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鴨が鍋に入ってやって来た  作者: さわZ
暴れカモの妨害スープ煮込み
168/205

第十一話 カモ君は***を装備した。

カモ君はルーシーの知らせを受けて激怒した。

乱暴狼藉を働くネーナ王国の人間にこれ以上好き勝手させまいと、激情に駆られながらも奴らにどう対処すべきかを考えた。馬での移動をしながらこれからの事を考える。


問1 いくら叱ってもいう事を聞かない大人がいます。どうしますか?

答え SUN値全損もしくは、耐久値全損からくる笑いしかできないように痛めつける。


カモ君の思考は相手を完全に屈服させるための圧政者。もしくは、侵略者的思考だった。

別にそれで殺しても構わんのだろう。相手は間違いなく自分の敵。いや、モカ領を害している時点でリーラン王国の敵。ひいては愛する弟妹。クーとルーナの敵だ。慈悲は無い。


問2 相手は複数います。誰か一人でも締め上げると残りは逃げ出します。どうしますか?

答え 相手側に気づかれない様に一人ずつ。着実に仕留める。


カモ君の気分は義憤と復讐に燃える暗殺者アサシン

そんな事を考えながらカモ君はついにモカ邸目前までやって来た。

魔法を使おうと思ったが、それでは魔力の波動で感知されてしまうかもしれない。

急ぐ心を必死に抑えながら。今もなお、モカ邸に被害が出ている者の決定的な被害は出ていない間、カモ君はネーナ王国の人間を視界(視力左0.3 右2.0)にとらえた瞬間馬から静かに降りてネーナ王国の人間達の後ろに回り込んだ。


問3 相手はローア達に気を取られています。手順はどうしますか?

答え 気配を殺して相手の背後に回り、左手で口を押さえてうめき声を上げないように塞ぎます。その後、致命傷かつ声を上げさせないために相手の喉元を食い千切る。


やり口が狼やライオンと言った肉食の猛獣になっているカモ君。

ローア達を追い詰めて、完全に上位に立ったと油断しているネーナ王国の一人一人を素早く仕留めに入っていた。油断していたこと。そして、大声での大笑いでネーナ王国の人間が気付くことはない。気付いたとしてもその時点で喉元を食い千切られているのだ。声も上げられない上に食いちぎられたショックで身動きも出来ずにその場に崩れ落ちる。

その時、カモ君は音を立てないように静かに彼等を地面に転がした。


問4 とうとう愛する弟妹達が過ごす愛の巣に火が放たれました。どうしますか?

答え ぶっ殺す!


そう考えた瞬間にカモ君は今までの隠密性を投げ捨てて、火の魔法を放った輩の首筋に牙をたてた。目標が奴らの中心辺りに居ようと関係ない。

愛の巣を燃やそうとした輩の排除は他の何よりも優先する。

というか、考えるより体動いていた。

カモ君がぶっ殺すと考えた瞬間には既にカモ君は行動を終えていた。

これまで食い千切ってきた輩はこれで七人目。モカ領にやって来たネーナ王国の人間の三分の一近くを仕留めていた。

いくら強大なステータスと装備を持っていようとそれを活かす前に仕留められては意味がない。その上、相手は大騒ぎするために鎧やローブは着崩していた上に酒を飲み、大声で笑うには邪魔な兜やマスク。フードを外して騒いでいた。その生身の部分を不意に攻撃されれば普通の人間である以上どうしようもない。

そして、七人もの人間の喉を食い千切ったカモ君は返り血で血まみれだった。これは生き血をすする吸血鬼や人間を食らうグールやワーウルフと言った人型モンスターに間違えられても仕方がない。なにせ、助けられたローアやカモ君の事を見知っている衛兵達すら彼を見て慄いたほどだ。

そんな状態を見逃すと惜しいと考えたカモ君はすぐ近くにいたネーナ王国の人間。カモクンリアリティショックを受けて呆然と口を開けていた女性の口に容赦なく拳を叩きこんだ。と、同時に彼女の前歯とその近くにあった歯はへし折れ、喉の奥へと押し込まれる形になった。

平民。モブ以上メインキャラ未満に整った女性の顔。十人が見て五人は綺麗だと評価していた下顔面は完全にぐちゃぐちゃになった。最早、彼女の事を綺麗だという人間は出てこないだろうと言わんばかりの被害を出した。


「がばあああああっ!」


見苦しい苦悶と声を上げながら女性が仰向けに倒れ伏した瞬間、その喉元を、首の骨を折らんばかりに踏みつけた。その痛みで女性は気を失った。ただ、いろんなところから液体が噴出し、びくびくと痙攣している。


