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鴨が鍋に入ってやって来た  作者: さわZ
旗だらけのカモの煮っころがし
171/205

第一話 間者

リーラン・ネーナ王国合同開催による決闘。

表向きは両国の交友を深めるための催し。だが、その内容はルール有りの殺し合い。土地やアイテムの賭け試合。そして、互いの力を見定めるもの。

本来ならリーラン王国側が有利な試合内容。


護身の札と言う安全装置があるリーラン王国特有のアイテムがあるからこそ決闘の回数はリーラン側が圧倒的に多い。だが、国家機密でもあるアイテムを敵対国になりつつあるネーナ王国側に貸し出すことが出来ないため、文字通りの命のやり取りをする羽目になった。

命の危険がないから全力を出せた。自分も相手も死なないという庇護下にいたリーラン王国側は怯えや躊躇いは少なからず出てくる。


次にネーナ王国の方針転換から来る国力の増強。

まるで神の恩恵を受けたかのようにめきめきと力をつけてきたネーナ王国の人達の能力は平均的に見ればリーラン王国を超えている。


そして、決闘会場がネーナ王国の領地開催。

場の雰囲気と言うのは選手には大きく影響する。応援されれば勢いづき、非難されれば衰える。

そして、お国柄なのかネーナ王国に人間は調子に乗りやすい人間が多い。


そんな状況で決闘に挑むカモ君達。

シィとネインの二人はカモ君ほどではないがモンスター退治や盗賊退治と言う荒事に多少慣れていた。実戦慣れしている先輩二人は普段なら頼りになる先輩なのだが、レベルがカンストしてしまっているカモ君からしたらそうではない。

決闘前の選手紹介の時。風邪で朦朧としていたが、相手の装備品や魔力の波動から強者である事は理解できた。なにより、ネーナ王国の選手達の余裕のある表情から自分達が格上だと自信を持っていた。

カモ君だけではない。それは先輩であるシィやネインも感じ取っていた。直接参加しないキィやイタでもこちらが不利だとわからされてしまった。

だが、幸いなことにこちらには天下無敵。に、なる予定の主人公であるシュージがいる。

彼の魔法ならネーナ王国選手に通用するとカモ君は信じていた。


決闘のルールは一対一の勝ち抜き戦。五人目を倒した時点で決闘は終わる。

最初の一人が負け、次の選手を決めるまでは十分の猶予が与えられるが、それを超過した場合、その選手の負けとなる。勝った選手は十分休めるが、それを超過すると不戦敗判定を受ける。

相手が降参する。気絶するなどといった戦闘不能。勿論、これには死亡も起用される。そうなれば決闘終了。その際、倒した相手の装備品を好きなだけはぎ取ることが出来る。

そして、次の試合が始まるまでの五分間は勝った側の選手にも所属チームからの回復。ポーションや魔法でのケアが許される。

その間に選手を癒して次の試合に挑めという事だ。選手は開始直前に決めて決闘を始める。


ルール説明はそれぐらいだが、これは暗に補助あり。妨害あり。と、言っているような物だろう。

現にリーラン王国控室に入るなり、天井の一部をずっと眺めているコハク。それを不思議がっていたコーテもそこに視線を移し、しばらく注視していると何やら気配を感じた彼女は水の魔法を放つ。

何もなかったはずの空間。そこに人型の透明な何かが映し出された。と、すぐにその透明な何かは弾き飛ぶようにカモ君達を避けるように控室から逃げ出していった。誰もがそれを追おうとしたが、その瞬間にカモ君が風邪でぶっ倒れたからそれどころではなかった。


「あれって、スパイ?!」


「だろうな。他にも何かあったらまずい。試合前だが、この控室を家探しするぞ。あと、呼び出せる関係者を呼ばないと」


跳び出していった透明な何かを見て、ネインはこちらの情報を抜き取りに来たスパイだと考え、その言葉にシィは控室のすぐ傍で待機していた男性警備員に声をかけたが、その人は知らぬ、存ぜぬ。と返すばかり。

この警備員もネーナ王国の人間だ。自国の不利になることはしない。逆にリーラン王国の不利になるような真似は嬉々としてやるだろう。

そして、シィとネインの風魔法で探査した結果。ロッカーや扉の淵に毒針。長椅子には痺れ薬。用意された水にも毒が検出された。


「これはどういう事だ!ここまであからさまな妨害を恥だとは思わんのか!」


「それは貴方達が持ち込んだ毒じゃないですか?私は知りませんねぇ」


シィは激怒して警備員を怒鳴りつけていたが、警備員はへらへらと笑ってごまかしていた。

そこにミカエリとその護衛数人がやってきて、現状を把握。

ミカエリは一種の外交という事もあってか、礼服で着飾っていたが、その魅力は欠片も失うものではなかった。彼女を見ていた誰もが見とれている中、彼女もまた今までここを警備していた警備員に同じ質問を投げかけた。白と黒の入り混じった秤が付いた天秤を取り出しながら。

その手のひらに収まるほど小さな天秤が白く淡く光っている。

冒険者ギルドに属する監査員がよく使う裁定の魔法に似ているそれを見た瞬間に警備員は息が詰まった。


「もう一度お聞きします。貴方は何も知らないんですね?」


異性を引き付けるような声色と表情だが、その眼付だけは厳しいミカエリの言葉に警備員はしどろもどろになる


「わ、私はスパイなど知らないっ!」


天秤には反応は無い。嘘は言ってはいない。だが、


「何か裏があるのは知っていますね?」


「す、スパイが何なのかは知らないっ!」


「何か裏があるのですね?返事YESかNO以外ならその首を掻っ切りますよ」


ミカエリの細い指先が警備員にそっと触れた。優しいタッチだが、魔法に縁がある人間ならそこに人の頭一つ消し飛ばすだけの力がこもっていることが分かる。荒事に縁があった人間ならそれが嘘ではないこともわかるだろう。


「…の、NO。です」


ぼえぇええ。


浅く息を繰り返す警備員がそう答えると天秤からまるでほら貝を鳴らしたような低い音が鳴った。嘘をついている。という事だ。

…と、いうか音が妙に生々しい。金属でできていそうなそれからなんでほら貝?


「あらあら、これはこれは、国際問題かもしれないわね。コーテちゃん。エミール君。少し時間を稼いでくるからその間少しでも体を休めていなさい」


「…はぁはぁ。…歯臭い問題?」


「ブレスケアは貴族必須スキルでしょ、エミール」


ミカエリの表情と態度が鋭いものになる。明らかな妨害とそれをあえて見過ごした落ち度がネーナ王国側にあるのだと確信したミカエリは、カモ君達に向かってこの部屋の探査を一緒についてきたリーラン王国側の人間任せて、当人は警備員の胸倉を軽々と持ち上げながらその場を後にした。おそらく、ここの責任者。ネーナ王国側に直談判を行いに行ったのだろう。が、カモ君は意識がもうろうとしていて碌に返事も出来ないようだった。


ある意味で今回の決闘の大将。最後の砦となるカモ君がこんな状態で本当に大丈夫なのだろうか?やっぱりここはネーナ王国に寝返るべきか。と、一向するイタ。

これなら自分が何かしらの妨害をする必要もないな。と、愚考しながらもコーテと共に表面上は看護するライツだった。


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