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第十二話







「ハァァァァァ!!」


野太い咆哮共に、剣を振るうアルバ。その剣先からは、灼熱の炎が飛び出していた。今にも焼き尽くしてしまいそうなほどに赤々しい炎は、残虐なまでにエルメを飲み込もうとしていた。


「チィ!」


舌打ちを放ち、すぐさまバックステップで避けるエルメ。やはり、先程よりも目で分かるほど、スピードが上がっていた。


「まさか守護聖がこんな所に居るなんて...」


全てが誤算だったという事が顔色で伺える。守護聖というものが、何かはよく分からないが、エルメにとっては嬉しくない状況らしい。


「魔王様の慈悲に甘え、魔王様に弓を引いたことが全ての元凶だ。懺悔はあの世でしろ」


その声は荒々しくも、冷静とも取れる声色だった。怒りを露わにしつつも、騎士道の精神は忘れない。これがアルバという男様だ。


「避けてばかりでは終わらないぞ!」


その言葉の通り、エルメは避けるだけで精一杯だった。アルバの周りを炎が覆っているため、近づこうにも近づけないといったところか。エルメは防戦一方だった。


「確かに守護聖なのは驚いたけど...触れられなきゃ大した事じゃねぇ!時間が経てばお前は負けるんだ...」


攻撃を避けているだけのエルメが不敵な笑を浮かべる。今、エルメは完全に押されている形だ。そんな彼女が何故笑うことが出来るのか。それは何か手があり、何処かで勝利を確信しているからなのだろうか。


「時間が経てば勝てる?舐めてもらっちゃ困るな...もう時期に決着がつく」


そう言うとアルバは地面を強く蹴り上げた。エルメは、またかといったか顔で、攻撃を避ける体制へと入る。これではまたジリ貧だろう。


そう思われた瞬間だった。突如、エルメの後ろから火柱が上がる。その地面に魔法陣の様なものが刻まれていたのだ。


「貴様が攻撃に囚われている間、地面にルーンを彫り上げた。罪人よ、破壊の業火に焼かれろ。その炎は灰になるまで消えない」


「ウガァァァッッッ!!!」


勝負あったという顔で剣を鞘に収める。その瞬間、アルバを覆っていた炎は跡形もなく消えた。


「私にこの力を使わせたのはお前で五人目だ。その事を誇りに地獄に落ちるがいい...」


そう言い、アルバが僕の方へと歩き出す。その刹那だった。さっきまで燃え上がっていた筈のエルメの姿が、アルバの後にあった。


「アルバ!後!!!」


「...!?」


アルバの腹部に、深くエルメの短刀が突き刺さっていた。お腹からは大量の血が流れ、アルバは力なく跪く。


「待ってたよ...この時をな。賭けでしかなかったけど、どうやら賭けは私の勝ちなようだぜ?」


「な、なぜ...」


「お前の炎を消してやったよ。私の能力で。力を過信し過ぎたお前の負けだ。チェック1 無効」


エルメがそう呟くと、アルバの目からは生気がなくなり、地面に突っ伏すように倒れた。


「さて、邪魔者は居なくなった。後はお前だけだ。お前は力では殺さない。私の剣で首を刎ねられるんだ」


殺意を包み隠さず、どす黒い声で僕にそう言うと、僕の髪をつかみ短刀を首元に当てる。


「じゃあな、クズ」


それが僕が最後に聞いたセリフだった。

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