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鴨が鍋に入ってやって来た  作者: さわZ
先立つ不安のカモのミートパイ。プリセンス仕立て
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第一話 マッチング学園

リーラン魔法学園は婚活会場やないで。


カオスドラゴンの娘。コハクの目的を知らされた理由が今年度から実施された特待生との縁を結ぶため。

そのために未だにパニックが続く学園の惨状を肌で感じているシバは文句を言いたかったが、言えば最後。オリハルコンドレスに変化したスフィアドラゴンが学園を更地にするだろう。だから言えなかった。


頭が痛い。同時に胃も痛い。


国家存亡の危機を知らないうちに背負わされたシバは何とか体裁を崩さず、かつ、失礼が無いようにコハクをもてなした。


現在、学園長室にいる人間はシバとコハク。そして、ここへ来る途中で女性教員に気絶したコーテを預け、詳細を話してきたカモ君の三名である。

出来る事なら教頭も呼びつけ、いや、リーラン王国の王族の誰かを呼び出して話を進めたかったが、今はそんな状況ではない。

学園だけではない。王都全体がスフィアドラゴンのプレッシャーを感じて小さなパニックを起こしているのだ。まるでテロが行われたかのように騒々しい。

そのため、教頭は魔法学園の沈着化のために奔走し、王族はというと緊急事態に備えて軍備や治安部隊を編成しているだろう。今、動けるのは余程の実力と軍事力を持つ武闘派貴族だけだろう。


「? この国の貴族の婚姻はこの学園で結ぶと聴いた」


「ナチュラルに思考を読まないでくれないかのう」


「ま、まあ。貴族同士が恋愛する場所にはうってつけなところですから」


コハクの言葉に引きつりながらも笑顔で接するシバ。

確かに婚約者がまだ決まっていない貴族の多数がこの魔法学園に来て結ばれるという話はよく聴くが、それは三割ほどで、残りは親の交友関係や隣接する領での婚約が主だ。

うかつなことを考えるものではないと慄いたシバ。

それに連鎖するようにカモ君も冷や汗を流しながら補足する。


シャイニング・サーガの主人公はこの魔法学園で様々な交友を深める。

同性と信頼関係を深め、相棒として世界に名を馳せる。

異性と恋愛感情を高め、伴侶としてエンディングを迎える。複数人いればハーレムも可能だ。

そんな可能性がある場所だとカモ君から教えられたコハクとアースはカモ君が嘘をついたのかと彼を見ると、カモ君は必死に弁明する。

前もってコハクがアースにプレッシャーを抑えていてと言わなかったら、再び、魔法学園はスフィアドラゴンの気配でパニックが再発するだろう。


「出来れば恋愛重視の学園生活を送りたい?」


疑問形な発言をするコハク。彼女のこれまでの人生観。いやドラゴン生観で恋愛というのは未知の感情だからだ。

何せ、彼女の周りにあったのは普通の人間が立ち寄ればすぐさま死んでしまうような危険地帯。危険生物が跋扈している。

そんな場所で大切に育てられたといえ、あまりにもコミュニケーションが取れなかった、ある意味、箱入り娘(裏ダンジョン発)だからか自分の与えられた任務の重大さを知らなかった。


「と、なるとこちらで新たな特待生として迎え入れるしかありませんな。失礼ながらこちらで出身地を偽造してもよろしいですかな?」


「戸籍は大事ですから。勿論悪いようにはしません」


カオスドラゴンが暴れずに済むならシバは何でもするつもりだ。一度暴れれば村が滅び、領は消し飛び、国が廃れる。それがドラゴンであり、その頂点のカオスドラゴンがたった一人の人間を要求するだけで暴れないのであれば大金星である。

だが、世の中には必ず馬鹿な生き物が現れる。

自分よりも強大な存在を御せると勘違いして、ちょっかいを出して滅びる。しかも関係のない者達も巻き込んで。

そうならないためにもコハクは重大人物であるという偽装情報を作り出さなければならない。そして、彼女からカモ君も手伝うことになっている事を教えられたシバはカモ君をチラリと見てこう言った。


「帰ってきてくれてうれしいよ。エミール君。それもこんなビッグプロジェクトを持ってきてくれるなんて、驚いて寿命が三十年縮んだよ」


「それって、人間だと即死なんじゃ?」


「あ、あはは。申し訳ございません。なにせ、自分も必死だったもんで」


年の功というべきか。

シバは読心術を使うことが出来るコハクに気取られないようにカモ君に悪態をついた。そして、今の様子を見てコハクはあまり交渉に向かない性格だという事も把握した。

まあ、ドラゴンは基本強奪。交渉など余程高位のドラゴンでなければ成り立たない。

それからしばらくして、ようやくと言うべきか。

この国の有力貴族筆頭かつ自由人なセーテ侯爵の使いと共にミカエリがやって来た。

常に彼女をガードしている忍者の姿はそこにはないように見えた。だが、いくら彼女。もしくは彼の腕が立つとはいっても目の前のコハク。正確にはアースには歯が立たないだろう。ならば不興を買わないようにと初めから姿を隠し、ミカエリを矢面に立たせることで好印象を持たせようという魂胆で、ミカエリだけがやって来たかのようにみせた。


そこで知らされたのはシュージとの縁組みの協力を要請するもの。


「…エミール君。君が戻ってきてくれたのはうれしいけど。どうしていつもトラブルを持ってくるの?」


「真面目に生きているつもりなんですけどねぇ…」


ジト目のミカエリへの返答にカモ君自身も不思議がっていた。


そこからは色々な意味で制作活動が得意なミカエリも含めて、コハクの戸籍を急遽作ることになった。


彼女は海を跨いだ先にある島(裏ダンジョン)に存在するやんごとなきとある部族ドラゴンのお姫様(ボスの娘)というふわっとした骨組みに色々と肉付けされた戸籍を手に入れることになった。

話が終わると、シバとミカエリはそれぞれで王族への面会へと伺い、カオスドラゴンの思惑を知らせに向かった。




そして、翌日。

コハクは打ち合わせ通り、自分がカオスドラゴンであることは隠してカモ君。シュージのクラスへの転入生として、カモ君達の教室で自己紹介を行っていた。


「カオスドラゴ「んんっ!」。…海の向こうで姫をやっていたコハクです。よろしくお願いします」


本当の自己紹介をしそうになったところをカモ君が咳払いをして何とか中断させることが出来たが、もう九割がた言ってしまったのでカモ君のクラスメイト達の殆どは、あの左右のこめかみから生えた虹色に輝く角を生やし、魔法学園の制服の上から羽織るように着込んだドレス(半端ない魔力を感じさせる)姿の少女を見て、ただの人間じゃないと把握するのであった。


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