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鴨が鍋に入ってやって来た  作者: さわZ
カモ肉のサイキョー風御前料理
70/205

第十四話 俺もなー、TUEEEEしたいなー

コーテや医師。そしてシルヴァーナの加護によってなんとか一命を取り留めたカモ君は最初に転送された医務室とは別の医務室に担ぎ込まれて、そこにあったベッドに縛り付けられるように輸血のパックやなら輸液やら栄養やらの点滴を受けている所で目が覚めた。


いやー。決勝戦は強敵でしたね。


病衣に着替えさせられている自分の服装にようやく一息つけるかと深いため息を吐くカモ君。

血を流しすぎたのか、体が本当に言う事をきかない。動くこともままならない彼はやる事もないので今回の反省会をすることにした。


白騎士マウラと戦う時に使った泥沼を作り出すスワンプ。あれは失敗だった。

あれは本当なら深さ三メートルの泥沼にするつもりだったのだが、焦っていた為、広く浅くの状態で発動してしまった。

マウラのレジストでもそこに嵌れば生き埋めに近い状態に出来るかな。という期待して放った魔法は見事に足止めというカモ君が予想していない成果を残した。


その後、護身の札を狙ってのファイヤーキック。あれは外してしまったが、マウラの力量が凄かったので納得した。


次の組みつくまでの魔法とマジックアイテムによる超加速。

ライフル弾のように回転しながら突っ込んでいったがあれは狙い通りなら回転をするつもりは無かった。完全に魔法調整のミスである。

下手に回転しても目を回すだけの悪手であり、狙ってサイ○クラッシャーしたわけではない。あの時あげた奇声もじつは悲鳴だったのだ。

まあそのお蔭で剣先を滑るように避けきれた上に、マウラの動揺も誘えて組みつけた。


その後は強化魔法を使っての柔道擬きで繰り広げたわけですが、結構いい線いっていたのではなかろうか。

終わりよければすべて良し。セーテ兄妹もこの結果なら文句を言わないだろう。


こう考えると自分が考えていた事とは違う効果と結果を残しているけど、とにかく良し。

まあ、その後良くわからんうちに医務室で目が覚めるわけだけどなんなの?

なんかギネが目を血ばらさせて襲い掛かってくるし、それを止めたコーテが刺されそうになったから思わず庇って、また気を失った。

なんか最後の方がずっとあやふやな状態が続いているんですけど…。良かったんだよね?結果だけではなく経過でも評価してほしいです。いや、経過も狙った効果を発揮できませんでしたけど。

…だ、大丈夫だよね。


そんな不安を感じていたカモ君に気が付いたのか看護師達があわただしく医師やコーテ達を呼ぶようにと声を上げていた。

しかし、こう何度も何度も気絶するほど追い込まれる自分の弱さが情けなくなる。

転生主人公で俺TUEEEEEE!している人達にあやかって自分もやってみたいんですけど…。


俺の弟、TUEEEEEEEEE!

主人公、TUEEEEEEEEE!

カズラ、TUEEEEEEEEE!

セーテ兄妹、TUEEEEEEEEE!

俺、え?あ、うん。強いんじゃないかな?


一般人にイキれても、主要人物の軍人や魔法使い達相手に無双した覚えがないぞ。毎回毎回、不意打ちとか潜伏とかでチマチマやっているけど、最後はバタンキュー。毎回毎回やられてベッドの上で目を覚ましている気がする。

その内、王都中の天井を見比べて天井マスターになるのではないだろうか。いや、それはなんか嫌だな。なんか男娼みたい。いや、男娼も立派なお仕事ですよ。でもそう言うのは好きな人とかがいいじゃん。


やるべきことはやり通した上に全力を使い尽くしたカモ君は若干現実逃避じみた事を考えていた。が、どれもこれも強すぎる相手に立ち回り続けた所為だ。もうしばらくは戦わなくていいと思ったら馬鹿な事も考えたくもなる。

まあ、カモ君の場合、弟妹の事になると馬鹿になるからいつもの通りとも言える。

しばらくするとカモ君の所に目元を若干赤くして腫らしているコーテが飛び込んできた。その時の衝撃でカモ君と点滴を繋いでいるチューブが揺れる。

コーテはベッドの右側から自分の胸に顔を押し付けるようにしてすすり泣く声がしたのでカモ君は聞こえないふりをしながらコーテの頭を優しく撫でた。

彼女に遅れてやって来たのはミカエリと決勝戦の観戦に来ていたシュージとキィ。

キィはそれほどカモ君に関心が無いのかこちらの顔を見ると軽い鼻息を零して医務室をすぐ出て行った。何でも馬に蹴られたくないからとの事。


いや、いちゃついてはいないと思う。だって、自分は未だに重症。声は何とか出せるが通常時の三割ほどの力しか入らない。痛み止めの効果もあってか体の感覚が鈍いのだ。


コーテがまだ泣きついている様子を見てシュージも居心地悪そうに出て行った。その際に無事でよかったと言っていたが、無事なのだろうか自分の体は?沢山チューブが繋がっているのに。

そして、シュージ。お前。場の空気を読めるようになったんだな。夏休み前に恋愛劇場に連れだした甲斐がある。


コーテとは反対側の方によって来たミカエリから事の詳細を聞いた。

何でもギネがゴンメに何かをして自分にけしかけてきた。そして自分を殺そうとした。と、

うん。言いたいことは沢山あるがこの言葉を送りたいと思う。


ヴァカめ!そんな事をして、ただで済むはずがないだろう!


