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第十三話






「き、貴様ァァァァッッッ!!!」


広間へ辿り着いたルドルフはその光景を目にして、咆哮した。まただ、またあの時と同じ光景。大切な人を守れず、ただ怒りに任せて攻撃しただけの、あの時と同じだ。また俺は同じ過ちを犯したのだ。そんな思いだけが頭を支配していた。


「遅かったなぁルドルフ!愛しの綾汰ちゃんはもうお人形さんになっちまったぞ!」


「ヴア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!」


そう叫ぶと、手から黒く禍々しい物を放つ。それを言葉にするには奇妙で、何とも形容し難いものだった。

その"何か"はエルメの右腕に触れると、まるで初めからその右腕は無かったかのように消え去った。


「ッんだよこれ!規格外過ぎだろッッッ!」


逃げようとするが、既に騎士団に囲まれており逃げ場を無くす。そんな時、中心に謎の歪みが現れる。その歪みから突如として、黒い、王冠を模したシルエットを象った、黒服の男が出てきた。その姿は長身で、とても中性的な顔をしていた。


「エルメよ、なんだそのみっともない格好は」


「あ、あぁ、クロウラーさまぁ♡」


エルメは男の事をクロウラーと呼んだ。そしてこの男も。


「お前が黒幕か、クロウラー...」


「やぁ、久々だね」


名前を呼ばれたクロウラーは、軽快な挨拶で返事をする。それはまるで旧友にあった時のような、親しみのある声だった。


「また会えて光栄だよ、わざわざその為に出てきたんだからね」


「俺は…俺は貴様の顔などもう見たくもなかった…!!」


「こんな若返った姿でも分かるんだね。さすが宿敵」


そんな御託はいいと言わんばかりに、ルドルフが攻撃を仕掛ける。それを当たったのか当たってないのかすら感じ取らせずに、堂々と話を続ける。


「おいおい、焦るなよ。まだ本番は始まってないんだ。戦いはまた今度してあげるから。今日は挨拶だけ。さぁ、帰ろうかな」


「ま、まてェェ!!」


「あ、あとこの玩具飽きたから君にあげるね」


クロウラーはそう言うと、エルメの頭へと手を触れる。その瞬間エルメは発狂しだした。


「あらあら、今までやった事が全部頭に入ってきてる。パンクしちゃうかな。まぁいいや。僕は要らない玩具は捨てる主義なんだ。」


「お前、まさか...」


「そう、全部は僕の意思でした。最高に面白かったでしょ、この喜劇」


ニコニコと笑顔を絶やさずに、話をするクロウラー。その笑顔には、狂気すら感じる。いや、それしか感じないだろう。


「貴様ァ!」


「おっと、だからそう慌てちゃだめだって。君の破滅は時期来るんだから」


そう言うとまた歪みへと戻っていった。最後に今までとは違う笑みを残して。







「クソォォォォォォ!!!!!!」






広間には周りに居る衆人観衆や、辿り着いた騎士団の声など消し去り、ルドルフの悲しみだけが包んでいた。

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