第五話 インがオホー!!
ダンジョン付近に設置された簡易宿舎。そこはコノ伯爵がダンジョンの確認をして
用意してくれたプレハブ小屋のような建物が二十近く立ち並んでいた。
その建物からは多くの冒険者、そして魔法学園から来た先輩達が出入りしていた。だが、彼等が目を合わすことは少ない。
貴族だから、平民だからとお互いを無視し合うような雰囲気。だが、その空気をあえて読まないで挨拶をする。
「エミール・ニ・モカです。今日からよろしくお願いします」
目の前を通り過ぎそうになった冒険者達に向かって握手を求めるカモ君。
その体格から同じ平民の冒険者だろうと思っていたが、ミドルネーム持ちでマントを纏っているから貴族だと判断し直した冒険者はカモ君の事を無視し直そうとしたが、彼に続く者がいた。
「コーテ・ノ・ハントです。冒険者さん、お互い協力してダンジョン攻略を頑張りましょう」
ハント領は冒険者にとって絶好の稼ぎ場だ。何せ冒険者への待遇がいいと評判である。
そこの関係者が挨拶をしてきた。それを無視するのは今後のダンジョン攻略の時に困るかもしれない。
そう思い直した冒険者達はカモ君とコーテの言葉に応えて握手を交わす。
その時、カモ君の手を握った冒険者はカモ君の手の皮の堅さに少しだけ目を丸くした。
カモ君の手は剣や棍棒を使い慣れているような荒さであり、断じて魔法だけに力を注いでいる人間の手ではなかった。
「あ、ああ。こちらこそ、よろしく頼む」
その言葉にカモ君は決して相手を不快にさせない笑顔で答えて冒険者達を見送った。
その光景に冒険者達からは好印象に、魔法学園の人間には悪印象に取られただろう。
しかし、魔法学園側。魔法使いの人数と冒険者の人数の比率は1:20。
ダンジョン攻略は数だよ、兄貴。マンパワーが必要なんだよ。過言でもない。
敵。モンスターを倒すだけじゃなく、モンスターの索敵。迷宮の探索。アイテムの回収。トラップ解除。退路の確保。これはいくら優秀な魔法使いでも少数では出来ない。出来る奴等は人間じゃない。
つまりゲームでは少数でダンジョン攻略できた主人公達も人間じゃないといっても過言ではない。
エレメンタルマスターであるカモ君でも攻略中は魔力・体力・集中力がゴリゴリ削れる。一つのミスが死に繋がる事象が起こる。それこそがダンジョンである。
コーテの実家。ハント領はダンジョンがよく発生するので冒険者達の力はよく知っている。だからこそ出来るだけ協力する方がいい。
広範囲を攻撃できる魔法。だからこそ魔法使いは強いのだが、ダンジョンのような閉鎖空間では小回りが利く攻撃がしやすい冒険者に利がある。
それなのにダンジョンといった閉鎖空間でそんな使えばどうなるか。それは。
「崩落の恐れがあるから威力は控えめにしろって言っただろぉおーっ!」
「仕方ないじゃないっ。仕方ないじゃないっ。細かい触手が一面に広がっていくのよっ。まとめて潰そうとしても仕方ないじゃないっ」
ダンジョンの地下七階の中腹に当たる場所でアネスはキィの顔を鷲掴みしながら彼女を叱る。
ゾーダン領の港町から五キロ離れた平野に出現したダンジョンに意気揚々と乗り込んだカモ君一行は十名ほどの冒険者達とカモ君達魔法使い五名で先行した冒険者や先輩達が踏破したダンジョンフロアに再出没するモンスターの討伐を行っていた。
ダンジョンは深度が深くなれば深くなるほど広く複雑になるのだが、先行隊によるマッピングとモンスター討伐。そして所々に設置された松明のおかげで、一つの階層でモンスターが数体しか見当たらなかった。魔法を使うまでも無くカモ君達の前を進む冒険者達がモンスターを倒していくのでカモ君達が動くことは無く、殆ど遠足のような気持ちで進んでいた。
そんな中でダンジョン地下七階。複雑な通路を進み、大広間のような所に出た所で異変は起きた。
冒険者達はその大広間に何も異常はないと通り過ぎた時に後衛にいたアネスが大広間の中央に黒い靄が立ち上っていたのを見つけた。
モンスターの出現する前兆。その黒い靄で向こう側が見えなくなる程濃くなると、そこからその靄を吸収したかのようにモンスターが現れる。
