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クロアケダンジョン第二層前半戦

ダンジョン攻略の足がかりを手に入れた攻略団。

今回は、

 ダンジョン攻略、一日目、夜。

 

 初日は上手くいった。

 それも『かなり』だ。

 探索がB27まで到達したことを考えると、ダンジョンは今も拡大を続けて

いるのだろう。

 モンスターが土を掘り返して、一生懸命にダンジョン拡大に努めている。

 地下で力を蓄えるため、と言われているようだが、この必死さは、少し別の

ものを感じる。

 「うーむ」と地図を見てうなっている。と、首を巡らしたタイミングで部屋

の端に人影を見つけた。

「!?」

 ビックリして立ち上がる。

 一瞬、影の女神を思い出した。

 が、それは思ったよりも小さな影で。

 ダンジョン迷彩の黒と茶色を基本とするワンピース。

 奴隷ッ子に首輪ではあんまりなのでネクタイを付けた男の子。

 ずっと声をかけずに待っていたのだろうか。

 そこにいたのは、戦時雑用のみで構成された『伝達班』のリーダー。

 奴隷ッ子の中では最年長の男の子、トロボロイだった。

 本陣から前線部隊への命令は、戦時雑用を通じて伝えられる。

 その中核を担うのが彼ら、伝達班だ。

 昨日の攻略について、何か言いたいことでもあるのだろうか?

