ。

シュージは自分との試合ではあっさり負けたが、予選試合で見たあの魔法の威力は以前見た時よりも少しだけ強くなっているようにも見えた。が、それでも足りない。あれだけの力量ではラスボスどころか四天王の中で最弱と言われたキャラにも負けてしまう。

まあ、今はゲームで言う所の序盤の序盤。ようやく戦い方を学び始めた頃だから急ぎはするが、慌てる時期ではない。

もし自分が魔法学園に通えなくなっても野良の冒険者と活動して、時期を見てはシュージにいちゃもんをつけて決闘を吹っ掛ければいい事だ。

学園という最大の接点を失くしてしまうのが痛いが、彼を鍛えられなくなるという訳ではない。

と、自分に都合のいい話があるのだと信じてやまないカモ君。

ミカエリ邸に到着し、先に話があるからと言われ、コーテと共に応接間に通されたカモ君に突き付けられたものは、クリーニングされ、穴もふさがれたウールジャケットとそれの買い取りという借用書に名前を書く事だった。

初めは何の冗談かと思った。


「人が貸した物をあれだけ血塗れにしたのよ。買い取るのが筋という物でしょう」


武闘大会の試合中では護身の札が使われる。その為、血塗れにすると言う事は狙っても出来る事ではない。だが、その血の染みはクリーニングした後でもじんわりと灰色のジャケットに残っていた。

ミカエリも試合中にウールジャケットに損傷、汚れたとしても文句を言うつもりは無かった。

だが、試合後はその護身の札が無い。その時に大怪我を負ったカモ君。あれはギネが原因だろうと言いたかったが、そこに自分の責任が無かったとは言えない。

今回の武闘大会に出た理由も自分にあるわけだし、彼女のこの訴えを断る事は非礼に当たる。なにより、その非礼を弟妹達に知らされることになったら・・・。


え、にー様。借りた物を汚した上に穴まで開けたんですか?

え、にーに。援助してくれた人の善意を足蹴にしたの?

うわー、ないわー。この恩知らず。

うえー、ないわー。この恥知らず。

この人、自分の兄ではないわー。×2


そんな事はあってはならない。

だから買い取る事は仕方がない。だが、その額が酷かった。


風属性のマジックアイテム五個。


これが今回の買い取り金額。いや、交換アイテムである。

前にも言ったがマジックアイテムは希少で、カモ君も三週間近くダンジョンで粘ったが発見することが無かった代物。それを五個。

はっきり言って一般冒険者がその一生をかけてもそれだけのアイテムを見つけることが出来ない代物と個数だ。

思わず座っている椅子からずり落ちそうになったが懸命にこらえる。隣に座っているコーテがそれとなく支えてくれなかったら本当にずり落ちていただろう。

もちろん、これを自分が準備できるはずがない。かといってコーテに頼るわけにもいかない。そんな事をすれば、弟妹達からないわー。の一言を貰うだろう。

頭がくらくらする。輸血した分の血が抜けた気がするくらいにふらつく。体力と魔力を使い切っている状態もあってか本当にくらくらする。

ミカエリの試作アイテムとはいえ、かなりの性能を見せたウールジャケットを改めて受け取り羽織るカモ君。それはふわりと軽いはずなのにずっしりとカモ君を押しつぶすかのように重く感じた。これが債務者の責務というやつか。

カモ君が陰鬱とした空気になっていた所に応接間の扉の向こう側からミカエリの従者の一人がマーサ王女の到着という報せを持ってきた。


いっそのこと王族にこの借用書を押し付けるか。


そう考えたカモ君だったが、それよりもシュージとの接点が無くなる事に危機感を覚えた。だが、この借用書も重い。


魔法学園の復学と借用書を受け持ってもらえないかなぁ。


当初の目的である王族への助命嘆願の事を忘れているカモ君。

彼を犯罪者扱いしている手配書の撤廃はギネが拘束された時点で執行されているのだが、それを知らないので余計に滑稽に見える状況でもあった。


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