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鴨が鍋に入ってやって来た  作者: さわZ
鴨の苦汁なお吸い物
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第四話 勝負を始める前から終わっていた。

何の対策も立てられずに迎えてしまった決闘の日。

カモ君はとても気分が落ち込んでいた。


いや、勝てるか。と、


これまでの戦闘感覚を取り戻すためにアイムとシュージに無理を言って模擬戦に付き合ってもらったが、カモ君が出来たのはどれだけ相手の攻撃をしのぐか。という耐久戦を主とした訓練を思い出した。


『エミール?!大丈夫か?!』


『しまった。最近、力加減が出来なかったからっ。すまん!』


シュージはもとより、普段からアイムもカモ君と多くの模擬戦をしており、その内容はカモ君を打倒している。つまり、二人の強化に繋がる。

主人公であるシュージは日々強くなっているのはもちろん、彼の仲間キャラでもあるアイムもその恩恵を受けているのだろう。

模擬戦はシュージには三十秒。アイムには一分しか対応できなかった。

シュージの魔法は一撃でも当たればリタイヤ。詠唱いらず。発動すればカモ君の負けは決まっていた。カモ君が遅れて発動させた防御もあっさりぶち抜いて護身の札と一緒にカモ君の体を焼き加減レアにした。

アイムとの格闘戦では片腕という事もあるが、魔法の『鉄腕』の練度も年季も彼の方が上。数合打ち合うだけでカモ君は吹っ飛ばされて話にならなかった。

そして、カモ君と模擬戦をした二人はこう思ってしまった。


エミール(カモ君)って、こんなに弱かったのか?と。


それはカモ君自身も考えていた。

いよいよ誤魔化しがきかなくなってきた。これは本当に幕引きか?


今まではシュージ達の前に立って戦ってきたと思っていたが、いつの間にか追い越され、今は何とか陰にしがみつけるかどうかという状況。

リーラン王国勝利と言うハッピーエンドを見るまでは頑張るつもりだったんだが、今では足手まとい。いや、自分が負ければ相手の強化に繋がるのだから、せめて迷惑にならないように姿を消すべきか?

…いや、まだ駄目だ。

まだ頑張らねばならない。不安要素はあちこちに散らばっており、甲斐性も出来ていない。

自分では力になれないかもしれないが、原作知識と言う知恵は出せるのだ。意見を出すためにも成果は出さねばならない。




決闘が行われる日はちょうど休みであり、新入生達は始めて見る決闘。

在校生は国家間の決闘で勝利を収めたカモ君と公爵家のトーマの実力を見定めるため。そして、王都で抽選に選ばれた一般人の観客達。

そんな彼・彼女等が今か今かと登場人物が出てくるところを待っていた。


その歓声は控室で運動着の上にウールジャケットを着こんだカモ君が軽いストレッチをしている最中にも聞こえていた。

起床して男子寮の前でカモ君を待ち、控室までついてきているコーテも不安そうにこちらをうかがっていた。


心配するなって。最悪があっても死にはしないから。

それに痛い目に遭うのは、悲しい事に慣れている。せめて、一矢は報いるさ。

いや、作戦はそれしかないんだけどね。


学園内に建設された決闘場。

魔法使いの卵たちが己の力を確かめ、高めあう場。

シュージにとってはもはや力試しだけの場になった場所だが、カモ君にとっては処刑場に等しい。

更に体を軽くするウールジャケットを着こんでいれば風の魔法の影響もろに受けるだろうとは思うが、今のカモ君にはそれを取り上げると、運動着だけしかない。

いや、搾取の腕輪もあるだろうが、一見するとただのアクセサリーにしか見えないだろう。それでは公爵家を侮辱したとみられる。ただの着飾りのためにウールジャケットを羽織っている。

明らかに戦力不足だ。対面することもおこがましい。

一応、マジックアイテム以外にも武器の持ち込みもありだが、剣や槍。槌。おおよそ武器と言える物を持ち込めば動きを阻害され、余計に接近戦が出来ずにやられるだろう。

カモ君の手札。それを見た時コーテは本当にそんな物で対抗できるのかと尋ねてきたが、正直、それさえも悪あがきにしか過ぎない。

相手を戸惑わせれば上々。けん制になれば大金星。使い方によれば致命傷を与えられる。

掌に収まるほどの小さな武器にカモ君は賭けていた。

鉄製のメリケンサック。これでトーマを殴りつける。

ダメージ覚悟で鉄腕を盾にしながら前進からの接近戦。それがカモ君の作戦。

恐らく鉄の塊である鉄腕すらも吹き飛ばす。もしくは削りきるだろうトーマの魔法攻撃をどれだけいなせば接近戦に持ち込めるか未知数。その上、自分の体質上魔法ダメージは二倍とふざけたハンデ付き。

本当は耐魔法の機能がある鎧で。それこそモカ領で蛮行を働いていた輩とか、ネーナ王国との決闘での対戦した輩みたいに重厚な鎧でがちがちで装備を固めたかったが、その戦利品は自分の負債清算でリーラン王国に持っていかれたため叶わない事だった。


カモ君は自分の立場を思い返しては何かを諦めたように控室を出た。しかし、完全に諦めたわけではない。自分にはトーマに勝っている点が一つだけある。

カモ君がトーマに勝っている事はただ一つ。戦い、主に逆境状態での経験。

今のカモ君ならよほどのことが無い限り臨機応変に戦えるだろう。




左手に風精霊の杖。風属性の魔法の威力を大きく上昇させる。

右手首に大魔導士の腕輪。装備者は『無詠唱』状態になり、どんな魔法も即発動できる。

体を覆い隠すミスリルローブ。軽くて頑丈。魔法耐性も少しある。非マジックアイテム。

胸元に護身の札。決闘場の範囲でのみ、致命傷を肩代わりさせ、負傷した装備者を転移させる。


決闘の舞台に上がった相手はかなりレアな装備品を身に着けていた。

そんな大層かつ物騒な装備を身に着けたトーマを見て、カモ君はわずかな希望を捨てそうになっていた。


よほどの事が起きていた。

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