アネスは自前で持ってきた弓矢を構えながらモンスターが出現することを全員に伝えるとコーテとカモ君は杖を構え、シュージとキィは手をかざし、先行していた冒険者達も彼女の声を聴いて戻ってくる。
そうこうしている間に靄の中からモンスターが現れる。
それはパラライズ・ローパーという地面から伸びる五十センチくらいチューブ状の黄色い触手状のモンスターで、生態はその触手に触れた生物を痺れさせる麻痺毒を注入し、触手を伸ばして生物の穴にその触手を伸ばして中に侵入して増殖。獲物の内側から食い殺すという割と怖いモンスターだ。
しかし、そうとわかれば遠距離で攻撃して討伐しようとした瞬間だった。
黒い靄は晴れることなくそこから一気に広がると同時にその靄の中から大量のパラライズ・ローパーが出現した。
まるで春風で花開く花畑の様だったが、その実際はうねうねと生理的に受け付けないローパーの群れだ。
それを見た瞬間、キィは目の前。直径五メートルの範囲を押しつぶす闇魔法レベル2のグラビティ・フィールドの詠唱を開始した。その詠唱から威力と範囲がヤバいと感じ取ったカモ君は自分とコーテとアネス二人の襟首を掴んで自分達の位置を入れ替えるように引いた。
そのお蔭で二人はそれに巻き込まれることは無かったが、カモ君は巻き込まれた。しかも二人を助けた体勢が悪かったのか前のめりになっていた事でうつぶせ状態でキィの魔法で押し付けられるように押さえつけられる。
何とか顔を上げたカモ君の視界は迫ってくるローパーの群れが目の前でぶちゅぶちゅと潰れて光景だった。しかも、キィの魔法の効力で天井部分に生えていた円錐に近い岩がカモ君の近くにドスンドスンと落ちていく。
その様子にシュージとコーテは慌ててキィを止めようとするが、当の本人は「キモいっキモいっ。キモすぎるぅうううっ!」と魔法を止める様子がない。アネスは仕方ないと思いっきりキィの頭を殴る。その時、キィの首からぐきっと鈍い音が聞こえたが、その痛みでようやく魔法が中断された。
その間にも倒れこんでいるカモ君の周りに天井から岩等が落ちていくが奇跡的にカモ君には当たらなかった。魔法が解けたことによりようやく体を起こすことが出来たカモ君は自分の目の前までに増え続けるローパーの群れを見て、シュージに焼きはらうぞといって火の魔法と風の魔法を同時に発動させる。
シュージはそんなさっきまで危険な目に遭っていたにもかかわらず、目の前の事を解決しようとするカモ君の言葉に戸惑うも、目の前で未だに増え続けるローパーをどうにかするのが先だ。シュージはカモ君と同じ魔法を唱える。
火魔法レベル1の地面を熱した鉄板のように熱する魔法。バーンフロア。
それが発動すると同時にカモ君はその熱気が行かないように風の魔法を使い、その場の空気を留まらせる風魔法レベル1、エア・シェルターを発動させた。
二人の魔法を受けたローパーの群れはじゅうじゅうと音を立てながら焼けていき、最後には灰になって、その場に漂っていた風に消えていった。
その時はアネスのモンスターの出現の報せを受けた冒険者達は、カモ君達のすぐ後ろにいた。
ローパーの群れが灰になっていく様を見ていた冒険者達はほぅ。と、感心した様子で見ていた。
魔法が使えない彼等からすればローパーのような群体で襲ってくる魔物は一匹一匹潰していくか、避けていく。もしくは松明用の油をまいて火をつけて焼きはらう事で対処するしかない。そんな手間を省けるのも魔法使いの利点だ。
だが、その魔法も使いようによっては悪手になる。今回みたいな味方を巻き込むような広範囲魔法を使う際に味方を巻き込んではパーティー全滅の恐れがある。
その事もあって、アネスはローパーがいなくなった事を確認するとキィの頭を鷲掴みしながら、そのまま無理やり正座させた。
そして今に至る。
「魔法を使うならせめて味方を巻き込まないようにやれ!運よくエミール君には当たらなかったとはいえ、あの大きさの岩が頭に当たったら死ぬからね普通!」
