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ダンジョン講座

ダンジョンを攻略する、と決意したキズオ。

シル先生からダンジョンについて、色々と教えてもらうことに、

 シルヴァレア・レイフォート先生によるダンジョン講座が始まった。


 場所は変わらず、飲食店の二階。

 シル先生の授業は、かなりのスパルタである。

 個室に二人きりだが、色気はまったくなかった。

「ダンジョンにはいくつかの種類があります。

 今回のクローレン・アケーナン間に見つかったものは、

 『人の手に負えない者達』が作ったものです」

「質問。

 『人の手に負えない者達』って、具体的には?」

「現在ではモンスターと呼ばれていますが、

 彼らは大絶滅を生き延びた特異な生物達の子孫です」

「また質問。

 大絶滅って、なに?」

「様々な要因で、生物種が激減する現象を指します。

 人類史上では一度。

 地球史上では五度ほど起こったそうです」

「ふうん」

「そして、五度目の大絶滅は『人間の手によるものだった』と言われています。

 人にとって都合の良い生き物を残し、

 それ以外の生き物を絶滅させてしまった、と。

 しかし、五度目の大絶滅を生き延びたのは、人間に都合の良い生き物だけでは、

ありませんでした。

 『人の手に負えない者達』が生き残ってしまったんです」

 人にとっての楽園を目指していたが、

 結果的には、そうならなかったわけだ。

「以降の歴史は、人と『人の手に負えない者達』との争いが主になります。

 名前の通り、人の手には負えないので、数を頼りに戦うしかなかったんです

けど、それでも何とか、人類は地上を取り戻しました。

 彼らは今、地下に追いやれていますが、そこでも力を付ける者はいて、大規模

なダンジョンを作り出すんです。

 それが、今回発見されたものです」

「理解した」

 俺達のやろうとしていることは、かなりの無茶だという現実が、だ。

 多くの仲間が必要になる。

 少なくとも、三桁。

 俺の安全を考えるなら四桁でも。

「まずは何から始めたらいいんだ?」

「とりあえず、便宜上の名前を付けましょう」

「ダンジョンの?」

「はい。

 クローレン、アケーナン間のダンジョンなので、クロアケダンジョンというの

はどうでしょうか?」

「いいんじゃないか」

 わかりやすいのが一番だ。

「では、ダンジョン名はクロアケ。略称は『クアダン』に決まりです」

 さすがシル先生。

 展開が早いな。

 スパルタ説明は、まだ終わらないようだ。

「多くのダンジョンに見られる特徴として『地上部』の存在があります。

 クアダンにも地上部がありました。

 ダンジョンを大きくする際に邪魔になった土や、石から出来たもので」

「アリ塚、みたいなもんか」

「はい。

 でも『人の手に負えない者達』は知能の高い場合も多くて、防壁や、建物を

作り要塞化している場合もあります」

 そうなってくると、単なる障害物ではないな。

 立派なダンジョンの一部だ。

「今回のダンジョンは地上部が小さいので、おそらく出来たばかりです」

「小さいって、どれくらい?」

「直径で、約五百メートルくらいです」

「けっこう大きいじゃないか」

「いえ、地上部はダンジョンの入り口を中心に広がる性質がありますから。

 実際はこの半分くらいです」

 それでも二百五十メートルだ。

 少なくとも、無視はできない。

「ダンジョンは逆ピラミッドの形になることが多いので、地下一層の規模は、

 地上部の半分くらいになります。

 第二層で、四分の一。

 三層で八分の一、直径で約六十メートル程度になると考えれば、

 ここが一番の難所です」

 俺達の目的地。

 人の手に負えない者は、三層に居そうだ。

 敵の親玉が居る場所は、なんとなくわかっているが、しかし、問題はそこまで

たどり着くことができるかどうか、だ。

「長いな」

「はい。

 それに、階段がダンジョンの中央を貫いて設置されている可能性は、かなり

低いです。

 その上、ダンジョンの内部が迷路になっていることもありますから」

「長いなー」

「ダンジョン内部の移動距離が長くなると、また別の危険が」

「罠か」