ネーナ王国の連中は慌てた様子を見せた。

彼等が今まで強気でいられたのは強いステータスと強い装備品からの慢心。なにより、自分達を注意してくる輩はまず声をかけてくる。やめなさい。と。

しかし、目の前のカモ君は違う。第一モーションが攻撃。しかも必殺かそれに近い一撃を繰り出してくる。いわば飢えた獣。もしくはアサシンだ。

ローア達は貴族とモカ領の自治を担っている以上、まずは声をかけて、相手の内情を知り、取り調べる。

確実に相手側の不手際があろうとまずは声を掛けなければならない。そうでなければネーナ王国の人間。彼の国の使者を討ってしまう。そうなればリーラン王国との国交に亀裂が入る。そして、戦争に陥るという雰囲気になる。それをリーラン王国の連中も理解した上で乱暴に動いていた。


自分達に逆らえばさらにひどい目に遭うぞ。


それを暗に伝えていた。

ローアはモカ領を任された身。そこに住まう民達を守るために強く出ることが出来なかった。現行犯であったとしてもリーラン王国の使者を強引に抑えることが、立場的にも実力的にも出来なかった。


だが、カモ君は違う。

廃嫡された身。いざとなればローアはカモ君をきり捨てることが出来、それによってモカ領の非を清算することが出来る。

『踏み台』キャラ。低ステータスとはいえ、レベルはMAX。実力的にはリーラン王国の軍の部隊長とほぼ拮抗していた。


その血まみれの風貌と容赦の無さ。魔法使いらしからぬ野生染みた眼力。

カモ君を見たリーラン王国の使者達はたじろいでいたが、身の危険を感じてフードやぶら下げていた兜を装着し直し、目の前のモンスター染みたカモ君に剣で斬りかかる。手甲で殴りかかるといった近接戦を仕掛けるが、彼等が兜などを装着している間にカモ君はローア達のすぐ傍にまで飛び下がりながら回避した。

人で出来る最大限のバックステップを見せられたリーラン王国の使者。およびローア達はようやく、この血まみれの人間がカモ君だという事に気が付いた。


「き、君は。まさか、エミール君?!な、なぜ、ここに!?」


「ルーシーが、教えた。だから、来た」


まるで人の言葉を覚えたばかりの野生児のようにカモ君はローアに説明した。

ローアはカモ君と何度も言葉を交わした。そして、妹のコーテからカモ君の事を知らされていた。代理領主として、クーとルーナからも常に理性的な人物だと伝えられていた。

そのため、ここまで凶悪染みた感性を持っていたなど想像してもいなかった。


常に余裕を持ってクールであれ。


多くの魔法を使い、多岐にわたる知識を持ち、ダンジョン攻略に当たるときの沈着さ。

冷静沈着。

それがカモ君に対するローアの評価だった。

驚きもある。畏怖もある。だが、それだけに力強い援軍だと思った。

逆にネーナ王国の人間達は自分達を害した人間がカモ君だと気づいた瞬間。驚きから安堵。そして、嗜虐心に駆り立てられた。


「おいおい、まじかよっ。運がいいな、俺らはっ」


「ここでボーナスの方からやってくるなんてなぁっ」


ゲラゲラと笑い声をあげてカモ君達を馬鹿にするネーナ王国の使者達。

彼等の蛮行には裏があった。

モカ領で好き勝手に暴れる事でこなせる任務はいくつかある。


モカ領を害して、決闘に出向くカモ君の心境を乱して、実力を少しでも削ぐこと。

騒ぎに乗じて、クーとルーナを誘拐。カモ君への人質とする。

モカ領を害して、カモ君をモカ領に留まらせ、決闘に向かわせない事。

そして、カモ君の殺害。

ただし、そこに『主人公』がいれば即座に引き上げるという物でもある。


モカ領で乱暴狼藉。乱痴気騒ぎをしていたのもカモ君の心境を苦しませ、足を止めさせ、あわよくば始末する。

彼等はモカ領で騒ぐだけでも多額の報酬が約束されている。実に楽で愉快な仕事だ。

ただ、問題が二つ。


一つはそこを守っていたローアではなく、クーの力があまりにも強すぎた事。クーのせいでなかなか任務が進まなかった。今は子ども故に風邪をひいて今はおとなしいが、元気だった場合、自分達の数人は殺されていたかもしれない。

