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サバイバルライフカードゲーム 2

魔法使いのオッサンにカードゲームで負けてしまったキズオ。

彼を仲間にするためには、勝たなければならないが、

 オッサンとの勝負に負けてから、三日が経った。


「おんや? オマエさんは確か、キズオとか言う」

 俺はリベンジのために酒場を訪れていた。

「ゲームだ。オッサン」

 今度は俺が勝つ。


 サバイバルライフカードゲーム、開始だ。

 俺は『人物のカード』として、自分自身を用意した。

 今回、シルヴァレアは来ていない。

「たった一枚でいいのかー?」

「ああ」

「あのお嬢ちゃんはどした? この前の負けで愛想でもつかされたか?」

「いや、彼女には正規のルートで人を集めて貰っているから」

 それに、このゲームは一人の方が戦略を立てやすい。

 攻略の鍵は『出来事のカード』にある。


 オッサンが自分自身のカードをキャストする、と。

 一枚目の『出来事のカード』が卓上へ。

 『ウッドオクトパスを倒せ』だ。

「一発目から討伐カードかよー」

 オッサンが頭を抱えていた。

 出来事のカードには、いくつかの種類がある。

 『戦闘』を想起させるモンスターの絵が描かれた『討伐の出来事カード』。

 『仕事』を想起させるトラブル等の絵が描かれた『依頼の出来事カード』。

 『事故』を想起させる自然災害等の絵が描かれた『運命の出来事カード』。

 戦闘の難易度は『中』。

 どちらか一方でも敵を倒すことができれば、出来事として回収される。

 能力値が足りなかった方は『怪我をして一回休み』だ。

 討伐できないまま5ターンが経過すると、両者とも墓場行きとなる。

 仕事の難易度は『低』。

 先に条件を達成した方が出来事として回収して終わりだ。

 特にペナルティーはなく、純粋に勝利へ近づく。

 両者とも依頼を達成できないまま10ターンを数えると、これまた墓場行き。

 そして、事故の難易度は『高』。

 手持ちのカードで能力値が足りなかったら、即アウトだ。

 出来事のカードは1ターンが終わる度に補充される。

 つまりは、二人がカードを一枚ずつドローした後に補充されるわけだ。


 オッサンは補助カードを五枚引いて、こちらを伺うように見ていた。

「先にやらねーのか?」

「ああ」

「フ。じゃあ、お先にやらせて貰うぜ。

 『古ぼけた杖』を装備。『オレを待つ人』のカードで強化だ」

 『ウッドオクトパスを倒せ』のカードが敵陣に回収された。

 これで俺は一回休み。だが、カードは引ける。

 相手に一歩先を行かれたが、その分、手持ちの補助カードは増えた。

「ふう」

 オッサンのため息が聞こえる。

「前回も思ったがよ。オマエさん若いのに、少し慎重すぎやしねーか?」

「命がかかってるからだ」

 慎重なくらいで丁度いい。

「そんなんじゃ負け続けるだけだぞー」

「負けるのは慣れてる」

「ほう」

 二枚目の出来事カードは『食い逃げ男の確保』だった。

 俺は『大声』と『扇動』のカードを使って、条件を満たす。

 これで一対一だ。

 

 その後、お互いに仕事と戦闘のカードを五枚ずつ取り合った。

 

