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サバイバルライフカードゲーム

キズオとシルヴァレアは仲間探しを開始する。

 酒場を探すことになった。

 店選びが、また難しい。

 出来れば早い時間から飲んでいる常連さんに当たりたいものだが、

 酒の出は読めない。

 泥酔客の溢れる中に、シルヴァレアを放り込むわけにも行かないし。

 適度に上品で、口を滑らせてしまう程度に酔える場所。

 やはり難しい。

 ビハイルン通りから外れて、横道へ入る。

 民家と民家の間に、一軒の酒場があった。

 あったが、しかし、かなりのボロだった。

 建造から100年の雰囲気を持つ石壁の酒場。

 俺はシルヴァレアに相談するまでもなく駄目、と。その前を通り過ぎて、

「あの、この店はどうでしょう?」

「ええ!?」

 シルヴァレアに呼び止められてしまった。

「どうしてまた」

 こんなボロを選んだのだろうか。

 彼女は真剣な顔で、酒場の奥を見つめていた。


 オレンジ色の光が酒場全体を照らしている。

 中央ではしゃいでいる数人と、隅でしっとり飲んでいる人が交じり合い、

独特の雰囲気を作り出していた。

 シルヴァリアは酒場を横断するように、奥のテーブルへ。

 そこには泥酔した中年の男が一人。

 男の手に捕まっている女の子が一人。

 少女の「いや!」という短い悲鳴にかぶせるような、

 パシン!

 と良い音を響かせ、シルヴァレアは男の手を叩いていた。

「止めなさい。彼女が嫌がっています」

 シルヴァリアの声が凛々しいものに変わっていた。

 中年男は自分の手を眺めてから、赤く腫れるのを見届け、ニヤリと笑った。

「あ? ダレだ、おまえら?」

 シルヴァレアが名乗りを上げようとして、

「待った」

「?」

 後ろから声をかけ、止める。

 彼女は怪訝そうな顔をしたが、いま名乗るとろくなことにならない気がした。

 思わず口を出したくなる光景だった。

 しかし、先に手を出してしまったのは彼女だ。

 これは、見事に釣られたのではなかろうか。

「なあ。オッサン」

「オッサンはひどくねーか? これでもまだぎりぎり三十代だぜ?」

 ヒゲ面で、ぼさぼさの髪。浮浪者のような服装の男。

 飲みすぎたのだろう赤ら顔でとろんとした目をしていたら、とても三十代には

見えなかった。

「アンタの年齢も気になるが、それより、そっちの女の子は知り合いか?」

「フフフ」

 オッサンは笑って誤魔化した。

 しかし、否定しないということは、

「俺達から金を巻き上げるつもりだったんだな」

 オッサンはまともに答えてくれなかったし。

 女の子に確認を取ると、彼女は深々と頭を下げた。

「ごめんなさい。

 お師匠様を怒らないでください」

 女の子の方は十代に見えるから、パパと娘。じいちゃんと孫くらいでも十分に

通用する組み合わせだが、師匠と弟子だったのか。

「つまり、真面目で正義感に溢れるヤツが店の前を通りかかったら、彼女に抱き

付いたり、嫌がることをして店内まで引き込んで、暴力を振るわせる。

 その後は示談金なり、賠償金なりをふんだくるわけだ」

「なッ!?」

 シルヴァレアが絶句していた。 

 金の稼ぎ方としては、褒められたものではないが、

 弟子は師匠を売るタイプには見えない。

 さっきのも傍目から見ていたら完全にアウトな図だが、二人の間ではギリギリ

セーフなのだろう。

 そこに割り込んで暴力を振るった。悪いのはこちらだけとなる。

 とはいえ、合法だからやっていい、とはならないだろう。

 シルヴァリアはゆらりと怒りの炎を滾らせていた。

 見事にカモられてしまったし。ショックも大きいようで。

「ふたりで、いくらくれる? ビール一杯でもいいぜー?」

 見破られた相手に吹っかけるほど、酔っているわけではないようだ。

「話を聞かせてくれるなら、奢っても良いんだが」

「プランターさん!?」

 どうして! と叫びそうなシルヴァリアを手で抑える。

 もちろん、考えがあってのことだ。

「アンタ、強いのか?」

 俺の質問に、オッサンは一瞬、眼光するどく睨んできた。

「なめんなよ! オレは某国の宮廷魔術師を十二年つとめあげた大魔術師様だ!