 あるのだろうな。

「あー、ごめん。

 昨日は思った以上に伝達線が伸びて大変だったと思う」

 まずは失敗を認めて、お詫びする。

 思った以上に『サーチ』が順調すぎて、命令伝達線が伸びきっていることに

気付かなかったのだ。

 断線しなかったことが不思議なくらいである。

「今日はそうならないはずだから」

「あ、そうじゃなくて、です」

「ん?」

 トロボロイは、ひどく悩んだ様子を見せて、言い辛そうに。

「伝達は、その、部隊の隊長さん達が上手く班を残してくれて」

「ぐふ!」

 俺のミスを、四人のリーダーがカバーしてくれていたようだ。

 やはり、持つべきものは頼もしい仲間、ということだろう。

「ええと、伝達について、じゃないなら一体なにを言いに?」

「あの、攻略を続けるん、です?」

 もちろん、続けるつもりだ。

 そう口にする直前、彼の気持ちを推察して、台詞を飲み込んだ。

 トロボロイの言いたいことも、何となくわかる。

「お宝も手に入れたし。目的の半分は達成したし。

 帰りたい、って思うのも無理ないと思う」

「はい、です」

「でも、実は、この攻略にはいくつかの願いがあってな。

 『人の手に負えない者』の討伐。

 それと、レアの、シルヴァレア・レイフォートの父親探し。

 これがセットで、攻略なんだ。

 もうちょっと、付き合ってくれるか?」

「はい、です」

 トロボロイは頷いてくれた。

「悪い。ありがとな」

 思わず謝ってしまった。

 身勝手な話だと、自覚しているからだろう。

 彼は目的を達成した。ここで帰っても金は手に入る。

 にも関わらず、明日も命をかけて、ダンジョン第二層へ挑戦させられる。

 彼の言葉は、口にはしないが、攻略団の人員すべての代弁だろう。


 なにせ、昨日のは前哨戦。今日からが本番なのだから。


 ダンジョン攻略、二日目、朝。

 まずは作戦会議だ。

 レア、ゴドリー、ジレイ、モイト、エイシン、トロボロイ。そして俺。

 全員が丸テーブルを挟み向かい合う形で、議長のレアが話を進める。

「今朝方、地上部を探索してみました。

 しかし、地下一層と地上を繋ぐ階段のようなものは、やはりありません」

「サンドマンの出入りはない、ってことか」

 ゴドリーの推察に、レアは首を横に振った。

「これは、おそらくですけど」

 レアの目が俺に向く。

 説明を託されたようで。少し張り切る。

「サンドマンはダンジョンを拡大することで、外を目指しているんだと思う」

「地上部のあのフタはサンドマンを閉じ込めるためにある、ってのか?」

「おそらくだけど。

 下りの階段が見つからないことも、偶然じゃない可能性がある」

 第一層と同じく、第二層にも降りる階段がない。

 まだ可能性の段階だが。

「このダンジョンの名称が変わりそうですね。

 さしずめ『行き止まりの迷宮』と言ったところでしょうか」

 ジレイがなにやら、おしゃれなことを言い出した。

 確かに、ここまでフタ。フタと続いて、次もフタだったら俺も考えるが。

「とにかく、昨日みたいな奇襲は、もう通じないだろう」

 無警戒だった一層とは違って、突入を警戒しているだろう二層の敵が相手

だ。

 簡単にエリアを奪えるとは思っていない。

 急造の攻略団がどこまでやれるのか。

 本番は、まさにこれから、と言った感じだ。

「明日は本陣を第一層に移動させましょう。

 その後に、本陣北の小部屋において、床を爆破。第二層に移動します。

 あとは、睡煙底流陣を使い、敵モンスターを眠らせてから突入する、という

予定ですけど。どうしますか?」

 俺とモイトが二人旅をしている間に、話し合って決めたようだ。

 しかし、敵にはサンドマンが多い。

 それも労働に疲れた小型のサンドマンだ。

 睡眠系の魔法は効果が薄いだろうし。何より、放置しても勝手に眠りそうな

状態にある。

「どうだろうな」

「ダンジョン創設時に入り込んだ野良モンスターがいるかもしれねーだろ?

 一応、やっといた方がいいんじゃねーかな」

 と、エイシンが言う。

 レアは数瞬だけ悩み、答えを出した。

「わかりました。

 突入一時間前までに準備を完了してください」

「ったく、人遣いが荒いぞー」

「全員、十分な休息を取ってください。四時間後に攻略再開です」

 レアはそう言って、席を立った。

 妙に急いでいる、その様子が気になった。

 俺もレアの後を追いかけようと席を立つ。

「骨を見てんのさ」

 直後、モイトの声に引き止められた。

「骨って?」

「宝箱の中にあった骨だよ。あと装備。

 たぶん、知り合いか誰かの骨と、その装備を探してるんだよ」

 「そういう表情をしてたよ」とモイトは言った。

 昨日、俺が悩んでいる間に、彼女は父親を探していたのか。

 いまさらながら、どうして傍にいてやらなかったのかと後悔の念が。

「ちょっと行ってくる」

「キープが行って、手伝いになるのかよ」

「う」

 邪魔にしかならない気がした。

 レアの父親の顔すら知らない俺が、骨を見て「誰」とわかるはずもない。

 それでも、

「辛い作業の最中に、一人でいるのは辛くないか?」

「一人で居たいもんだよ。誰にも気を遣わずにさ」

「いいや。行ってやった方がいいと思うぞー」

 エイシンの横槍に、モイトが「ああん?」と眉間にシワを寄せた。

「誰だテメエ。いまはキープと話してんだ。

 勝手に入ってくんじゃねえよ!」

「おー、モイト様は怖いねー」

「モズ・クロイトだ!

 顔も知らねえオッサンは、まずクロイト様と呼ぶとこからさ!」

「先はなげーな」

 さすがのエイシンも、モイトには手を出せないでいるようだ。

 俺は二人が喧嘩をしている間に、そーっとレアを追いかけた。


 しかし、

 装備の入った宝箱の前に正座し、一つ一つ手に取っては確かめていくレアの

姿は、静かすぎる。

 とてもではないが声をかけられる雰囲気ではなかった。

 ただ、そうと確認できるほど近づいて、気配を察知できないレアではないの

もまた事実。

「プランターさん?」

「休息は四時間だろ。まだ寝ないのか?」

「はい」

「見つかった、のか?」

 何を、とは言わずに聞いたら、レアが一枚の布を手に取った。

 ボロボロになるまで切り裂かれた騎士服の残骸だ。

「それが?」

 父親のものなのだろうか?