 次が十三枚目。

 どちらか一方が七枚目に届く。

「次で決まるわけだが」

 選ばれたカードは『大熱波』。

 運命の出来事カードだ。

 俺は二枚のカード『実家の蓄え』と『干し肉』を使った。

 オッサンは手持ちのカードをすべて卓上に出して、

 勝ち誇った笑みを浮かべる。

「これでオレの勝ちだぜ」

 しかし、俺も同じ笑みを返してやった。

「誰が、七日間勝負って言ったんだ」

「あ?」

 オッサンが「あ」と間の抜けた顔で止まった。

「せっかく良い勝負なんだから、最後まで、だろ?」

「おいおい、正気かよ」

 酒飲みに正気を疑われた。

 ちょっとショックだ。

「乗らないのか?」

「いいや。やってやろうじゃねーか。

 その無謀に付き合ってやるぜ?」

 オッサンは卓上のカードを拾うと、運命をクリアできるギリギリの補助カード

二枚を選別して置いた。

 オッサンが首を傾げながら、場と自分の手持ちカードを見比べる。

 七日間勝負と思い込んでいたせいか。

 手持ちのカードが心もとないと見た。

「あと残りは何枚だったかねー?」

「二十七枚だ。

 『家出ネコの捜索』も、まだ出て来てないな」

「当たり前だ。前回と同じものが出てくるかってーの」

 何を言ってんだ、みたいな顔で返されたが、

 俺はこの後にネコの捜索が出てくることを、すでに知っている。

「この先に残っているカードは『家出ネコの捜索』『虹色の芋』

 『王族指南役』『次世代への希望』『式典のガードマン』

 『裏切りの者、捜索』『暗殺者を倒せ』『戦士ゴブリンを倒せ』

 あとは、なんだったっけ?」

 自信満々に言い放ってやったら、オッサンが目を丸くしていた。

「オマエさん、なんで」

 言いたいことはわかる。

 なんで、カードの内容を知っているのか、だ。

 ここまで来れば、もう隠すこともない。

 負けてから今日まで、この三日の間に調べたのだ。

「過去にアンタと勝負したヤツから、カードの内容を教えてもらった」

 彼は頻繁に、このカードゲームを行っている。

 敗戦者を探せば、いくらでも情報は手に入るわけだ。

「それによると、出来事カードの数は約四十枚。

 俺がリサーチできたのは、そのうちの四分の三。約三十枚。

 でも、ここまで解れば十分だ」

 『家出ネコの捜索』で要求される数値と、ほか数枚の出来事カードの数値を

比較。おおよその要求数値を割り出して、補助カードを集める。

 補助カードは『所有権が認められていて、かつ実在している物』から選ばれる

ため、一時的にでも色々な物品を用意すればいいだけだ。

 俺は万全の準備をして、この勝負に臨んでいる。

「ッハ!」

 オッサンはテーブルの上に置いてあった酒瓶を掴むと、酒場の中央に

向かって、思いきり投げていた。

 砕ける酒瓶。

 鋭利な音が響き渡り、酒場から雑音が消えた。

「うるッせえな! 気が散るからどっかにいきやがれ!」

 オッサンは椅子にドカッと座りなおす。

 良い気分に水をさされた泥酔客が荒れ狂うのを尻目に、オッサンは目を

閉じて、瞑想の構えだ。

「残りの札、手持ち、使ったカードは」

 ぶつぶつと記憶を探るように唱える姿に、背筋があわ立つ。

 相手を本気にさせてしまったようだ。

「よし」

 確認時間、おおよそ十秒。

 酒場のマスターが客を追い出し、邪魔にならない程度の音楽を流す。

 と、オッサンは酔いを感じさせない鷹のような目を開き、俺を見た。

「このオレに最後まで付いて来られた人間はいねー。

 出来事のカードは残り25枚。

 オレに勝てたら、攻略でも何でも付き合ってやるぜ?」

「わかった。望むところだ」

 リベンジマッチは延長戦へ突入した。


 勝負は軽々と二十枚を飛び越し、二十一枚目へ。


 出来事カードの内容が、次第にキナ臭くなってきた。

 『真夜中の寝所』『革命将軍フエズ・ボルトレイの暗殺』

 『燃え盛る城からの脱出』『終わらない冬の時期』

 次第に俺は勝負を忘れ、ただ出来事を追うようにカードを回収していた。


 そして、最後の出来事が明かされる。


 三十八枚目のカードは『宝物エニル・バトラー』だった。

 要求される能力値は、バカみたいに高い。

 すべての数値が一万を軽々と越えている。

 これを設定したのがオッサンだとしたら頭をシェイクしてやるところだが、

「足りるか?」

 オッサンが額に汗を浮かべながら聞いてきたので、無罪放免だ。

 しかし、

「足りるわけないだろ」

 仮にもし万が一、この場にシルヴァレアが居たとしても無理だ。

 望みがあるとすれば、最後のカードが『依頼』であること。

「二人して補助カードを十枚ずつ引けば、オマエさんはどうだ?」

「無理だー」

 仮にすべて最高級の補助カードだったとしても、強化の値は一枚平均100を

越えない。

 焼け石に水だ。

 ここでルールのおさらいをしておこう。

「ゲームが終了した時点で、墓場に人物カードが置かれていた場合は?」

「人物カードに描かれているヤツが死ぬな」

「依頼の出来事カードは、10ターンが経過してもクリアされない場合、両方の

人物カードが墓場に送られる?」

「すまん」

 謝って済む問題ではない。

 これは、詰んでないか?

 俺は天を仰ぎ、

「仕方がありませんね」

 ここまで、ずっと気配を消し、傍観していた女の子が声を上げた。

 オッサンを師匠と呼んで慕っていた彼女が卓上に自らの人物カードをキャスト

する。

 俺の人物カードの上に、まるで上書きするような形で。

「お、おい! エニル!?」

「私達の事情に、彼を巻き込むわけにも行きませんから」

 出来事カード『宝物エニル・バトラー』の要求値が一気に下がった。

 五桁から、二つ位を落として、三桁後半へ。

 クリア不可能から、協力すれば何とか、くらいにはなっていた。

「おー!」「おー!」

 男二人はひれ伏すように少女を見上げ、オレンジ色の後光を見た。

 

 カードゲームの正体は、魔法使いのオッサン(本名はザラ・エイシン)の半生

を追う物語だった。

 最初の十年は普通の子供、後に魔法使いとして活躍し、二十代半ばで王宮へ。

どこの国かは知らないが内乱に巻き込まれ、お姫様を連れて逃走中。

 あまりにも劇的な半生に、俺も驚きを隠せない。

 というか、お姫様相手にエロいことしてたのか。見上げた根性だな。

 とにかく、彼らは彼らで、仲間を探していたわけだ。

 カードゲームの形を借りた腕試しで。

 最後の出来事まで辿り着けば、秘密を共有する関係になる。

 そこで彼らへの協力を断れば、マジで殺されるのだろう。


 俺は「相互に協力すること」を、二人に約束した。

 

 仲間は増えたが。

 しかし、問題も増えた気がする。


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