なにせ、この武闘大会は王女様が観戦に来ているのだ。そこで問題が起こればそれだけでスキャンダルになる。関係者は叩かれまくるし、関係ない容疑者だって同様だ。

例え自分を殺すことに成功したとしてもその証拠隠滅をギネが出来るはずがない。冷静な思考をしていればいいが、あの時のギネはどう見ても怒り狂っていた。その状況で冷静な証拠隠滅が出来るはずがない。

どっちにしろギネは王族に目をつけられて、処罰される。それが分からない程憎かったというのだろうか。ちなみに自分は憎い。あん畜生は大事な弟妹を傷つけた。それだけで怨敵対象だ。

今後ギネは厳しい処罰が下される。間違いなく貴族の地位ははく奪されるだろうとミカエリは言った。


…ちょっとまて。そのあとのモカ領はどうなる?


現在当主であるギネが地位のはく奪。処罰されるのは別に構わないが、その子どもであるクーとルーナはどうなる?モークスやルーシー。プッチスといった従者たちはどうなる。路頭に迷うのか?


更に自分の立場も危うい。というか、この国自体も危うい。


貴族だから魔法学園に居られる。

それをギネが拒否。

それを撤回してもらう為に武闘大会に挑む。

ギネが捕まり、学園どころではない。

学園退学。主人公であるシュージとの接点が無くなる。

彼を強くする機会が無くなる。

弱い主人公では戦争に勝てない。

バッドエンド。


それに気が付いた時、カモ君から感情が消えた。その後に浮かんだ感情は怒り。


あの豚ぁあああああ!ほんっっっっとうにっ、余計な事しかしないなぁ!せめて、戦争が終わるまでじっとしていられなかったのかあいつはぁああああああ!


自分勝手な怒りをここにはいないギネに向けるカモ君。こういう所は親子似ていた。

そんなカモ君を見てミカエリは苦笑しながら説明を続けた。


「大丈夫よ。あの豚の代わりに王国から信頼できる人間を派遣して次期当主が世襲するまで面倒を見てくれるわ。だけど、今回の悪評までは流石に庇えない。豚の悪評はモカ領だけではなく国中に知れ渡るわ。貴方は馬鹿な領主の息子だとね」


これはいわば見せしめだろう。

モカ領の名前も一新されることもなく引き継がれる。クーとルーナはもちろん領民達も他の領の人間から冷たい目で見られる。それを改める為にも良き人格者と示し続けてそれを払拭する。その為にもこれからも次期当主クーは苦労することになるだろうと言われた。


「俺に出来ることは無いでしょうか」


無理に決まっている。悪評という物はそう簡単に拭えないから悪評だ。しかも御前試合とも思える場所で息子殺しをしでかそうとしたギネ。それを拭える機会などそうそうあるわけがない。


「あるわよ」


「そうですよね。あるわけ、あるのかよ」


思わず素で答えてしまったカモ君。疲れている所為もあってか取り繕う事も忘れてミカエリを見る。


「それはとても困難よ。今回の武闘大会にまた出場して優勝するようなもの。いえ、それ以上ね」


「でも俺なら出来ると思っているから教えてくれるんでしょう」


試すような口調に挑むように言いきるカモ君。

やれやれとばかりに肩を上げたミカエリは応えた。


「上級の光属性のマジックアイテムを最低でも五つ。オリハルコン十五キロ。ミスリル・ダマスカス鋼三キロずつ。そしてエンシェントゴーレムの核の蒐集よ」


「…は?」


あまりの内容にカモ君は開いた口がふさがらなかった。

ミカエリが言ったアイテムはシャイニング・サーガでもゲーム後半の辺りで主人公達が自分専用のアイテムを精製するために必要なアイテム。

勿論その頃の主人公一行のレベルは相当なもので、踏み台のカモ君などワンクリックで消し飛んでしまうほどの強さを持つ。

そんな彼等が集めるようなアイテムを集めろと。この踏み台が?ははは、ナイスジョーク。


「上級の光属性のマジックアイテムを最低でも五つ。オリハルコン十五キロ。ミスリル・ダマスカス鋼三キロずつ。そしてエンシェントゴーレムの核の蒐集よ」


そのアイテムは少なくても30階層クラスのダンジョンでしか獲得できない。もしくはこのリーラン王国から南東部に行った場所。暗黒大陸。シャイニング・サーガのラスボスがいる暗黒大陸にあるダンジョン。しかも裏ダンジョンと言われる場所で発掘できるアイテムだ。


「上級の光属性のマジックアイテムを最低でも五つ。オリハルコン十五キロ。ミスリル・ダマスカス鋼三キロずつ。そしてエンシェントゴーレムの核の蒐集よ」


「いや、三回も言わなくてもいいですから」


これは暗に死ねと言っているのか?


「何かすごい物でも作るんですか?」


「作ると言うよりも直すが正しいわね」


「なにを」


「これは極秘なんだけどね」


ミカエリはカモ君の耳元に顔を寄せて彼にしか聞こえない小さな声で言った。


「この国の国宝。覇王の剣、シルヴァーナの修復」


…うん。あー、そうかー。

壊れちゃったのかー。シルヴァーナ。

なんでぇ!?なんでチートが壊れるの!?壊れるのは性能だけでいいだろう!

え、もしかして俺、知らない間にあの剣壊しちゃった?!


シルヴァーナはゲームクリア。未来で起きる戦争でリーラン王国を勝利に導くアイテムの一つでもある。それが壊れたという事をきいてカモ君は尚更焦った。

事の詳細を説明してもらったカモ君。

どうやらギネが操ったゴンメがシルヴァーナをへし折ったとの事だ。


…うん。そうか。

ギネが壊したようなものか。あの豚が。

あんのド畜生がぁああああああああ!!!


カモ君がそう叫ばなかったのは自分の胸に泣きついているコーテのおかげ。彼女の前では格好つけようと心掛けている事と彼女の頭を撫で続けている事で緊張を緩和していたお蔭である。


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