S0-0「ようこそ、人族の最前線へ」
やりたかったキャンペーン導入を出来なかったので悔しいから文章にした
喧騒と紫煙、酒精に包まれ、慣れない人間が訪れたら様々な意味で間違いなく顔をしかめる薄暗い空間。
煤けた鎧を身にまとい酒を煽る人間。
泥と汗に塗れ、艶としなやかさを失ったくすんだ金髪を手櫛で整えながらタバコを吸う女エルフ。
人間の規格で作られたイスに座れず、床にあぐらをかき大量の肉と酒を次々と胃袋に収めるリルドラケン。
ほつれたローブを纏い、古びた分厚い本を片手に料理を食べるタビット。
テーブルに清潔な布を広げ、銃を分解してメンテナンスするルーンフォーク。
数多の種族が雑多に秩序なく、時に喧嘩をし、和気あいあいと、親密に、不干渉に、各々が自分の好きな時間を過ごしている。
例外なく共通している事はこの場にいる者全てが物騒な剣や杖を持ち、鎧やローブを身につけている事だろう。どれも使い込まれている事がひと目でわかるほど汚れ、ほつれ、傷ついている。しかし、みすぼらしさは無く、むしろ力強さを感じるほどである。
ここは、エイギア地方レーゼルドーン大陸にある要塞都市カシュカーンの冒険者ギルド。
レーゼルドーン大陸の玄関でもあるここカシュカーンでは毎日のように数多くの冒険者が冒険者ギルドで依頼を請負い、命がいくつあっても足りないと言われるエイギア地方の各地に赴き、蛮族退治、遺跡調査、幻獣討伐、害獣退治など数多くの困難に立ち向かう。依頼に成功したら各々の拠点に帰り祝杯を上げ次の依頼を請けるまで英気を養う。依頼に失敗し、生き残れたのならば反省会で杯を酌み交わし、金銭面の問題がないのなら再度準備を整えまた次の依頼を請ける。
他のどの地域よりも蛮族や動植物、幻獣の脅威が大きいレーゼルドーン大陸では毎日多くの冒険者が行方不明になり、また生きて帰ってきた冒険者は脅威に見合った報酬を手に入れ豪遊するか、新たな装備を揃えるか各々が十分な対価を得る。
竜を倒せば英雄に、危険な蛮族を倒せば栄誉を手にし、新たな遺跡を見つけ踏破すればまだ見ぬ魔剣が手に入ることもある。
そんな吟遊詩人の物語と同じ事がここでは日常茶飯事のように起きている。
そんな死と隣りあわせ、死か名声かとも言われるレーゼルドーン大陸に夢を見たのか、栄誉を見たのか、金を見たのか、はたまた他に目的があるのか、また新たな英雄候補達がエイギア地方に足を踏み入れる為に冒険者ギルドのカウンターを叩く。
「ようこそ、新米くん。あんたが有名か無名かは興味がない、というより意味が無い。他とここを比べても参考にならないからだ。だが、やる気がある冒険者は大歓迎! だが気張りすぎるなよ。死ななきゃ金、女、名誉、果ては爵位だって手に入る。1に生存、2に生存、3,4に生存、5に勇気だ。さて、前置きはこのくらいでいいだろう……。まだ見ぬ遺跡が腐る程眠り! 倒すべき相手も湧いて出てくる! 弱者は悪で強者が善! 信念を貫きたきゃ力をつけろ! ようこそ、人族の最前線へ!」