来々々世
「そういうのはいいからさ、ちょっと出てこいよ。私の片割れ」
大賢者が言った。
ミコトの心臓が紫色のあやしい輝きを放つ。
「カルカダル」
ミコトの唇が動いた。彼女のものではない声を出す。
「よお、敗北者。私と一緒に一世一代の大博打を打たないかい?」
「なに」
「私ともう一度一つになれよ。そんな小娘の身体を脱ぎ捨ててさ。こっちには千の術と蓄えに蓄えた膨大な魔力があるぜ。このままじゃあおまえは“不滅”の勇者に復活を阻止され続けるだけのピエロじゃないか。百年の敗北は楽しかったかい?」
邪神はなにも言わなかった。
「同意したとみなすぜ?」
大賢者は、否、“封印”の勇者に滅ぼされて時の止まった邪神カルカダルの肉体は紫色の光に向けて手を伸ばした。それに触れる。紫色の光がカルカダルの体に吸い込まれていく。カルカダルが僕を振り返る。
「いやあ。悪かったね。ずっと復活を狙ってたんだけど、なかなかうまくいくタイミングがなくてさ。さあ、大チャンスだよ。こいつの不滅の一因は自分の肉体を持たないことなんだ。けれど今回はぴったりかっちりハマる邪神の本来の肉体だ。本当の意味で君は邪神を殺せる。そのぶん今回の私はウルトラハイパーパーフェクトフルバージョンだ。君と仲間達が倒したときよりずっと強いぜ。だけど君も強くなった。きっと勝ちの目はあるよ。もちろん私には勝ちを譲る気なんてのはまるでない。私も本気でやらせてもらうよ。
私が勝てば人類絶滅の超バッドエンド。君が勝てばミコトちゃんを取り返しての超ハッピーエンドだ。ひゅう、心躍るね」
「どっちもバッドエンドじゃねえか」
僕はぼやいた。
「いくぞ、僕の親友」
「こいよ、私の大親友」
僕らは殺しあった。