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鴨が鍋に入ってやって来た  作者: さわZ
カモ鍋。勘違いの味覚添え
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第十三話 お前、主人公だろう

 決闘騒ぎから三日が経過して何とか無事に魔法学園への入学式を終えることが出来たカモ君はクラス分けの名簿が張り出されている掲示板の前でショックを受けていた。

 外見はクールぶっているのでその心情は誰にもわからなかっただろうがとにかくカモ君はショックを受けていた。

 いや、自分は踏み台。弟妹達の為に。ついでにこの国の為に主人公に蹂躙されることは覚悟していた。

 その主人公とは自分と同じクラスで特別枠の平民から選ばれた生徒。分かっているのはこれだけだが、平民のクラスメイトを探せばすぐわかると思っていた。

 そして、クラス発表がされた校内の掲示板で自分の名前を見つけて、次に同じクラスの平民の名前を探した。

 貴族には自分の名前と名字である家名。そしてミドルネームがあって、それらはリーラン王国のどの位置に領地があるかで決まる。

 ミドルネームがナの場合、王都より北寄りの位置にある領主・貴族。東寄りなら二。王都を含む中央がヌ。西側がネ。南がノである。

 ナニヌネノ。と、覚えやすかったがこれはこれでいいのだろうか?それはさておき。平民にはこのミドルネームが無い。だからすぐに見つけることが出来た。その名前が。


 シュージ・コウン。しゅーじ・こうん。並べ替えるとしゅじんこう。主人公。


 お前かよ!主人公お前かよ!

 名で体を示しすぎだろう!思わず吹き出すところだった。しかし、決めつけはよくない。何故なら平民の名前はもう一つあったからだ。しかし、彼の外見は赤髪のイケメン少年。これは地元ではさぞモテていただろう。


 キィ・ガメス。きぃ・がめす。並べ替えるとめすがき。…メスガキ。


 これは酷い。

 これが名を体で示していたら自分はどう対応すればいいのか?もしこっちが主人公だったらどうすんだ?しかもこの二人は聞けば西側。ネの領地出身の平民で幼馴染らしく、二人共魔力の質が高く、属性はわからないが既にレベル2の兆候が見られるという噂があるらしい。

 じゃあやっぱり主人公か?しかもゲーム開始時より少し強くなっている傾向にある。とりあえず、この一年、もしかしたら半年で自分はいなくなるかもしれないが、異世界でも恒例の自己紹介が始まるまでカモ君は自分の教室の真ん中に配置された椅子に座り、クラスメイトと主人公候補が来るまで見た目はただ座っているだけだが、瞑想をして判断する時を待っていた。




 地元の田舎から王都までやって来たシュージ少年は未だに自分がこの魔法学園にいることが信じられなかった。

 最初は女の子なのにガキ大将をやっていた幼馴染のキィが突然現れた野良のゴブリン一匹を相手に魔法を発現させ、撃退した事から始まった。

 小さな女の子。まだ七歳になったばかりの自分達が遊んでいる時に現れたゴブリンに襲われた時に覚醒した彼女の魔法の力。しかも珍しい闇の属性を持つキィはそれを撃退した。だが、現れたゴブリンは一匹だけでなく、もう三匹いたのだ。そこにいたのはキィと自分を含め子どもが数名。襲われれば誰かが、もしくは全員が命を落としていただろう。

 キィは最初の一体を倒しはしたものの魔力は底を尽き、絶体絶命のところで自分も火の魔法の力に覚醒した。

 キィが発動した魔法がレベル1のボールを投げつける程度の力だったとすれば自分は川に流れる清流だっただろう。ただ清流というにはその熱量はあまりにも激しかった。

 自分の手から生じた炎の流れはゴブリン達の状態を焼き尽くし、炎が出終わった跡にはゴブリンの足首しか残っていなかった。

 その事が領地内に知れ渡り、シュージ達は地元の領主の援助を受けながら魔法の修練を重ねて、今、魔法学園にいる。

 自分はあの時から魔法の訓練をしているがどうにも成長している気がしない。最初は自分が魔法の腕前は上だったのに、いつのまにか追い越されて幼馴染のキィは既に闇属性の魔法レベル2まで手を伸ばしかけている。

 この学園に来る前に領主から普通は学園で学んでようやくレべル2になれるんだよ。と言われたが男としてレベル1のままでは終われないと思っていた。

 そしてそれは三日前に起こったカモ君と不良貴族の決闘を観た時になお強く感じた。

 魔法を使わずに五人を圧倒。しかもレベル1とはいえ複数の属性魔法を使って先輩たちを圧倒。しかもその後、手に入れた戦利品を元の持ち主に返していったという。なんという度量。なんという心の器の持ち主。まるで男とはこう生きるのだと。勧善懲悪。どれだけ言葉を尽くしてもあの少年を褒める言葉が尽きない。


 実際はただの兄馬鹿がシスコンでぶちギレただけで。その後のブラコンで同情してアイテム返しただけである。


 そんな少年が自分と同じクラスメイトになった。

 キィは自分があの少年を越えると言っていたが、実際彼を見て、理解した。

 自分とキィだけの目には見える彼のレベルを。


 エミール・ニ・モカ LV38

 エレメンタルマスター


 キィが言うにはこれはステータスプレートというもので相手の事が簡略だが分かるというもの。

あの鍛え上げられた体から発生する覇気を。魔力を。そしてレベルも何もかもが自分より上だ。何より同年代で彼以上のレベルを見たことが無い。

 きっと才能があったんだろう。それ以上に努力したんだろう。同年代できっと彼に勝る存在はいないのだろう。

 それでもキィは越えられると言った。幼馴染にそこまで言われて何もしなかったら男が廃る。

 いいだろう。挑戦してやる。行くぞ最強。魔力の貯蔵は十分か!




 そんな挑戦的な視線を送る主人公君に対してカモ君はというと、


 …あれ?なんかすげぇ見てくるけど俺まだ何もしてないよな?

これからちょっかいはかけていくけど。

俺、何かしちゃいました?


 残念な思考をして、主人公君(仮)を見返していた。

 見た目だけは主人公とライバルの睨み合いに見えるだけに残念さが増すのであった。

 もし、主人公君(仮)の見ることが出来るステータスプレートがもう少し情報を開示することが出来たのならきっとカモ君のエレメンタルマスターの下にこう表示されていただろう。


 ブラコン&シスコン


 と、


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