その前は冒険者として、いくつものダンジョンを封殺してきた!」

「そうなんですよ! 師匠はすごい人なんですよ!」

 弟子もようやく師匠を褒めることができて嬉しそうだった。

 酒飲みと子供だが、どちらも魔法使いには違いない。

 俺達が求めている人材だぞ。とシルヴァリアに目配せするが、

「うー」

 彼女は明らかに嫌そうな顔をして、オッサンを見ていた。

 少女の方なら仲間にしてもいい、なんて贅沢を言っている場合ではない。

 人は一人でも多い方がいい。

「俺達は魔法使いを探してたんだ」

「あー?」

「仕事しないか。ダンジョンの攻略を手伝って欲しい」

「いいぜー。ただし条件がある」

 オッサンは軽く引き受けた。

 懐に手を入れると、

「ゲームでオレに勝てれば、な」

 分厚いカードの束を取り出してみせた。


 『サバイバルライフカードゲーム』


 オッサンは慣れた手つきでカードをシャッフルしていた。

「こいつは魔法の札を使ったカードゲームだ。

 カードの種類は三つ。

 『人物カード』『補助カード』

 そして『出来事のカード』だ。

 『人物カード』は自分を含めて三枚まで。

 『補助カード』は自動生成で四十枚。

 『出来事カード』は、まあ、初心者相手だし。七日間でいいぜ?」

「七日、と言うと、七日分の出来事を集めろ、ってことか?」

 オッサンは賞賛の代わりに口笛で答えると、オレに数十枚のカードを放り投げ

表面を突く。

「ルールはこうだ。

 まず自陣に『人物のカード』をキャストする」

 オッサンがカードを裏のまま置いた。

 こうやるんだぞ、というパフォーマンスだろうか。

「なにボーっとしてんだ。おまえさんもやれよ」

「あ、ああ」

 言われるがまま、俺はカードの束から一枚を取り出して、

「!」

 表の絵に自分の姿を見つけた。

「ああ、そうだそうだー。

 大切なことを言い忘れてたぜ。

 このゲームにはオマエさんの命をかけて貰う」

「おい。なんだそれ」

 聞いてないぞ。

「人物カードが墓場に置かれたままゲームを終了したら、そいつは死ぬ」

「死、って。ちょッ!?」

 思わず、自分の描かれたカードを取り落とすところだった。

 テーブルの上には、すでにオッサンのカードがキャストされていた。

 彼の手に残った二枚のカードには、それぞれ『弟子の女の子』。

 『酒場のマスター』が見て取れる。

「まさか」

 俺も自分の手札を見て、

「!」

 二枚目のカードが『シルヴァレア』に変化しているのを確認した。

 思わず、オッサンを睨む。

「おー、怖い怖い」

「やりやがったな」

「ゲームはもう始まってるぞ?

 早く人物のカードをキャストしないとタイムアップで俺の勝ちに」

「くそッ」

 俺は自分の姿が描かれたカードをテーブルの上に置いた。

 途端に、中央に置いた出来事カードの山が強烈な光を放つ!

 はじけるように、山札のカードがめくられた。

「ほう、最初の出来事は」

 たくさんの猫が描かれたカード。

 そして『家出ネコの捜索』と書かれていた。

「おい、オッサン。説明しろよ。

 どうやったらこのカードを取れるんだ」

「それが他人様にものを聞く態度かー? んー?」

 腹の立つ顔をして、腹の立つことを言われたが、

 命が掛かっているのでは、仕方がない。

「教えて、ください」

「やーだねー」

 本気で殴ろうかと思った。

「チッ」

 自分で考えろ、ってことか。

 卓上の出来事のカードを触ってみる。

 すると表示が切り替わり、いくつかの数字が現れた。

「走力100。筋力20。運力250?」

 カードにはクリア条件が設定されていて、要求する数値を満たせばいいようだ。

 そして、条件をクリアすれば『一日』が埋まる。

 あとはこれを七日分、繰り返せばいいわけだ。

 俺は自分のカードの能力値を確かめるために触ろうとして、止めた。

「おんやー? 見なくていいのか?」

「ああ」

 人物のカードには能力値が設定されているようだが、それをわざわざ相手にまで

見せてやることはない。

 仕方なく、俺は手元にあるシルヴァレアのカードを突く。

 画面が切り替わる直前、彼女が怒ったように見えたが、気のせいだろうか。

 そして、能力値が現れた。

「げ」

 評価は何点が満点なのだろうか。

 とりあえず、運以外の項目には四桁の数字が並んでいた。

 ということは、このシルヴァレアのカードを出しておけば、とりあえず安泰だ。

とは思うが、墓場に置かれたら死ぬ、という言葉が引っかかる。

 彼女のカードは、どうしても必要な時に、他に手がなかったら使おう。

 あとは俺の能力が足りなかった場合だが、

 どうすればいいのだろうか?

 とりあえず、先を譲って、オッサンのやり方を盗もう。

「そっちからやってくれ」

「うし。じゃあ、オレが先行するぜー」

 オッサンは補助カード四十枚の中から五枚を引く、と。

 そのうちの三枚を卓上にキャストされた自分のカードに重ねて置いた。

「まずはネコ缶トラップだ」

 一枚目のカードは、どこにでも売っていそうな、普通のネコ缶だった。

 『家出ネコの捜索』に表示されていた数値が二つに割れて、オッサン側の

『運力』の数値がすごい勢いで減っていく。

 それで効果を使い切ったのか、ネコ缶のカードは墓場へ。

 二枚目の補助カード『高価なシューズ』と

 三枚目の補助カード『追い風』が使用された。

 しかし、ネコの捜索には数値の変動がない。

 おそらく、キャストされたオッサンのカードを強化したのだろう。

「なるほどな。基本的なルールはわかった」

 補助カードはそうやって使うのか。

 次は俺の番だ。

 しかし、

「ほい。これで『家出ネコの捜索』はクリアなー」

「は?」

 オッサンは出来事のカード『家出ネコの捜索』に手を伸ばすと、それを

自陣へと持ち帰った。

 卓上から出来事のカードがなくなる。

「もしかして、これ、カードは取り合いなのか!?」

「そうだぜー」

 条件を満たせばいいだけだと思っていた。

「さて、とー。

 そろそろ本気を出して、巻き上げるとするかね」

 オッサンが前傾し、睨むように俺を見た。

 させるかよ、とは思いつつも、

 俺は場に立ち込める負けの空気を感じ取っていた。


 十分後。


 オッサンは七日分の出来事を集めて、俺を圧倒した。

 俺は自分のカードと、シルヴァレアのカードを守るだけで精一杯だったのだ。 

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