第九話 労基違反
コーテとシュージに美化1000%されているカモ君はというと、
…眠れん。
血走った眼で見慣れぬ天井を見ていた。
タイマン殺しを倒した後、依頼してきた領主の手配で準備してもらった宿場のベッドに倒れるように潜り込んだカモ君だがミカエリの特性ドリンクのせいで眠れる気配がなかった。
魔法を使って眠れればいいのだが、彼の魔力は既に空。睡眠を挟まないとカモ君の魔力は回復しないのでそれも出来ない。
一応、犯罪者を捕まえ、交流しているとはいえ、脱走の恐れもあるからビコーの部隊四分の一が今も見張っている。
「組織の残党がやってきたぞーっ!総員、緊急出撃ーっ!」
いや、まあ、確かに寝むれないとは言ったけど、休めないとは言っていない。
ポーションで傷口やひびの入った骨。傷ついた内臓なんかもいやしたけど、こうも連続出撃があると、ね。…わかるだろ?
そんなカモ君の心情を誰もくみ取れるわけもなくカモ君も救急箱を持って出撃。魔力尽きたからね。隻腕だからね。出来ることがあるとすればポーションを配る衛生兵もどき。
ただしビコーの部隊の半分はタイマン殺しに半壊させられたので、最前線でかく乱要員も兼ねて動き回る羽目になる。
…最前線に出る衛生兵とは?
ビコーという超人がいたから短期決戦。一時間にも満たない時間で犯罪組織の残党をとっちめることは出来ました。だが、カモ君の疲労度はこれまでにないほど溜まっていた。
ドラゴンとの死闘(から逃げる)。
犯罪組織の殲滅。
ダンジョン攻略。
タイマン殺しと対峙。
犯罪組織の残党狩り。
どれか一つでも体力・魔力・集中力の殆どを消費する。カモ君やビコーの部隊の人間も例外ではない。
残党狩りは後処理が大変だった。町のど真ん中で魔法や投げ槍、弓矢が放たれてあちこちがボロボロになっていたので、その修復が夜をまたいで太陽が昇るまで続いた。
領主の管理する衛兵とこの地にいた冒険者達の協力もあってたった半日と言うスピード解決を成したが、代償は大きい。
ビコーに鍛えられている部隊の人間とカモ君は冬の明朝。寒空の下であっても大量の湯気が噴き出ている事が目に見えていた。彼らは汗を拭きだして今にもその場に倒れこみそうだった。というか、その場に倒れて眠りたかったが、ここでミカエリのドリンクが効いてくる。
体の中には疲労は感じている。むしろ疲労の中に自分の体を感じているくらいにつかれていた。だけど、意識を奪うことは出来ない。させてくれない。
脳みそが常に『寝るな』という信号を送っているのか意識も手放せないのだ。
いや、意識を手放せなくてもいい。眠れなくてもいい。だから休ませてくれ。いい加減疲れた。
ビコーと言う強者がいるからいつものダンジョン攻略やモンスター退治よりも緊張はしなかった。だが、疲労感だけは前世から現世の中で一番溜まっていると宣言できるカモ君。
休ませて。
勿論。カモ君の願いがも叶うことが無い。
「これより犯罪組織の連中を王都まで護送する!これだけの数の犯罪者をここに置いておくわけにもいかないからな!何?魔力が尽きたから自分は役に立たない?では回復させてやろう」
そういわれてカモ君に渡されたのはマジックポーション(違法)。
なんでも犯罪組織が持っていた物を押収した物らしい。使えば魔力は回復するけどとても苦く、頭痛・吐き気・眩暈・立ち眩み・悪寒などなどバッドステータスもつくらしい。
それって違法薬物じゃ…。
え?エレメンタルマスターだから魔法での応用の幅が広いだろうって?
の、飲みませんよ。そんな危ないもの。
むわぁーっ!な、なにをするだーっ!
その硬い棒(マジックポーションの入った試験管)を口に入れる気なんでしょ!
モルモットみたいに!モルモットみたいに!
アーーーーッ!
ビコーの部隊が王都リーランにつくまで、カモ君は様々なバッドステータスを抱えながらも見事に護送のために周囲の警戒。護送の檻を引っ張っている大型の馬に回復魔法と補助魔法。昼休憩や小休憩の時に摂る食事の準備をこなした。
デスマーチをこなした社畜のような、集団で暴行を受けた後の被害者のように、そしてゾンビになったかのような光を失った瞳を澱ませながら。
カモ君は任務を達成したのである。




