第七話 原作情報が一番大事
回復のために戻ってきたカモ君をチームメイト達は笑顔で迎えてくれた。
「やったな、エミールッ!これでこっちが勝ち越しだっ」
「まああ、な。このアイテムが無かったらやられていたのはこちらだったかもな」
カズラを何とか打倒し、なんと魔法殺しと言うチートアイテムを手に入れたカモ君は勝利を収めた後、コーテに反動のダメージを癒している中で浮かれ切っていた。
正直、まともに戦えるのは自分とシュージのみなので選手の数は負け越している。その上、カモ君が相手チームに倒されれば、その相手を大幅強化してしまう。今のシュージすらも凌駕してしまうかもしれない。そのため、実際は背水の陣だ。
だが、魔法殺しの力を実際に感じとったカモ君は勝利を確信していた。
相手チームのあの慌てよう。おそらくカズラ以上のスピードが出せる選手はいない。そして、希望的観測だが、魔法殺しを装備した自分に対応できる者もいない。
見るがいい。あの慌てる様を。たった十分で身体強化されたカモ君(魔法使い)を相手にしなければならない。
魔法が使えなくなるとはいっても、それ以上に強くなることが出来る魔法殺しを装備したカモ君は強いのだ。例えるのなら格闘漫画に出てくるネームドキャラとモブキャラほどだ。
ゴリラの心得を装備したシュージが相手でもわずかに上回るほどである。格闘術といった技術の差でわずかに上回っている状況だが。
…え、主人公のステータス怖っ。チートアイテムに届くとかどういう伸びだ。
「この調子なら勝てますねっ」
「まったく…。そういう手段があるなら初めから言いなさい」
「…いや、あの素早い選手に勝てたから今があるんだろう。…俺の出た甲斐があったな」
「本当ですよ。シィ先輩が相手のタイプを教えてくれなかったら負けていたのは俺でした」
先輩達からの勝算の声を受けた。が、応急処置を受け、意識を取り戻したシィがいなければ対戦相手がカズラだという事もわからなかった。まさに明暗を分けたと言ってもいい。
今までは同情や侮蔑の言葉しか投げかけられなかったが、久しぶりに自分を称賛する言葉を聞いてカモ君は浮かれに浮かれまくっていた。
これまで頑張っていた徳が戻って来たかのようだ。
「でも、油断はしないでね。相手だって馬鹿じゃない。対策だってしてくるんだろうから」
コーテはカモ君の左手にポーションを浸した包帯を巻きつけ、回復魔法を使う。こうする事で一分以内に骨折程度なら癒すことが出来る。まさにファンタジー世界万歳である。
「でも、良かったの。相手の装備品を剝ぎ取らなくて」
「…相手の装備品は大きすぎた。マジックアイテムも持っている様子がなかったからそうする必要はなかっただけさ」
キィの言葉にカモ君はクールに返した。が、本音は、指の骨が折れて相手の装備をはぎ取れなかった。そんな事をする時間があれば指の骨を治したかった。
敵の事を知っていればそれに合わせて戦う。それが基本だよなぁ?卑怯とは言上手いなぁ?
そんな下衆な事を考えていたカモ君は相手チームの方を見る。するとゆっくりと。というか、ズシンズシンと決闘の舞台全体を揺るがすような重量感のあるゆっくりと舞台に上がっている次の対戦相手を見た。あの様子なら一度戻って装備を入れ直すことも出来ないだろう。
まあ、どんな相手でも魔法殺しを装備した俺には敵わんけどなっ。
と、考えながらもカモ君は相手の様子を見た。
まるで人の形に削られたダイヤモンドの塊。ダイヤモンドアーマー。
自分のスピードを九割カットする代わりに物理ダメージを九割カットする鎧のマジックアイテム。とても重い。
まるで丸テーブルのような刃先を持った白い大きな斧。ダイヤモンドアックス。
自身のスピードを九割カット。物理ダメージ九割カットのマジックアイテム。とても重い。
そして宝玉が埋め込まれた半透明の金属籠手。反鏡の籠手。
構えを取りつつ、装備した武器が有効射程であるのなら、100%反撃が即座に発動する。カウンター専用のマジックアイテム。
敵の事を知っていればそれに合わせて戦う。それが基本だよなぁ?卑怯とは言上手いなぁ?
そう言われている気がしたカモ君は指元に締めていた魔法殺しをほどき、それをシュージに渡しながら舞台に上がっていった。
内心、メタ装備してくるんじゃねえよっ。と、毒づきながら嫌だ嫌だと泣きわめきながら。
それが僅かに表情に現れてしまった。それを目ざとく発見したライツ。そしてカモ君の内情を見ていたコハクは小さく笑った。
カモ君のくせに調子に乗るからだ。ざまぁ。と、
コハクにとって、カモ君は困難に直面しての彼だと思っている。