二つ目は突然の乱入者により、自分達の三分の一が戦闘不能に追い込まれたことだ。


だが、そんな問題もカモ君をここで仕留めれば帳尻が合う。むしろ、カモ君を仕留めた時の報酬が大きすぎてプラスになる。

文字通り、鴨がネギをしょってやって来たのだ。

ネーナ王国の使者達は既に完全装備の上、いつでも戦闘に入れる。こうなってしまえば、カモ君の攻撃は自分達には通用しない。

彼の実力はリーラン王国に潜り込んだ工作員から知らされている。それらを加味しても負ける気がしなかった。不意を突かれなければ自分達は負けないのだ。


「よくも、私達の仲間をやってくれたな。代償はその命を持って償ってもらうぞ」


「おいおい、この獲物は俺がもらうぜ」


ネーナ王国の使者達に仲間意識はほぼ無い。あるのは我欲。少しでも美味しい汁を吸う輩だ。むしろ、足の引っ張り合いをしているとも言える。

奴等の目は完全にカモ君達を下に見ている。まるで森の中で商人を見つけた盗賊のように下衆な感情を隠す素振りも無いものだった。


「獲物?エミール様が獲物とはどういうことだ!」


「今から死ぬ奴に関係はないだろぉ~。ぎゃはははっ」


モカ邸に着いた火が消えた事で、多少は理性が戻ってきたカモ君の目に知性が戻ってきた。と、同時にカモ君から発されていた気配も弱まる。

それを見て、カモ君が日和ったと感じた使者達は更に暴言を吐く。


「っと、そうだ。任務ついでにここにいる女でも遊ばせてもらうぜっ」


その言葉にカモ君の眉尻がピクリと動いた。

モカ邸にいる女性は主に三名。

ルーシーが屋敷から飛び出したことは、彼女を攻撃したからいないと判断できるだろう。

モークスはもうおばあちゃんだ。彼等の言う遊び相手にはほぼならないだろう。

消去法で行くとルーナという幼女だけになる。

いや、そうはならない。奴らはルーシーとモークスを見間違えただけかもしれない。そうでなければならない。そうだった場合、カモ君は。


「お前、ロリコンかよっ。まあ、あの髪は擦れば気持ちいいだろうがよ~。まあ、いいや、俺の愛れもしてもらうか」


「じゃあ、俺はあの生意気な魔法を使うガキにするぜ。顔は良いからよぉっ」


「ショタかっ。お前もいい趣味しているぜ。穴があれば何でもいいのかよっ」


「「「ぎゃはははははっ!」」」


かすかに振るえているカモ君を見て使者達は大声でバカ騒ぎをする。

目の前のカモ君は恐怖で打ち震えているのだと。だが、カモ君をよく知る衛兵は違う。

これはあれだ。カモ君はとてつもなく怒っているのだと。

あれは、モカ邸でカモ君がクーとルーナと遊んでいる時にモンスターや盗賊の報せを持ってきた時に見せる武者震いのような物。しかも、先ほど彼等が感じていた気配。カモ君をモンスターだと勘違いしていた物に似ている。いや、それ以上か。


カモ君は愛する弟妹のためなら。地位も名誉も捨てる。命だって放り捨てる。だが、今はそれ以上の怒りだ。クーとルーナを凌辱すると宣言した輩相手に慈悲はもちろん無い。ある意味、命以上に大事な『愛する弟妹達からの評価』が下がってでもこいつらは殺すべきだと。


「死ねぇえええええっ!」


カモ君はまだ十分に休めていない体に鞭打って飛び出す。

ローア達との連携もモカ邸の防衛も考え無しに使者達に突っ込んでいった。


「馬鹿がっ、お前が死ねぇっ!!」


カモ君に最も近い、ミスリルで出来た全身を覆う西洋を思わせる鎧を着こんだ男がカモ君に向かって、同じくミスリルで出来た手甲で殴りつける。彼はいわば対カモ君装備を渡された人間だ。

