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鴨が鍋に入ってやって来た  作者: さわZ
鴨が鍋に入ってやって来た。
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第四話 手のひらドリル

リーラン王国とネーナ国が戦争処理の会議や作業で忙しくしている中、二つの陣営の忠臣ともいえるモカ領も無事とはいいがたい状態だった。

それは移民。それもネーナ王国からの難民だ。だが、それを老若男女問わず断って追い返していたため、国境沿いに派遣されたリーラン王国の兵は冷酷な表情と声で助けに縋る手をはたき落としていた。


「お願いします!家畜や穀物が衰弱して、食べる物がないのです!どうかこの国入れてください!」


「お願いだ!金ならいくらでも払う!この国に入れてくれ!ネーナ王国はもう無理だ!水も臭くて飲めない!救助も来ない!腐ったパンなんか食ったら食中毒で死んじまう!」


「お腹にはやっとできた子どもが。お願いです!私達を助けてください!」


あの手、この手で同情を誘い入国しようとしてくるネーナ王国の住民たち。平民から貴族。中には冒険者もいたが、彼等がここ一年、ネーナ王国と何かしらの接点があると判断された時、問答無用で彼等をたたき出していた。


「お前たちはリーラン王国に。このモカ領に何をしてきたかを考えろ」


この言葉と共に。

そして、この言葉を告げられ、心当たりがある者は顔をしかめる。が、しばらくすると心当たりのない者と共に叫び声をあげる。


「我々は関係ない!国が勝手にやって来たことだ!」


「悪かったのは国で、私達は関係ない!だから助けてよ!」


助けてくれないとわかれば逆ギレを起こし、騒ぎ立てる難民の一人がリーラン王国の兵の一人の制止を振り切って、無理矢理入国しようとした。が、その瞬間、右足が膝下から分離した。

何をされたかわからないまま、そのまま前のめりに倒れる難民。しかし、動かなくなった右足の感覚と勢いよく噴き出る血液。そして、激痛により悲鳴を上げた。

その悲鳴を聞いた者。惨劇を見た難民たちは悲鳴を上げた。モカ領に背を向けてその場から地理尻に逃げ出した難民を見て鼻を鳴らすリーラン兵。この光景も五回目になれば慣れたものだ。未だに足元で悲鳴を上げている難民の足を拾って無理矢理切断目に押し付けながら支給されたポーションを塗布した。妙に粘り気を持ち、悪臭漂うそのポーションの効果で足は繋がったが、感覚がいつもと違った難民だったが、その不自由になった足を引きずって彼もこの場から逃げていった。


「やはり、気持ちのいいものではないな。人を斬りつけるというものは」


「モンスター相手なら何ともないんですがね」


「いや、あいつらはモンスターだろ。少なくてもリーラン王国の立場の人間から見たら」


なにせ、彼等の面の皮は厚い。国民の八割は普通にリーラン王国の人間。いや、自分以外は人間ではないと思っている節がある。そのため、いくら国が発展しようともネーナ王国への観光をしようと人間はいない。そのくせ、自分達が困れば支援を求めてすり寄って来る。そして、それを断れば騒ぎ立てる。それを宥めて何とか帰ってもらう。それが戦争前のやり方。だが、今は戦争中だ。それも争い相手国の人間に救いの手を差し出すなど馬鹿がすることだ。スパイや不意打ちがあるかもしれない上に、受け入れたところで受け入れ先で何かしらの事件を起こす。何より、あの国民性が抜けていない以上、受け入れるなどあってはならない。


「しかし、あの子を。次期党首のクー君でしたか。あの子がこの場にいなくて本当によかった。ここにいる誰よりも強い魔法使いだろうと、こんな血なまぐさい現場を見せたくはない」


「大人は子どものために汚れ仕事をするから大人なんだよ。大した人とはよく言ったものだ」


宣戦布告が行われたその日のうちにクーはモカ領の兵とリーラン王国から派遣された兵士を引き連れて国境沿いに向かおうとしたところを領主代表のローアと三日後にやって来た王が自ら嗜めた書状を持った上級軍人。今の部隊長に引き留められ、彼等に国境沿いでの任務を任せ、送り出した。

宣戦布告初日はモカ領に隣接していたネーナ王国の兵隊が攻め入ってきた。戦争だから何をしてもいい。普段から敵視しているリーラン王国での騒動ならば自国から攻められることは無いと踏んだのだろう。

しかし、そこにいたのはカモ君に感化され自己鍛錬を積み続けてきた兵達。王都から派遣されたのは上位層を占める軍人。彼等の連携により、装備の質こそ劣るが練度が違った彼等が侵略者を打ち倒し、その装備をはぎ取り、次回。その次の侵攻をも打ち負かした。だが、戦争突入四日目になると侵略者と共に難民がやって来た。

侵略者を目の前で打倒した彼等に臆したのか難民たちは最初こそ控えめに救助を求めてきたが、どうあっても入国できないとなると暴動を起こし、粛清される。それが、五回も起こる

そんな場面をクーに魅せずに済んでよかった。こんな薄汚い場面は大人である自分達が処理すべき問題であると、ここの舞台をまとめている隊長はため息を零し、騒動前に受け取った伝令をこの場にいる全兵隊に伝える。


「全員、傾聴!リーラン王から知らせがあった!ネーナ王国国王との調停が終わった!このせ戦争は我々の勝利だ!」


「「「おおっ!」」」


「だが、我々の仕事はまだ残っている!ネーナ王国にはきっちりとこれまでのつけを支払ってもらうまでこの場を守り通すことだ!それが終わってこそ、本当の勝利と言うものだ!諸君の努力に期待している!」


「「「はっ!了解であります!」」」


部下やモカ領を守ってきた兵の藩王を見る限り、大丈夫だろうと満足した部隊長は満足げに頷くと指令室へと足を進めていった。その道中、胸元に収めていたペンダントのロケットを開く。そこには去年産まれたばかりの娘と珊瑚の妻の肖像画が納められていた。戦争だから命を落とす危険性を十分に理解していた彼だが、また会えるだろう心に余裕を持ち始めていた。が、その余裕は油断でもあった。いや、油断していなくても彼には知覚できなかっただろう。

明らかにこの場には不相応の高価な宝石をちりばめた白衣装。同じく様々な宝石を埋め込んだ杖を装備した妙齢の女性が彼の前を通り過ぎていった。だが、隊長にはそれを知覚できなかった。彼の周りにいた兵達も。それどころか警戒心の強い軍馬や伝書鳩。下手すれば女性に踏まれてしまった植物すら知覚できない。

カモ君を抹殺する意思を持った彼女を誰も止めることが。誰も気付くことが出来なかった。

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