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オリベノン到着

ここに来て噴出した盗賊団の問題。

次の襲撃は、

 モイトを振り切って連結馬車に戻る。

 と、そこにはワタボシとシオネラ。そして、クスグリさんが待っていた。


 車窓の風景が流れていく。

 シルリスクにおける物資補給を完了した攻略団は次の目的地へ。

 しかし、俺の乗り込んだ馬車はいつものレア隊メンバーが座るソレではなく

盗賊団の三人が占拠する一車両だった。

 一応、連結馬車の人員配置にも意味があるのに、完全無視だ。

 いまはその文句を言うために、ここまで来たわけではないが。

「で、あのモイトって人は何なんだ?」

「盗賊団の頭領です」

 クリグリが応える。

「見た目と性格はああですが、玩具の武器も、戦闘センスも桁外れにいいもの

を持っています」

「やっぱり、アレは玩具じゃないのか」

 子供が持っている水鉄砲とか。

 模擬弾をバネで発射する銃に似ていたが。

「『発芽弾』という特殊な魔力の宿った弾丸を打ち出すことで、銃そのものに

力がなくとも、殺傷力が高い武器を作り出したのです」

 発想の柔軟な発明家、と言えるのだろう。

 要は、弾丸を遠くまで飛ばす射出力さえ確保できれば、見た目の幼稚さも、

あまり気にしないタイプらしい。

「対応策を考えないと、って、あの人に対応していいのか?」

「? もちろんです。何か問題でもありまして?」

「でも、盗賊団の仲間なんだろ?」

 俺の言葉に、三人は黙り込んでしまった。

 空気の読めない一言、だっただろうか?

 最近、この手の突っ込みすぎを、よく体験している気がした。

「キズオ様の盗賊団対策は、鬼畜に過ぎます」

「ええ!?」

「あのような子供の奴隷を集めて、一ヶ月以上にも渡って面倒を見ていれば、

さすがに情が移りますものね」

「ああ」

「もちろん狙ってやっていたのでしょうが」

「いや。レアに言わせれば、無意識的に最善と思うこと、だけど」

「無意識下で最善と思う手が、

 『無理やりに家族を作り、裏切り者がでないよう抑制する』

 というものであるのなら、立派な鬼畜です」

「ごめん」

「盗賊団の子らは、みな心が揺れています。

 当初の計画通りに攻略団を襲撃し、物資を奪って逃亡するか。

 このままダンジョン攻略に同行するか。

 子供に情が移った者、小隊の内部に良い人を見つけた者は、みな後者ですが

徹頭徹尾モイト姉さんに従う者達も少なくありません」

「オリベノンへ辿り着くまでの間に、決着を付けるしかないだろうな。

 クスグリさんは協力してくれる、と思っても?」

「ええ。おかげさまで」

 ゴドリーと結ばれた、ということだろうか。

 剣の広場では仲良さそうだったし。

「ワタボシとシオネラは?」

「中立です」

「そうか」

 子供達の面倒を見ているし。モイト姉さんにも肩入れしている、と。

 二人はジッと俺を見ていた。

 生かすべきか、殺すべきか、悩んでいるようにも見えた。

 本当に怖いから止めて欲しい。

 盗賊団、というだけあって、俺とは価値基準が違いすぎる。

 戦闘にしても、中央の騎士や腕自慢の剣士達は出会い頭に爆殺しようなんて

思わないだろう。

 相手を殺さないように、という一線を軽々乗り越えてくる怖さがあった。

 このままではマズイ。話題を変えよう。

「モイトさんのことは、まあ、どうにかするとして。

 とりあえずはダンジョン攻略の詰めだ」

 モンスターの討伐には時間が掛かる。

 そして「人の手に負えない者たち」は頭がいい。

 常に二人一組で行動させるとか、何かあったらモンスターを集めるとか。

 そういうトラップがあるとまずいのだ。

 まずはモンスターを長時間、隔離する手段を考えなければならない。

 音、光、匂いはなるべく控えめに。

 さりとて拘束力は高くなければ意味がない。

「んー」

 悩んで顔をあげる、と三人の視線が頬に突き刺さった。

「な、何か?」

「いえ」

「別に」

「何でもない」

 声を掛けてこない時点で予想はしていた。

 俺は「そうか」と応えて、思考労働に戻る。


 その後、半日ほど考えを巡らせていたが、妙案が出ることはなかった。

 

