第四話 瞬殺。それは開始一秒未満の決着の輝き
第一試合が始まる前の動乱と言ってもいい騒ぎ中にカモ君は改めて、決闘する舞台を見る。
闘技場のど真ん中に設置された決闘舞台はコンクリートに似た石材を用いた円状の舞台。
高さ五十センチ。直径は百メートルほどの広くもなく狭くもない舞台。この舞台から落ちても敗北とされるので、立地状態も確認せねば負ける要因となる。
一応、互いの選手が確認の魔法を使って確認したがこれと言った細工は見られない。一応ミカエリという天才な変人が造ったものだから疑り深くなっていたが、公平性は失っていないようだ。
場の雰囲気を一時は塗り替えたが、コハク。正確にはスフィア・ドラゴンが参加しないと知るや否やあちら側の選手達は目に見えて活気を取り戻した。だが、殆どの観客がいなくなった闘技場のため、アウェー感は無くなったカモ君達にまだ勢いはある。
この勢いのまま勝つためにも先鋒は比較的に実戦慣れしていて、年長者でもあるシィになった。
彼の役目は相手勢力の把握。そして、戦況の流れを作る事。これは大役であり大事な役目だ。
そのプレッシャーをこの場の誰もが知っている。深刻な雰囲気になりそうだったが、それをシィが壊す。
「任された。だけど、まぁ。…全員倒しても構わないだろう」
あかん!シィ先輩!それは負けフラグや!
カモ君とキィは転生者と言う立場からそそのセリフに不安を覚えた。だが、そうではない者達にとっては心強い物だった。この温度差を知ってしまったコハクは少し身震いした。笑いを堪える為に。
「生き死にかかっている。何より後輩の将来を守るのも先輩の務めだ」
「し、シィ先輩。…ありがとうございます」
失礼な事を考えてしまったカモ君は頭を下げて、心の中で詫びて、体で感謝を表した。
それを見たシィは苦笑してカモ君達に背を向けて決闘が行われる舞台へと上がっていく。その最中に懐から取り出したロケット。その中には一人の女性との写し絵があった。
「俺。この決闘が終わったら婚約するんだ。負けられないのは俺も同じだ」
ちょ、先輩?!それもフラグ!
思わず呼び止めようとしたカモ君とキィだったが無情にも第一試合が始まった。
と、それから一拍の魔を開けてシィは相手選手の持つレイピアに体の前面を切り裂かれた。その一撃を持って意識を失い敗北した。
ほらねぇえええっ!!
第一試合はリーラン王国の敗北で幕を閉じた。
ほぼ一瞬とはいえ、シィは悲鳴を上げることも出来ずに敗れはしたが、彼の魔法が中途半端に発動したのか、それともただの偶然か一陣の風が吹き付けた。
シィと対戦すると時ですら外さなかったローブが少しはだけて、対戦相手の顔が露わになった。
整った顔はまるで看板役者を張れるほど整い、濃い青の髪を持つ女性。
何よりその髪をまとめている最強のアイテムを見てカモ君とシュージは唖然とした。
自分達と共に戦った事がある最速の冒険者。
魔法殺しと言う最強のフィジカルブーストをするマジックアイテムを持つ人間。
スピードだけなら間違いなく超人のカヒーやビコーと並び立つことが出来る女傑。
「勝者!カズラ・カータ!」
選手紹介の時、カモ君ははっきり覚えておらず、シュージ達はカモ君に気を配っていたため、気づけなかった。
フィジカルでは絶対に勝てない。同姓同名であってほしかった人物が自分達の対戦相手だ。
…あれ?もしかして勝てない?
フィジカルでは当然あちらが上。かといってあのスピードでは魔法を使う前に切り伏せられる。まさにカモ君達の天敵の登場にカモ君の不安は増大した。