カモ君以上の格闘術を持つ彼は魔法が苦手で打ち合いになればカモ君には負ける。だが、それも全身を覆うミスリルが弾いてくれる。

ミスリルはそこらの金属に比べ、頑丈で、防具ならば魔法もある程度弾き、軽い。

格闘術を主にする彼でもほとんど阻害しない程の軽くて丈夫な鎧を着こんだ人物ならカモ君を圧倒することも出来る。

現に目の前まで迫ったカモ君に余裕でカウンターの左ストレートを突き出す。

カモ君は補助魔法を使ったのだろう。彼の体がにわかに光り少しだけ突っ込んでくるスピードが上がったが、カウンターは余裕で間に合う。


ぐしゃりと。カモ君の鼻っ面を文字通りへし折る左ストレートが突き刺さる。

それににやりと使者たちは唇を曲げ、大笑いをしようとした。だが、それは。




ヅガマエダ




カモ君も同じだった。

カモ君は確かに突っ込んでいったが、腕はまだ振りかぶってもいなかった。彼はもとより、相手のカウンター狙いだ。

何もカウンターのカウンターを狙ったわけではない。相手を殴ってもこちらの拳が砕けるだけ。

目の前の男はもちろん、その後ろにいるローブのようなものを着込んだ輩を殴ってもおそらく効果は無いだろう。それだけの自信を相手から感じ取っていた。

だったら猶更、一番重装甲。ミスリルの輝きを放つ男のどこを殴ってもダメージを負うのは殴った側である。

使者の伸びきった左腕をから絡めとるようにカモ君は殴られた顔を中心に勢いよく回転。その際に相手の左手首を自身の左手で掴み背負い投げを行う。

投げられそうになった使者は油断したと思ったが、こちらはまだ複数の味方。しかもカモ君側の攻撃は効果がない。投げた後に関節技でもされようともその瞬間、自分の仲間がカモ君を襲う。手柄を奪われるのは癪だが、投げられた男は余裕だった。


だが、その仲間を自分が。自分の体が使者の男が襲った。


「「ぶげぇっ!?」」


正確に言うのであれば、カモ君は男を投げた後も手を放さず、更に回転して更に使者の男を投げるようにぶん回し、すぐ後ろにいた別の使者に男の体をぶつけた。

いくらマジックアイテムとはいえ、ミスリルほどの硬さをぶつけられたらさすがに痛みを伴う。投げられた男も振り回されっている状態で受け身も取れないまま、物理的に振り回されていた。

その痛みで怯んだ相手をミスリルの鎧で殴りつける。それは正に。


カモ君はミスリル鎧(こん棒代わり)を装備した。である。


鎧を着こんだ大人を振り回せる膂力は普段のカモ君でも出来ない。

それが出来た要因は三つ。


カモ君のブラコン・シスコン魂に火をつけて脳のリミッターが解除された事で火事場のクソ力が発動したこと。

カモ君が使った補助魔法で筋力を補助したこと。

そして、最後にミスリル鎧が軽かったこと。


使者がカモ君を挑発しなければ、火事場力も発動しなかった。怒りを超えて、殺意を感じさせたため、補助魔法を使うという事もなかった。

そして、ミスリル鎧じゃなく、それこそ鋼や鉄と言った物理的に重い金属が使われた鎧ならいくらカモ君でもぶんぶん振りませなかった。


そんなミスリル鎧を振り回すカモ君に呆気を取られ、殴られていたネーナ王国の使者たちだが、カモ君の進撃をこれ以上させないとカモ君を攻撃しようとしたが、それをローアが率いる衛兵達に阻まれる。


「こいつらを押さえつけろ!何があってもエミール君の邪魔をさせるな!」


「「「おおーっ!!」」」


自分達の攻撃を受けても平気な顔をしていた使者達が初めてダメージを負った顔を見せた。

ここでカモ君がやられれば全てが蹂躙されてしまう。だが、カモ君にこのまま攻めてもらえれば勝てるかもしれない。

カモ君が、ミスリル鎧の男で殴っている人間を除いた使者達をローア達が全力で押さえつける。攻撃は通用しなくても妨害なら彼等にも出来る。

それを使者側もわかっていた。だからこそ、今、一番暴れているカモ君を仕留めようと使者達はしかける。


「「「どけぇえええっ!!」」」


「「「行かせるかぁあああっ!!」」」


カモ君対使者の一人。

ローア&衛兵対使者達。


戦況は二つに分断された。そして戦況は少しずつカモ君達に傾きつつある。

ネーナ王国の使者達は殴られ慣れていない。常に自分達が上位であり、それが脅かされるものではないと考えていたからこそ、こうやって、少しでも不利になれると弱腰になる。

そうやっている間にカモ君が使者の一人を殴り倒した。

ミスリルで殴られればさすがに少しのダメージはあったのだろう。大した外傷は見られないが、痛みから来る失神か。それとも打ち所が悪かったのかとにかく一人倒したカモ君は、手にしたミスリル鎧の男を振り回しながら使者達に襲い掛かる。

ローア達は日ごろの訓練の成果でカモ君に向けて使者を一人突き離すという連携を見せた。

その一人。また一人とカモ君は使者達を叩きのめしていった。


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