 質問の意図を察してくれたようで、レアが首を横に振る。

「クローレンの騎士服ですけど、父のものではないと思います。

 おそらく、父の部下だった誰かの物です」

「そうか」

 戦って散った人がいる、ということは。

 あまり考えたくないが。

「父の装備はありませんでした」

 レアは宝箱の中身を元通りにして、立ち上がる。

「大丈夫か?」

「ええ。大丈夫です」

 彼女は自力で立ち上がり、自分を支えていた。

 再会した直後は不安定だった彼女が随分と強くなったものだと思う。

 自然と、もう俺なんか必要ないな、と思うくらいには。


 俺が完全に気を抜いていた時に、ソレはやってきた。

「大変です!」

 トロボロイだ。

「なんだ?」

 テントから駆けてきた彼は青い顔をして、

「魔法使いの人が爆弾で穴を開けたら、人みたいな岩が!」

 新しいモンスターの登場と、味方の危機を叫んでいた。

 そして、彼の視線は俺達二人の後ろへ。

「っ!」

 レアは俺より先に気付いていたらしく、宝箱から距離を取っている。

 骨が動き出していた。

 スケルトン系の敵か。

「プランターさん。ここは私が」

「あ、ああ」

 思考を巡らせる。

 ここで骨が敵に変わる、ということは。

「引き上げた宝箱の中身が、ゴーレムに変わっている可能性があります」

 石碑、石像、化石の集合体か。

 重要文化財ゴーレム。

 破壊できないとなれば、止めるしかないだろうし。

「プランターさん」

「な、なんだ?」

「落ち着いてください」

「ああ」

 さっきから指示はされているのに、足が動かない。

 何をやっているのか。

「俺は、エイシンとエニルの様子を見てくる」

「はい」

「可能なら、地上のゴーレムと地下のゴーレム、両方とも止めよう」

「お任せしました」

 そう言っている間に、宝箱二つ分に押し込められていた二十数人分の骨が

立ち上がり、人の形を成そうとしていた。

 驚くべきことに、骨から半透明の肉が生まれ、皮膚が付き、

「なんだ、コイツら」

「前世の再現。肉体の蜃気楼でしょう。

 在りし日の姿を再現する、という」

 レアはそこまで言って、言葉を切った。

 おそらくは、周囲を囲みつつある元同僚の成れの果てを見て言葉に詰まった

のだろうと、そう思っていた。

「フンッ!」

 俺の体が「ふわッ」と浮き上がる。

 気付けばレアの体に押されて、ぐるん、ぐるんと視界が回り、

「おおう、おおう、おおうおおう!?」

 複数の骨が砕ける音が響き、「バコン!」という衝撃音が鳴る。

 状況が理解できない。

 おそらく一点突破を仕掛けたのだろうが。

「行ってください」

「え? え!?」

 俺とトロボロイだけが敵の囲みを抜けていた。

「い、行ってきます、です」

 トロボロイが俺の手を引いて、ようやく俺も足が動き出した。

 レアに援軍を呼んで。地下地上のゴーレムに対処。

 あとは怪我人が出ているだろうから、魔法使いの治療班を呼んで。


 俺は数多の悪いイメージを振り払うように走った。


 本陣であるテントの中は、騒然としていた。

 宴会の主役でもある重要文化財、と思しき石像や石碑が動き出しているのだ

から、当然だ。

「テジエリーッ!」

 ゴドリーの絶叫が響く。

 彼の様子から察するに、ゴドリー小隊のメンバーだろう。

 栗色の髪の毛。額から流れ、片腕を染める大きな紅。

 タワー型の盾に、騎士服。

 ぐったりと横たわり、ゴドリーに抱きかかえられている様子からは、意識が

ないものと察せられた。

 息は、あるものと思いたい。

 彼女を叩いたのだろう敵は重要文化財ゴーレム、だけではなかった。

 

 人型の敵が一匹、穴から這い出してくる。

 尻尾は蛇。頭はヤギと獅子。そして熊の頭まで同居する三頭のキマイラだ。


 勝てない。


 直感的に、そう思った。

 おそらく一匹目のゴーレムが現れた段階で、ギリギリだったはずだ。

 そこに、スケルトン系の敵が二十。

 宝箱からゴーレムが一体。

 キマイラ一頭の追加だ。

 無理だろう。絶望的だ。これは全滅を覚悟するしかない。

 そう思いながらも、俺は、レアの用意していた音札を手に取る。

「『大丈夫だ。みんな』」

 気持ちとは裏腹に、声だけは自信たっぷりと。

 テントの中にいれば全員に耳に入るような、大音量で喋った。

「『敵を見て、絶対に勝てないと思った人も多いだろうが。

  一人じゃ手に負えない相手だったとしても。

  全員が全力を出して当たれば、勝てない相手じゃない!』」

 王子の言葉を思い出す。

 人は群れると馬鹿になる、というヤツだ。

 しかし、逆も有り得るのではないだろうか?

 一人の、自分自身の力が絶対に通用しないと思うような相手でも。

 仲間がいれば、諦めずに済むのではないか?

 希望はある。

 そう思うからこそ、俺は全力で諦めているのに、団結を促している。

「『一から二五までの部隊は地上生まれのゴーレムを担当!

  二十六から八十までは地下ゴーレム!

  八十一から九十五まで! キマイラの足止めを頼む!

  残りの五部隊はシルヴァレアの救援に向かえ!

  予備人員はすべて怪我人の治療に当たるべし! 以上だ!』」

「「オオオオオオオオオオオオオォォォ----------ッ!!!!」」 

 自暴自棄な、捨て鉢な、どうしようもない事態に陥って精一杯の虚勢を示す

ように、全員が雄たけびをあげる。


 最大戦力であるレアを欠き、エイシンもエニルも見当たらない中で、絶望的

な戦いの幕が開いた。

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