「良かれと思って魔法を使ったのよ!それに私の魔法の前に飛び出すこいつが悪い!」
「エミールが飛び出さなかったら押しつぶされていたのは私とアネス。エミールなら魔法を受けながら立ち上がれるかもしれないけど私達じゃ無理。そのまま押しつぶされ続けてダメージ受けて戦闘不能の恐れもあった」
「何も無かったんだからいいじゃないっ」
「それは被害を受けた人が言う台詞。貴方じゃない」
アネスの説教に首元が痛むキィは悪びれることなく自分の正当性を主張するが、コーテの冷たい返しを聞いてキィもさすがに悪かったと思いしたが、素直に謝ろうとしなかった。
「もう少し落ち着いて行動してくれ」
「わかった。わかったわよっ。私が先頭を歩いていけばいいんでしょ。それなら巻き込まないで済む!」
冒険者達から火のついた松明を掴みとるとずんずんと先を進みだすキィ。その背中を慌てて追いかけるシュージを除いて、その様子に誰もが顔を横に振った。これは痛い目に遭わないと分からないとため息をついた。
そこからしばらくしてキィを追いかけるように冒険者、カモ君達が続いて行進をしているとカモ君はふと足を止めてすぐ傍にあるダンジョンの壁を撫でた。
「…あ、隠し部屋がある」
「なんですって!?」
カモ君はエレメンタルマスターで土魔法レベル2のマッパーを使える。これはダンジョンなどの構造物の内容を大雑把に把握することが出来る。
ダンジョンに入ってから、ダンジョンが生み出すトラップに警戒して、殆ど常時発動させている魔法だが、これは攻撃魔法に比べて非常に少ない魔力で使う事が出来るのでカモ君は重宝している。
実際、戦闘と同じくらい索敵の方も神経使うと思うのだが。と、カモ君は思った。
先行隊が作った地図には載っていない場所に少し広い空間を感じ取ったカモ君の魔法。それを聞いたキィは急いで戻ってきてカモ君を押しのけながらダンジョンの壁をベタベタ触り始める。
シャイニング・サーガではこういう隠し部屋にはお宝。レアアイテムがある事がよくあるのでキィは隠し部屋の存在に気が付いたのがカモ君だという事も忘れてカモ君が触れていた場所をベタベタと触りまくっていた。
それは後ろにいた冒険者達も同様だったが、キィほどがっついていなかった。
確かに隠し部屋にアイテムがある事は多々あるが、それ以上にトラップなどが設置されていたりして、そこに踏み入れた瞬間にやられるという事もあるのだ。
「おいおい、嬢ちゃん。そんな無防備にがっついていたら痛い目に遭うぜ」
冒険者の一人がそう言うが、キィの目は既にお金のマークになっていた。
「冒険心失くして財宝が手に入るかっ!」
確かにキィのような物欲もダンジョン攻略には必要な物だが、彼女の場合は多々あり過ぎて酷い目に遭う未来しかない。だからか誰もがキィの言動に少し引いていた。
シュージは額を手で押さえながら項垂れていた。本当に自分の幼馴染はどうしてこうも欲深なのだろうか。
「落ち着けよ、キィ。そこにはいる為にはツルハシか地属性の魔法で削るとかしないといけないから。それにそこに入った瞬間に罠に引っかかったら命に関わる。だから落ち着け」
シュージは大事な事なので二回言った。だが、キィは止まらない。
「だったらカモ。じゃなかった、エミール、様。隠し部屋に罠が無いか探ってくれます」
思わず、平民である自分が貴族であるカモ君の事をあだ名で呼び捨てにしそうになったがコーテの鋭い視線に気が付いて所々言い直す。
これは学園に戻ったら再度教育せねばと考えるコーテに、キィの言動に呆れるカモ君。表面上はクールに微笑みを絶やさないが、内心すごく疲れていた。だからか、思わずぽろっと言葉が零れた。
「見た所隠し部屋に罠は見られなかった」
「シャアッ」
「が、」
カモ君の言葉に小さくガッツポーズしたキィは壁から少し離れて詠唱を開始する。それはカモ君を苦しめた闇魔法レベル2の重量の檻を撃ち出す魔法。
「グラビティ・プレス!」
キィから放たれた直径2メートル近い黒い砲弾はゆっくりとダンジョンの壁にめり込み、めり込んだ分だけ重力で削り取っていく。
