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プロローグ

「王妃様、こちらへ」


突然そのように言われ手を引かれる。僕の手を引くのは肌は褐色で耳が長く、まるでエルフの様だ。様だというよりはエルフなのだろう。

普段であれば何かしらのアクションを起こすのだろうが、人間、本当に理解に困ると考えるのを止めるようだ。また一つ賢くなってしまった。


「魔王様がお待ちです」


そんな下らない事を考えていると、大きな扉の前に連れていかれる。まずこれが夢である事を祈りつつ、考えられる可能性を全て模索する。が、頭が回るような状況でもなく、何故か着せられたドレスを引きずり扉を開ける。

扉を開けると僕の家の大きさを遥かに超えるであろう部屋が現れた。そこにはまるで、中世の様な鎧と、部屋の真ん中に王座があるだけだ。

その王座に腰掛けるのは如何にもといった、人間のようでそうではないなにかだった。きっとこれが魔王なのだろう。


「待っていたぞ」


待っていたのが僕では無いようにと願っていたがそんな訳があるはずも無く、魔王はゆっくりと僕の方へと歩いてくる。

あー、食べられるのかなぁなどと考えながら身構えていると何故か手を握られる。


「王妃よ、正式な婚姻は今日ある。暫し待たれよ」


頭の中をハテナが埋め尽くす。王妃?婚姻?はて、何を言っているのだろうか。最初にそんな事を言われた気もしたが、全て気のせいで突き通して来たのに全てを無下にされた。完全に王妃と言っていた。そしてその後に婚姻とも。これが聞き間違いであれば、僕は大喜びして耳鼻科へと行くだろう。

何故か握った手の甲へキスをする魔王。見た目は厳ついオッサンみたいな見た目してるのに、やる事が紳士なんだが。

混乱したまま目を丸くしていると、とんでもない事を言い出した。


「俺達の子供の名前は何にしようか?」


丸かった目がまるで三角か四角になった気分だった。今このオッサンなんて言ったの?聞き間違いでなければワシらの子供って言ってたよね?

謎の違和感に覆われ、恐る恐る自分の腹部へと目をやる。心なしかふっくらとしていた。


「息子か娘か。俺としてはどちらでも嬉しいが」


そう言うと僕のお腹を撫でる。その瞬間全てを理解する。


「うぇぇぇぇええええええ!?!?!?」


異世界に来たことよりも何よりも驚きが強すぎて、働くことを止めていた僕の頭もとうとうニート脱却したようだ。驚きすぎて謎の奇声を上げてしまった。


「そうかそうか!そんなに叫ぶほどに嬉しいのか」


そうニヤニヤしながら言う魔王。





夢であれという祈りが切実な願いに変わった瞬間だった。

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