第十話
「はぁ…」
ルドルフは頭を抱えていた。いくら過去の事があったとはいえ、綾汰を縛りつけ過ぎていたかもしれない。そんな思いが、ルドルフの中にあった。それに対して、メル達を責めすぎていたかもしれない。そんな思いもあった。しかし、ルドルフには魔王としての威厳もあったのだ。
「ルドルフ様!」
「ど、どうした!」
突然の侵入に焦りを見せつつも、ノックもしずに入ってくるのは、ただ事ではないと気づく。
「お、王妃様が…」
「綾汰になにが!!」
「何者かに攫われましま…」
「おい、綾汰見てみろ。こいつらはこれから何が起きるかも知らずにはしゃいでいる」
「ど、どうしちゃったんだよエルメ…」
あの後、部屋から連れ出された僕は、街の見下ろせる丘へと連れてこられていた。何のために僕を攫ったのか。何のためにこんな所へ連れてきたのかは、未だ定かではない。
「い、いくら僕がルドルフの妻だからって…」
「おまえは何か勘違いをしている様だが…私はアイツに対する愛情などとっくに捨て去っている。」
そう言うエルメはいつもと違う口調で、まるで、人が変わったような目をしめいた。
「待っていた…この日をどれだけ待ちわびたか!!」
そう言うと、エルメはポケットから何かを取り出し、それを遠くへと投げ捨てた。その瞬間、どこからともなく爆発音がした。
「ま、まさか」
不安に思い街に目を向けると、そこは火の海と化している。
「え、エルメ…まさか…」
僕がそう問いかけると、彼女は狂った目をして笑い転げていた。
「さぁ逝くぞ!」
そのまま、僕は引っ張られていく事しか出来なかった。
「くそっ!くそっ!あの時あのままメルを傍に置いておけば…」
過去の事を悔やむあまり、頭が働かないルドルフ。なぜこうなのか。なぜ愛した人間を守れないのか、そんな思いだけが頭を支配する。
行先も分からず、街へ繰り出していくと、とんでもない光景を目にしてしまった。
「まただ、あの時だ。あの時と同じだ。ロイヤルキャットが進行してきたと来た時と…」
ルドルフの中で、嫌な予感が背筋を走った。