そこから数秒もしないうちに、砲弾の軌道はその薄い壁を砕いて道になる。その先は日の光や光を放つダンジョンゴケなどなく、ただ真っ暗な部屋になっていた。
そこまで確認したキィはカモ君の言葉を途中で遮って、我先にその未踏の隠し部屋に火のついた松明を持って突入した。
「モンスターがいるかもしれないから慎重に」
「お宝ぁあああああああっへぇえええええええええ?!」
「「「「「はやっ!」」」」」
火のついた松明。もとい、キィ目掛けて陰に潜んでいた何かの群れがキィの姿を覆い尽くした。
恐ろしく早いフラグ回収。注意を呼びかけるカモ君じゃなくても見逃さないね。
何かに覆いかぶさられたキィを助けようとしたシュージだったが、冒険者の一人に止められた。その間にカモ君は辺りを照らす光魔法レベル1のライトを隠し部屋に向かって投げ入れる。
すると隠し部屋の全容が露わになる。
まず部屋の入り口でキィを覆い尽くしたのは、先程見たローパーとは色が違うローパーだった。色がド派手なピンク色のローパー。
このピンク・ローパーの粘液には媚薬作用がある。触れた生物を発情させ、その行為によって溢れた体液を糧に増殖するタイプで、獲物の体内で増えるといった事もない事から娼館などでアイテムとして扱われることもある。
見ればこの隠し部屋の所々にこのピンク・ローパーがあちこちに群体で生えていた。
キィが大声を出しながら、暗闇では目立つ火のついた松明を持って、魔法でこじ開けた時に発生した轟音と共にこの隠し部屋に突入したことで、ピンク・ローパーの格好の的になったのだ。
それらを確認したコーテが水の魔法でキィの体に張り付いているローパーの大体を洗い流し、カモ君の風の魔法がこびりついたローパーを吹き飛ばし、最後に二十歳ぐらいの女性冒険者とアネスが隠し部屋からビクンビクンと体を痙攣しながら気絶しているキィの体を隠し部屋から引っ張り出してローパーが残っていないかを確認する。
アネス達が確認をしている間にカモ君は地魔法でキィの開けた隠し部屋に繋がる穴を土砂で塞いだ。
アネス達が見た所によるとローパーはもう付着していないようだった。大した体の損傷は見られなかったが、キィは見られてはいけないような顔で気絶していた。
そのあられもない姿に女性メンバー達と幼馴染のシュージは目を覆った。
まだ十二歳という小娘だが、それでも女としての体つきになりつつある肢体をこれ以上見せるわけにはいかないと思ったアネスは彼女を自分がつけていたマントでくるんでお米様抱っこで担ぎ上げる。
「行動と顔には問題があるけど、体には問題はないように思う。けど、念のためにダンジョンの外に出てしっかり体調を調べないと。ピンクだけじゃなくてパラライズやポイズン・ローパーがいたかもしれない」
「だったら私も。一応水の魔法で調べてみるけど詳しい事はダンジョンの外でじゃないと安心してできない。誰か私達の護衛に来てほしい」
アネスとコーテの言葉にシュージが名乗りを上げようとしたがカモ君に止められた。異性にあれ以上醜態を晒すわけにもいかないだろう。彼女に対しての武士の情けというものである。
と、なると自然と冒険者名の中にいた唯一の女性に視線が集まる。すると、彼女は右手の親指と人差し指で丸を作った。
それを見たコーテは軽くため息をついて指を三本立てた。
「金貨三枚で」
「乗った」
あまり高すぎても、安すぎても足元を見られてもっと請求される可能性も有る。コーテはその辺りを自分の領地であったダンジョン攻略の報酬と比べて、彼女に妥当な商談を持ちかける。
モンスターとの遭遇が殆どない上に一度来た道を一緒に戻るだけで金貨を三枚も貰えるのなら請け負ってもいいと考えた女冒険者はコーテ達についていくことを了承した。
この金貨三枚も後でキィに支払ってもらう。自分が蒔いた種なので文句は言うがお金は出すだろう。
話がまとまった上でコーテ達とはここで別れる事になる。キィを担いでいるアネスはモンスターとの戦闘が出来ないだろうが、ここに来るまでにコーテ一人でもどうにかできるレベルのモンスターしかいなかった。その上、モンスターの再出現も滅多にないだろうし、女冒険者の風貌からも熟練者の雰囲気があった。