 昼休憩を挟んで、午後。

 レア隊の面々が待つ馬車に戻った。

 しかし、

「(ダメだな)」

 いくら思考能力を振り絞っても、妙案が出てこない。

 それもそのはず、俺の目はレアの肉体に釘付け。手はいつの間にやらエニル

の方に伸びていて、足はフルスの方へ向けられている。

 我慢すると決めて半日、ここまでの禁断症状が出るとは思わなかった。

 レアとしたい。

 それしか考えられない。

 行軍の最中にも関わらず『どうやって馬車を止めよう』とか。

 『馬車が止まったらレアを森に連れ込んで』とか。

 妄想が止まらない。

 これは、もしかしたら、

「盛られたな」

「盛られた? まさか毒ですか!?」

 レアが慌てる。

 そのまま「そうなんだ。媚薬毒を盛られてしまって」と言えば、いまから

始まってしまうのではないか。という期待感があって。

「俺の馬鹿ヤロー」

 手の甲をつねって、自分にお仕置きした。

「え? あの、プランターさん?」

「大丈夫だ」

「でも」

「大丈夫だから。な?」

「はい」

 レアは半信半疑だが、俺がここまで挙動不審なことも珍しいのだろう。

 様子を見るように黙っていた。

 自分自身の体調を冷静に分析する。

 肉体が手に余っていた前回とは違い、今回のことで乱されているのは精神の

方だ。

 しなければ収まらない、なんてことはない。

 かと言って、簡単に対処できるものではなかった。

 なにせ「したい」と思っているのは俺。

 それを止めるのも俺なのだから。

 肥大化する欲求を長く抑えることが無理であるのなら、いっそのこと。

「エイシン」

「なんだー?」

「媚薬を盛られた。中和剤か、解毒薬をくれ」

「ほー。誰にやられたんだが知らねーが。ちょっと待っとけ」

「ふう」

 だらだらと流されていたら、結局は歯止めが利かなくなることは目に見えて

いたし。

 したい、と思っている自分を止めるためには一時的に本能を抑え付け、理性

の力を集約し、一気に状態を回復するしかない。

「そらよ。これ飲め。キズオ」

「どうも」

 俺はエイシンから渡された錠剤をぐいっと一気に飲み干して。

「ん」

 そういえば、薬の種類を聞いてなかった。

「これは?」

「睡眠薬だ」

「馬鹿!」

「ああん!? なんで馬鹿なんだよ!」

「俺には考えなくちゃならないことが、たくさん、あるって言うのに」

 まったく、どうしてこう、真剣になろうとする度に邪魔が入るのか。

 レアは俺が横になれるようシートを整えてくれていた。


 しばらくして、睡魔は容赦なく俺の意識を奪った。



 三日後、オリベノンに到着していた。

 こちらの移動手段は高速馬車、とは言っても大所帯。

 小回りと無茶がきく個人の足には勝てるはずもなく、

 町の出入り口において、モイトによる見事な待ち伏せを食らっていた。

「よお。お望み通り、万全の準備をして待ってたからな!

 ここがアンタの墓場だぜ! キズオ・プランターさんよ!」

「ふしゅー!」

 俺の口から煙が漏れる。

「え?」

 相手は何十人という女盗賊を集めていたようで、馬車を含め、俺を取り

囲んだが。

 俺の右手には、彼女達が男を堕落させる時に使うという媚薬毒がある。

 ビンに入ったそれを握り締めていた。

「なあ。モイトさんよ」

「ちょ。なにおまえ。キャラ違うっていうか!」

「黙って聞けし!」

「は、はいー!」

 怒りに任せて、媚薬毒のビンを地面に叩きつけた。

 「ガシャン!」と割れて、広がるピンク色の煙。

 モイトの背筋が伸びた。

「ちょ! 馬鹿こんなところでバラまいたらソレ!」

「大変なことになるだろうな」

 のそり、のそりと音がした。

 オリベノンの出入り口、つまりは外に近い場所まで追いやられた浮浪者が

ここにはたくさんいるのだ。

「オオオー」「おおおお、おんなぁ! 女だあ!」

「ひい!?」

 モイトが涙目になって俺を見る。

「俺は思うんだ」

「な、なにをだよお!」

「風邪を引いたら負け、って勝負をしている時に、風邪の菌を相手に飲ませる

なんて反則じゃないか?」

「そ、そりゃそうだ! そんなのイカサマじゃん!」

「だよな。じゃあ、発情しちゃダメ。エッチなことしちゃダメって勝負してる

時に、媚薬を使うとかどう思うよ?」

「ひどいヤツだな! そんなことやったのはどこのどいつだ!」

「おまえのとこの盗賊団の部下だよ!

 盗賊の倫理観はいったいどうなってるんだかな!」

「わかったから! オマエの怒りはもっともだし、オレラが悪かった!

 だ、だからコイツらをどうにかしてくれよ!」

 まるでゾンビ映画のように、ゾロゾロと沸き出してくる浮浪者達。

「反省したか?」

「した! すげえ反省したから!」

「よし。それじゃあ、仕方ない。エイシン!」

 馬車の上に立っていたエイシンに合図を送る。

 と、魔法陣を用意していたエニルも立ち上がる。

「魔法召喚術。その二」

「睡煙底流陣!」

 車上の魔法陣が光を放つ。

 と、ほんのりと青い煙が魔法陣の下から、まるで滝のように流れ出し、周囲

に広がっていく。

 その流れは浮浪者の群れへと流れ込み、

「お、おんなぁ」

 中には根性で口を塞ぎながら眠らないよう頑張る男もいたが。

 ゾンビと化した男達は次々と倒れていった。

 流れは止まらずモイトにまで届き、

「くそぉ」

 浮浪者に囲まれている状態では逃げ場もなく、女達も次々と眠りに落ちた。

 あとは魔法使い二人と、

「キズオも趣味が悪いぜ」

「まったくですね」

 もっさりとした髭で隠したガスマスクを付け、浮浪者になりすました攻略団

の面々が何とかしてくれることだろう。


 俺は安心して、睡魔に身をゆだねた。

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