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次に備える

それぞれの目的が揺れ動く中。

キズオは、

 プランター家の人口はかなり増えていた。

 よって、集合住宅の部屋をもう一つ借りることになったのだが、

 住人に問題がある。

 俺。レア。エイシン。エニル。リジー。オーザ。そしてフルス。

 

 フルスは攻略団の一員になることを拒んだ。

 彼女の実力からいって、いずれ戦闘に借り出されることは明らかだし。

 死にたくないと公言している彼女が嫌がるのも無理はない。

 しかし、俺達と同居はしたいと言う。

 困ったものだ。

 俺としては、レア隊だけに戦力が集まることは避けたい。

 魔法使いが三人もいて、三人とも独占では他の隊に妬まれるだろう。

 前回、フルスが作ったという『機械杖』が量産できれば。

 あるいは魔法使いを量産できるかもしれない。

 

 企みは半ば。思考にノイズが混じった。

 コンコン。

 と、部屋の窓が叩かれている。

 外には洗濯物を干すリジーの姿が。

「キズオ。手伝えし」

「はいはい」

 呼ばれて、窓から外に出るわけにも行かず、玄関へ。


 ダンジョン攻略の準備は続いている。

 しかし、サンドマンを討伐したことで、俺の中の緊張の糸が切れてしまった

ようだ。

 すっかり日常モードに入っている。

 

 特に頭を使うことはない。

 部屋の中を掃除して、玄関の外をホウキで掃く。

 料理を作ってリジーとオーザに食べてもらう。

 洗濯物を集めて、洗い、外に干す。

 このところ思考することが多いため、何も考えずに体を動かすのは気持ちが

良かった。

 まあ、出来が悪くてリジーに指摘されたり。

 失敗して怒られる前にオーザがフォローしてくれたりしているが。


 リジーとオーザは、空いた時間を利用して、クローレンの常識を学ぶ。

 二人とも、ダンジョン攻略が無事に終わって余裕が出来たら、ではあるが、

剣の広場に通わなければならない。

 俺は嫌だったし。オーザも嫌がるとは思うが、義務なのだ。

 そして、剣騎士になれないとなったら、その時は別の道を探さないと。


 二人のことだけではなく、自分のこともする。

 トレーニングだ。

 ダンゴルザの東端から剣の広場までランニング。

 腕立て、腹筋、背筋は、回数不定。

 時間は、60分と区切りを付けて、その間はなるべくサボらないように体を

動かし続けた。

 昔は運動しながら、どうサボり、どう休息を入れるか、ということばかりに

神経を使っていたが、いまは逆だ。

 どれだけの密度を運動に費やせるか。

 一時間の中で、いかにサボる時間を減らすか。

 それだけを考えて、自分の肉体を戦闘向きに改造していく。

 

 やがて、軽い運動であれば60分フルに動いても平気になった。

 

 モンスターとの戦いは、とにかく時間がかかる。

 身体能力を限界まで発揮して、短時間で勝負を決める、なんて展開にはなら

ないのだ。

 基本が持久戦。

 それを戦い抜くためには、筋力を消費せず、筋肉の回復力を越えることなく

立ち回るべし。

 逆に言えば、筋力を消費せざるを得ない敵と遭遇してしまったら、負け確定

ということだ。

 補給されあれば、延々と動ける状態を維持すること。

 これが大前提である。


 とんだ大前提があったものだ。


 広場に集う常連さんとの組み手も増えてきた。

 基礎体力が上がったから、だろうか。

 俺の場合は、悪いところを減らすところからスタートだ。

 ヘラヘラと笑いながら勝ちを譲ってくれていた相手が、次第に引き締まった

顔になり、黒星を押し付けてくるようになった。

 だが、それは相手が本気になった証だ。

 しばらくは負けが続き、負け続けて、それでも努力し、

 数日を費やして、本当の意味での初白星を掴んだ。

  

 レアが組み手の相手をしてくれるようになったのは、その後からだ。

 