それにこれまで見てきた彼女の風貌は軽装。スカウトという索敵能力に秀でた冒険者でもある。戦えるのが女二人でも彼女とコーテなら大丈夫だろう。
彼女達を見送り、冒険者の一人が、カモ君が土砂で埋めた隠し部屋の入り口を見る。
「で、どうする。貴族様。これをそのままにするか?」
魔法学園の者=貴族という公式は殆どどの国、地域で通用する。一応カモ君も貴族なので彼の意見も聴こうと言う様子だ。
しかし、隠し部屋はローパーでいっぱいだった。冒険者達では対処するのに時間と手間がかかる。剣やナイフ。弓矢などでローパーを一匹ずつやるには時間がかかる。しかし、隠し部屋の探索はしておきたい。もしかしたらレアアイテムがあるかもしれない。
しかし、ただでやるわけにもいかない。それを汲み取れたのはこの手のやりとりに経験のあるカモ君か、コーテくらいだろう。
「お一人ずつに金貨一枚お渡しするので少し待ってください。ローパーの除去と隠し部屋の探索もすぐ終えますので」
「おいおい。さっきの嬢ちゃんは金貨三枚だったんだぜ。もう少し寄こしても罰は当たらないぜ?」
カモ君は少し冒険者の彼等に待ってもらって隠し部屋の探索をしたかった。しかし、そうすると隠し部屋の中で見つかったアイテムはカモ君達の物になる。それでは彼等にあまり旨味が無い。
「勿論先に行ってもらっても構いませんよ。すぐに追いつきますから。大丈夫ですよ。何も無かったらすぐ合流します」
無論、隠し部屋にはモンスターしかいなかったという話もよくある。そうなれば言葉通り、カモ君達は置いて行かれてもすぐに彼等と合流するだろう。
カモ君達をおいて行って金貨なしにするか。少し待って金貨一枚を得るか。答えはすぐに出た。
「仕方ねぇな。少し待ってやるよ」
「ありがとうございます。じゃあシュージ。俺が入り口開けるからローパーを焼き尽くせ。強火で一気にまんべんなくだ」
冒険者とのやりとりを終えたシュージに魔法の準備を進める。
「わ、わかった。焼きはらえばいいんだな?」
「それで隠し部屋の中は意外と狭かった。さっと炙ってしまえばアイテムも燃え尽きることはないだろうしな。あ、冒険者に払うお金。お前が出すなら中で見つけたアイテム譲るけど」
「う、わかった。幼馴染のツケは幼馴染が払う」
その言葉を聞いてカモ君は内心にやりとしていた。
お金のやりとりをしたのもそうだが、本当の狙いはシュージのレベルアップの為だ。
部屋簿中にいたローパーはかなりの量だろう。これをシュージが倒せば経験値となってシュージのレベルアップの糧になる。それにパッと見たがあの隠し部屋の中央にローパーではない、何かしら人工物を見た。恐らくレアアイテムだろう。これをゲットしてもらい次のダンジョン攻略に活かしてほしいという思惑もある。
そんなカモ君の思惑など知らないシュージは魔法を放つ準備が負えたことをカモ君に伝えるとカモ君は部屋を隔てる土砂の壁を魔法で取っ払った。するとそこから溢れ出そうとしたローパーだったがシュージの火魔法レベル2のファイヤーストームに焼かれ瞬時に灰になる。
シュージの放った炎の旋風は部屋にこびりついていたローパーを焼き尽くすと、シュージの意志に応えて手元から消えていった。
そして安全を確認できたカモ君とシュージは隠し部屋の探索をすると部屋の中央にきらりと光る金属の棒のようなものがあった。
それを見た時、カモ君は鉄製のこけし人形のような物かと思ったが、シュージがそれを手に持って見ると時折ヴヴヴヴヴと振るえて落っことしそうになる。
「何だこれ?」
ピュアな十二歳のシュージには分からないのだろうが、前世持ちのカモ君はすぐにそれが分かった。これって、電動マッサージ機(淫)だよな。電気じゃなくて魔力で動いているけど。
ピンク・ローパーのいた隠し部屋でこれが見つかるとかなんか意図的な物を感じる疲れたカモ君だった。
魔動こけし。娼館に持って行くと金貨五枚で買い取ってくれるぞ。
行ける機会が来るかは未定。