 しかも、王子の演説では『致死性の』という言葉が使われていた。

「危険なのか?」

「もちろん危険です。

 ただ、罠はダンジョンごとに違います。

 今回のダンジョンにどんな罠があるのかは、行ってみないとわからないので。

 簡単なものなら手動で物を落とすだけ、というものもありますけど、自動的に

稼動する罠や、常時発動型の罠もあります。

 最悪の場合、解決法の見つからない罠につかまってしまう可能性も」

「怖いこと言うなよ」

 俺を脅かすつもりで言っているわけではないのだろうが、

 背筋が寒くなる話だった。

「罠への対処は、私も考えておきます」

「ああ。こっちも考えておく」

 どうやらこの辺りに、俺の出番がありそうだ。

 罠を事前に見つけて、無効化する方法を考えること。

 難しい課題だが、やってみるしかあるまい。

「あとはモンスターをどうするか、だな」

「基本的には、すべて排除します」

 いままでになく物騒だった。

「ダンジョンの攻略は、

 『サーチ』『アタック』『ディフェンス』の順番に行います。

 敵側のエリアを『サーチ』して分析。

 作戦を立ててから『アタック』します。

 そして奪取したエリアを『ディフェンス』するのが定石です。

 すべてのエリアを制圧できれば、こちらの勝ち。

 できなければ、こちらの負けです」

「敵の親玉を倒すだけじゃ駄目なのか?」

「統率者を倒すことができれば、ダンジョンの巨大化は防げますけど」

「最大の目標は、ダンジョンの封鎖でいいと思う。

 でも、最低限の目標は、親玉を倒すこと、じゃないか?」

「それは、そうです」

 彼女は不満そうだった。

 大部隊による制圧戦闘の例が出てきたことを考えるに、根っからの指揮官体質

なのだろう。

 しかし、今回は多くとも小隊単位の攻略戦になるだろうし。

 持久戦になったら勝てない気がする。

「まずは頭を潰してから、ゆっくり制圧していけばいいだろ?」

「いいです。わかりました」

 少し機嫌を損ねてしまったが

 ここまでは順調に話が進んでいる。

 しかし、ここで最後にして最大の問題に行き当たった。

 人材不足だ。

「人はどうする?」

「それは、集めるしかないです」

「募集、か」

「はい」

 正直に言わせてもらえば、無理だ。

 集まるはずがない。

 シルヴァレアの評判は、この間の『大声事件』以降、急速に下がっている。

 部下を失い、部隊を全滅させたかもしれない人間の下に付きたいと思う人間

は、残念ながら少ないだろう。

 それに何より、王政府が攻略者、冒険者を募集している。

 少しでも頭の働くヤツなら、個人的な人員募集より、王政府の募集を選ぶ。

 となると、

「王政府の募集には興味がないヤツで」

「実力があり、長期のダンジョン攻略に取り掛かれる方です」

 二人とも、口にはしないが思っていた。

 『そんなヤツは、どこを探してもいない!』

 さて、どうしたものだろうか。


 妙案が思い浮かぶことはなく、とりあえず飲食店からは出ることになった。

 帰り際、何も食べていないにも関わらず、シルヴァレアはけっこうな大金を

店側に支払っていく。

「どゆこと?」

「はい?」

 彼女は一瞬、キョトンとした表情を見せたが、すぐに気づいたようで、

 「ここでは説明できないので」と外に出るよう促された。


 店から十分に離れてから、彼女は声を潜めて言った。

「あの店は『この店で一番高いものを』と言うと、密会用の部屋を貸してくれる

所なんです」

 納得した。

 店員がオーダーを取りに来なかったのは、そういうことか。

 俺も支払いを、と言いたいところだが、懐具合は割り勘すら厳しい。

 次の密会では、俺が支払えるように金を工面しておこう。


 勢い店を出てしまったが、

「とりあえず、人を集められそうな場所に行くか」

「わかりました」

 シル先生の講義を聞いている間に、日も傾いてきた。

 まだ早い時間ではあるが、

「酒場だな」

 さっきの条件に当てはまる人間がいるとしたら、おそらくそこしかない

だろう。


 二人は最初からそのつもりであったかのように、裏通りの酒場へと向かった。

 

 


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