 彼女とまともに会話するのは、泣きながら走り去って以来だと言うのに。

 何事もなく、稽古は終わった。

「おつかれ」

「ありがとうございました」

 稽古が終わるまでの間、アドバイス以外の会話は一切なし。

 タオルで汗を拭き、それぞれに予備の服へ着替えて、帰宅するのみだ。


 道中、ダンジョン攻略について話をした。

 サンドマン討伐に関わる収支報告。

 王子と話し合った結果、ダンジョン攻略を任せては貰えなかったこと。

 王国軍は軍備を増強し、いずれダンジョンを攻略するつもりでいること。

 こちらは百連の連結馬車を使い、サンドマンの通り道を辿って、ダンジョン

まで行くこと。

 機械杖の量産がフルス主導で始まり、魔法使いが徐々に増えていること。

 良いことも、悪いことも包み隠さず報告し合った。

 俺が気にしていることも、聞いてみた。

「警備隊には、しないんだよな?」

「はい」

 レアの瞳から迷いが消えていた。

「私の強さを生かすために。

 そして、父の生死を確かめるために、ダンジョンを攻略します」

 もう死んでいるでしょう、とか。

 別に関係ない、とか。

 そういう答えではなかったことに安堵する。

「プランターさん?」

「んー?」

「私の個人的な目的に、付き合って貰えますか?」

「もちろん。

 俺のためにも。組織のためにも、クローレンのためにも。

 ダンジョンは攻略しないとな」

 これだけの理由が揃っていて、選択の余地はない。


 ダンジョン攻略を始めよう。


 俺は机に地図を広げ、自室で思考労働中。

 敵が刺客としてサンドマンを選んだ以上は、小型のはずれサンドマンも使役

できるはず。

 まずはサンドマン対策だ。

 削り倒して弱体化。隔離して封殺。

 あるいは凝固剤を使って、代謝を凍結し、魔力の枯渇を狙う。

 物資との兼ね合いにはなるが、基本パターンは前者だろう。

 野営地を経由してダンジョンまで辿り着く予定だったが、サンドマンが道を

作ってくれたおかげで一直線に目的地へ行ける。

 進行ルートは、クローレンからペンデルスへ。

 その先は大きな森、通称『グリーンストック』がある。

 砂漠化した道を抜けたら草原へ。

 モンスターとの戦闘が想定されるのは、ここだ。

 サンドマンの残した砂に、はぐれサンドマンが群がっている可能性が高い。

 その後は比較的おおきな町、シルリスク、オリベノン、アガリストに寄って

物資を補給する。

 大丈夫か?

 自問自答する。

 こうして改めて計画を練ると、知らない土地ばかりで不安になったのだ。

 グリーンストックは遠くに見えたことがある程度。

 以降は、まったく知らない街だ。 

 一応、地理と歴史を調べてみる。

 資料や本、レアノートを参照。


 シルリスク。

 枯れ森の樹上都市。

 モンスターの餌となるモノを排除して作った不毛の町。

 クローレンの軍事的な拠点にもなる。


 オリベノン。

 骨碑と一刀彫の町。

 『マジックアイテム』の製作者が多く滞在する魔法道具の町。

 道具の実験によって殺されたモンスターの骨が放置されていた時期も

あるらしい。

 そのためモンスターの骨を碑とする『骨碑』が作られている。


 アガリスト。

 ダンジョン前の最終拠点。

 元々は豊富な湯が沸く川の町だが、

 満足な補給ができるかどうかは、行ってみなければわからない。


 クローレン王国の現在地は、大昔、海の底だったらしい。

 しかし、人の手に負えない者が現れて以降すべての地上が戦場となった。

現在では考えられないほど高性能な武器、高威力の兵器が投入された大戦で、

地表は大きなダメージを受けたのだ。

 『全地崩壊』

 大地は抉り取られて大海に没し、逆に大海の水は失われて大地となった。

 自然環境の激変によって、人類は壊滅的なダメージを受けながらも、新たな

大地を開拓し、モンスターに対抗する術を模索した。

 モンスターが地下に逃れて以降も、それは続いている。


 俺は資料を閉じた。

「水中戦の用意がいるかもな」

 水が失われて久しい、と言っても元は海。

 ダンジョンを作って以降に水が沸く可能性も否定はできない。

 一応、水着くらいは用意しておこう。

 

 そして、いまさらではあるが、ダンジョン攻略が生活のためである以上は、

無視できない大問題がある。

 ズバリ。

 『ダンジョン攻略は儲かるのか?』

 である。

 資料一。

 勇者の本。ダンジョン攻略後、宝物を手に入れて幸せに暮らした、という話

は枚挙に暇がない。

 資料二。

 モンスターは討伐後、その肉体を加工して機械杖にできる。

 もし万が一、お宝がなくてもモンスターの肉体を売ればいい話だ。

 証言一。

 エイシン曰く「モンスターは地下資源を宝箱の中に入れとくもんだ」とか。

 宝石、鉱石の類があるのだとしたら、それは立派なお宝になる。

 証言二。

 エニル曰く「国軍がダンジョンを攻略した際には、歴史的に大変貴重な資料

がたくさん見つかったそうですよ」とのこと。

 それを国に売り付ければ、それなりの金が手に入る。

 以上のことから、ダンジョン攻略は圧倒的に『金になる!』ということが、

わかった。

 ヤバイ。ダンジョン攻略にハマりそうで怖いな。


 もう他に考えることはない。

 俺の頭では考えの届かない未知という憂いは残っているが、

 あとはダンジョン攻略が成功するよう祈るのみだ。

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