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影の女神

初仕事の仕上げにかかるキズオ。

しかし、

 空き家の外に出ると、お婆さんが聞き耳を立てていた。

「あの、いったい何を?」

「まーったく、この根性なしが」

 「けッ!」とツバを吐くように言い捨てて、作業場へ戻っていった。

 何とも腹の立つことだ。

 

 作業場に戻ったお婆さんが駆け足で戻ってきた。

「薪が切れるよ! どうするか考えてあるんだろうね!」

「そうか。切れるのか」

 高火力の二人が到着するまで、まだ一日ある。

 サンドマン改め、ウッドチップマンの大きさが50メートル近い事を考慮

すると、普通に火を付けてしまったら三日三晩は燃え続けるはず。

 意思を持って暴れる火達磨にでもなられたら、厄介では済まない。

「置換率は?」

「ほぼ十割だとは思うがね」

「なら、放っておいても平気だろ」

「はいぃ!?」

 お婆さんが目を丸くしていた。

「アンタ魔力の回復力も知らんのんかい!」

「そういえば知らないな。

 砂の魔力って、空っぽになってからどれくらいで全快するんだ?」

「一日だよ!」

「へ?」

「だから、一日だって言ってんだろう!?

 人で言えば細胞の一つ一つが回復能力を持っているようなもんさ。

 どれだけの規模だろうと、細胞単位で回復してんだから。回復速度は常に、

一定さ。

 完全回復までの時間は人もモンスターも同じってわけさね」

「なるほどな」

 想定外だ。

 ウッドチップマンは餌となる砂に魔力がないからこそ、木片を食らった。

 しかし、砂が好物である以上、ここから先は魔力が自然回復した砂を集中的

に食べるはず。

 そうなると、せっかくの焼却処分案が使えなくなる。

 しかし、砂と木片が同量なら、やっぱり問題はないのだ。

「砂を食い尽くしたら、また木片を食うしかなくなるわけだし。

 やっぱり放置でいいんじゃないか?」

 今日から一日をかけて砂を食ったとしても、

 明日一日をかけて木片を食い直す。

 エイシンとエニルの魔法使いコンビが到着する頃には、ちょうど木片十割の

ウッドチップマンに戻っている計算だ。

 完璧に偶然の産物だが、計画に変更の必要はない。

「明日は嵐が来ないことを祈るばかりだよ、まったく」

「だなー」

 そればかりは、俺にも読めない。

 偶然の女神はどちらに微笑むのか。

「!」

 俺がそう思うと同時に、モンスターの影が人の顔に変わった。

 柳のような黒い髪。シャープな顎の輪郭。

 自然界のものが『人の顔に似て見えること』は良くあることだが、

 しかし、それは明らかに『黄金率を備えた美人の顔』だった。

 影が人の顔に見える偶然があったとして、それが『美人の顔』になることは

どれくらいの偶然が必要になるだろう。

 奇跡的な光景だ。

 俺を戦慄させた美人の顔はゆらりと消えて、モンスターの影に戻った。

「いまの、って」

 お婆さんにも見えたらしく、苦々しい顔をしていた。

「モンスター達が崇める『影の女神』さ。

 偶然と奇跡が起きる場所には、必ずと言っていいほど顔を出すらしいよ」

「じゃあ」

 偶然と奇跡はモンスターの味方、ということか。

 嫌な予感がした。

 

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