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第五話




「るーどーるーふー!!!!」


凄い勢いで女の子が目の前を通過していく。あまりの突然の出来事に腰を抜かしてしまった。


「王妃様、大丈夫ですか?」


メルが僕に手を差し出してくれる。この細い腕に体重をかけてしまったら折れるのではないかという不安に駆られる。しかし以外にもメルは力持ちで、ひょいっと僕を立たせてくれる。


「ありがとうメル。所で今の女の子は?」


「女の子??あぁ、魔王様の兄弟に当たる方です」


「ほぇ~ルドルフにも兄弟なんて居たんだ~。気になる!挨拶してくるね!」


「あぁ!王妃様!!」


メルが何か言っていたが、それを横目に僕もルドルフの部屋へと走っていく。







「はぁ…はぁ…無駄に広いよこの城。」


あれから30分はたっただろうか。あまりに広すぎて迷子になったとは言えない。とはいえ、やっとルドルフの部屋を見つけた。


「ルドルフ~?入るよ~」


「い、今入ってはダメだ!」


ルドルフがそう言ったが既にドアノブにかけていた手は戻らず開けてしまう。


「あ、」


「あ…」


ルドルフと目が合う。そこにはあられもない姿をしたルドルフとさっきの女の子がいた。


「こ、これは違うんだ!」


「大丈夫ですよ魔王様。お楽しみ中すみませんでしたね!!!」


「ま、まってくれ!話だけでも!」


「これからメルと昼食を取る約束があるので。後はご自由に!このバカ!!」


「おーい!!!!」


ルドルフの方向を後にして扉を閉めた。






「おやおや、王妃様そんなに怒ってどうしたのですか?」


「別に何も無いよ」


「何も無いように見えませんが」


メルが僕を心配してくれる。しかし、まさかあんな事があったなんて言えない。


「もしかして…見てしまったのですか?」


「見たって何を?」


「その…くんずほぐれつしていた所を…」


メルが顔を赤らめながらそう言う。どうやらメルはそういう事に耐性が無いようだ。


「メルは知ってたんだね。そう、見ちゃった。本当に最低だよね。責任取るって言ったくせに」


あの婚姻の儀から1週間が経った。あの話し合いの後しっかり責任を取るって言ったのに、たかだか1週間で浮気をするとは。


「それに兄弟とあんな事するなんて不純過ぎる」


「それに関しては魔王様が悪く無いとは言いませんが、どうか許してあげてください」


「許してあげない!」


僕が声を荒らげてそう言うと、何故かメルがフフフと笑い出す。


「なんで笑ってるの?」


「フフフ、だっておかしいじゃないですか。あんなに魔王様の事を好きじゃないって言ってたのに、浮気をなされたらそんなに怒るなんて」


「そ、それはただ嘘つかれたことに怒ってるだけだし!あと兄弟であんな事するなんて」


その場面を思い出すと、何故か僕まで恥ずかしくなって手で顔を覆い隠す。


「魔王様に兄弟は居りませんよ。あくまで兄弟に当たるというだけです。血は繋がって居りませんし」


「そ、そういう問題じゃないし!」


「それにきっとエメル様が迫ったのでしょう。魔王様は手を出していないと思いますよ」


自信をもってそう言うメルに僕はなにも言い返せなくなっていた。





「綾汰ー!」


勢い良くルドルフは此方に向かってくると、あれはとか実はとか必死に弁解しようとしている。


「大丈夫、分かってるよ」


「え?」


「何もしてないって約束できる?」


「できるできる!」


頭は上下に必死に振り約束する。魔王様がこんな状況になってるなんて国民はどう思うのだろう。

そんな事を考えているとまた1人凄い勢いでやって来る。


「どこへ行ったのだー!ルドルフー!」


「ヒィィィ!綾汰助けてくれ!」


「え?」


「見つけたぞールドルフ!」


何故か僕の後ろに隠れたルドルフぷるぷる震えてる。あれ、魔の王だよね?


「何故人間がいる!人間そこをどくがいい!」


「いや、あのどこうにもルドルフが」


「人間ごときがこのエルメ様にたてつくのかー!」


「いや楯突くもなにも…」


僕は下を見る。身長は140cm位で何故かネコ耳が生えている。


「よしよし」


「ふにゃ!?ふにゃー♡ってやめろー!女にそんな事されても嬉しくない!エルメはルドルフにしかなびかないぞ!」


また女と勘違いされてる。もうなんだか何もかもどうでも良くなってきた。


「メル!メルはどこいった!この不敬ものを始末せよ!」


「エルメ様。その方は綾汰様と言って現在の王妃様です」


「王妃…?」


「はい。つまり魔王様の妻です。」


「…」


「…」


「ふにゃーーーーー!!!!」




あぁ、頭が痛いよ。

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