過去
「エリナ、あまり1人で出歩くんじゃない」
「あら、ごめんなさいルドルフ。庭のお花達が綺麗だったから、直で見たくなってしまったの」
エリナはそう言うと、花達を愛でた。その姿は、何とも言えない程に綺麗で、ルドルフは言葉を失っていた。
エリナとルドルフは、まだ婚姻を済ませる前の2人であった。エリナは人間であり、そしてルドルフは魔王という立場があった。
そのため、2人の事は城内だけの秘密であった。
「エリナ、様魔王様、朝食が出来ました」
「あぁ、分かったよメル」
ルドルフはそう言うと、エリナの手を取り、広間へと歩いていった。こんな幸せな日々が毎日続けばいい。ルドルフもエリナも、そう思っていた。しかし、非情にも2人の愛は許されることは無かった。
「魔王様、良くない噂を耳にしたのですが」
「はて、何のことか分からないな」
「そうですか…あくまでシラを切りますか」
「シラを切るも何も俺は何も知らない。」
「そうですか…じゃあこの人間の女は殺しても構いませんね…」
「!?貴様!」
遂にエリナの事が配下にバレてしまう。それも魔王に服従していない反逆者に。
「ごめんなさい、ルドルフ。私の事はもういいから…」
「そんな事!」
「どうしますか、魔王様。この反逆行為による処罰は、魔王だろうと許されませんよ。しかし、私も鬼ではありません。退位してください。私はそれで許しましょう」
反逆者の男はそう言うと、エリナの首元にナイフをあて、従わなければ殺すという姿勢を見せた。
本来であれば、従うはずの無い事だが、ルドルフはエリナのためであれば、王位を捨てる覚悟であった。
「分かった、分かったからエリナを…」
「だ、ダメ!」
「魔王様は物分りが良くて良かったです。では明日退位宣言を民衆の前でお願い致します。それからこの女は返しましょう」
「おい!それじゃあ!」
「大丈夫、私は約束は守りますよ…ぬふふふ」
男はそう言うと、部屋を出ていった。この男とエリナが、後のロイヤルキャットととの根深い因縁へと繋がっていくのであった。