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鴨が鍋に入ってやって来た  作者: さわZ
鴨の苦汁なお吸い物
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第九話 貴族たちの思惑

カモ君達の決闘を最後まで見届けていたサリエは、自分お部屋に戻るまで終始笑顔を絶やさなかった。

が、自室に戻り、誰もいないことを確認すると同時に力任せに部屋の壁を殴った。


「…余計な事をしてくれたね。シュージ君」


王家から自分へ。そして、自分からカモ君へ依頼したメンタルとフィジカル面の重要性を知らしめると言う任務。

それらは見事に、失敗した。いや、失敗という物では片づけられない。失態。戦犯とも言ってもよい。大げさでもなんでもない戦争犯罪者だ。


カモ君対トーマの決闘は仕方ないとはいえ、予想は出来ていた。

カモ君はトーマに対して最善手を打ってきたと言ってもいい。強力な魔法を受けるとわかっていても敢えて飛び込むというメンタル。数秒とはいえ、その強力な魔法を回避してみせたフィジカル。数秒だが魔法に耐えて見せた根性。最後の一手に見せた執念。

効果は薄いだろうが、カモ君は魔法以外の強さをこの魔法学園に見せつけたとも言っていい。


しかし、その直後。

シュージがトーマに決闘を挑み、打ち負かしてしまったのは最悪だった。

確かにカモ君の助力もあっただろうが、あの試合内容。あれは。あの時だけはよろしくなかった。


勝利の決定打になった。シュージの強力な補助魔法。


その所為でカモ君が成した事柄を全て塗りつぶしてしまった。

フィジカルやメンタルの重要性よりも。やはり強力な魔法が一番なのだという印象を付けてしまった。この決闘は魔法重視を加速させるだけの事柄になった。


そして、平民シュージ公爵家トーマに打ち勝ってしまったという事柄。


その理由も魔法という事もそうだが、その結果がリーラン王国を揺るがす一因にもなる。

本来、平民は貴族に守られるもの。逆は無い。だからこそ貴族は偉く、平民は下に見られがち。それは外国諸国も大体同じ考えで成り立っている。それなのに平民シュージが勝ってしまった。それは、国内外に貴族の力が平民以下になっていると報告しているようなもの。


国内にこれが盛大に広がれば、シュージと同じ立場の平民達が彼を旗頭に増長し、反乱を起こすかもしれない。貴族ならばシュージを取り込むことに躍起なるならまだしも、先の反乱を恐れて彼の暗殺をするかもしれない。

国外であれば、リーラン王国の求心力。貴族が弱まっていると判断され、不平等な交渉を持ちかけられるどころか侵略戦争も起こりえる。


まだ、カモ君が勝っていたならばいい。モカ子爵家からの追放。元がつくとはいえ貴族は貴族。カオスドラゴンの一件から幼い頃からのダンジョン攻略。ネーナ王国との決闘と、彼は多くの功績を残してきている。

だが、シュージはどんなに過大に評価しても凄腕冒険者。もしくは最低爵位の純男爵程度の功績しか挙げていない。

以上の事からこう考えるものは多く出るだろう。


力さえあればリーラン王国では成りあがれると。いや、取り潰せると。


そんな戦国時代はあってはならない。

現在のリーラン王国の貴族は内心はどうあれ、平穏を望んでいる者が多い。

そこで戦乱に変われば貴族はもちろん、その下にいる多くの民達も巻き込まれ、大きな犠牲が出る。

それを危惧してか、シバ校長もシュージの事を褒めつつも今回の決闘はカモ君の残した手柄が大きいと過大に評価した。が、現在彼もまた悩んでいるだろう。

遅かれ早かれ、シュージが造ってしまった問題に誰もが気付いてしまうだろう。そうならないためにも、何か手を打たなければならない。

様々な考えを巡らせながら、ある手段を想いついたサリエはまず、シバ校長にそれを伝えた。更にはセーテ侯爵とシュージがダンジョン攻略したというコノ伯爵領領主に魔法を使った速達便を送った。

その内容は最大限、シュージ達を褒めたたえる事。その褒美として彼等に爵位を与えるように国へ報告する事。

平民からの貴族への成り上がりは滅多にない。そのインパクトにより今回の決闘事件をもみ消そうという魂胆である。

更にはそうする事で、シュージは平民ではなく貴族であるから、同じ貴族に勝てたという印象操作も行える。

恐らく彼等に与えられる爵位は男爵が関の山である。男爵と公爵でもかなりの差があるが、平民と貴族に比べればまだこちらの方がいい。

サリエの案はシバ校長やリーラン国王。ミカエリにもおおむね理解できるものであり、いろいろ手を回し、品を変えて採用した。いや、採用するしかなかった。

シュージだけに爵位を与えれば怪しまれるために、カモ君とキィを含めた非貴族の人間にも爵位を与え、コーテ、ネインやシィ。イタの貴族組には名誉勲章を授与するという大々的な叙勲式を挙げることになる。


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