異世界への招待状
1話 異世界への招待状
校舎内の音が静かになり、部活などで校庭が賑やかになる放課後、僕は決まって屋上に寝っ転がっている。僕にとって屋上は、学校で唯一の安らげる場所だ。
「やっぱりここか秋人」
僕が放課後にここにいることを知っているやつは1人しかいない。
「どうしたんだよ翔太」
そう、唯一仲の良くて僕の居場所を知っているやつといえば、運動神経抜群の翔太ぐらいだ。
「みんなで飯食いに行くんだけど、お前もどうかなと思ってな。行くか?」
「いや、僕は遠慮しとくよ。もうちょっとゆっくりしたいし」
「ああ、わかった。早く帰れよ」
僕は極度の人見知りで、入学式から3ヶ月が過ぎているのに、友達と言えるやつは翔太ぐらいしかいない。みんなで遊ぶ時に翔太は誘ってくれるけど、僕は人見知りのせいでなかなかいけない。
「そろそろ帰ろっかな」
僕は誰もいない屋上で、呟いた。体を起こして荷物を取ろうとした瞬間、空が光った。それはすごいスピードで僕の元へと落ちてくる。
「ドガァン」
すごい勢いで落ちてきたのは、銀色のラグビーボールみたいなものだ。銀色のラグビーボールみたいなものは僕のたった1メートル先に落ちた。落ちた場所のコンクリートは粉々になり、ボールはコンクリートの中にめり込んでいた。
「なっ……」
誰もいない屋上に沈黙が走るなか、僕はボールを取った。するとボールは光り出し、真っ二つに割れた。中からは女の人の声が聞こえてきた。
「あなたは異世界への召喚者に選ばれました。召喚に応じて頂けるのなら、YESを押してください」
「いや、僕には何がなんなのかわからないんですけど、詳しく話してもらえませんか?」
「詳しい話しはYESかNOどちらか決めてもらってからお話しします」
女の人は何も話してくれず、ただYESかNOの選択を迫ってくる。
「なんで異世界に招待されているかだけは話してもらえませんか?」
「それはあなたの力が必要だから、招待されたのです。さあYESかNOどちらか決めてください」
「僕の力がですか?」
「はいそうです。今言えることはそれぐらいしかありませんがあなたの力が必要なんです」
「わかりました。行きます!」
「ではYESを押してください」
僕は必要とされていることに舞い上がって、勢いで異世界へ行くといってしまった。言われた通りにYESの部分を押した。すると『ビューン』という音がし始め、僕の体が光りだした。目の前が真っ白になり、僕は気絶してしまった。
「大丈夫ですか?……」
さっき聞いた女の人の声とは違う優しい声が僕の耳に聞こえてくる。
「ん……ここは……」
「あっ、やっと目を覚ましましたね」
僕の目に映ったのは、ドレスを着た赤い髪の気品のある僕と同い年ぐらいの女の子だった。
「ここは……どこ?」
「ここはライズ王国。そして私はアリス。あなたを異世界に呼んだ者です」
僕は近くにあったカーテンを開けて外を見た。外の光景はまるで昔の国のようで、新鮮な感じだ。
「あっ、僕は秋人です。でも、僕はどうしてこの世界に呼ばれたの?」
「そうでしたね。秋人様を呼んだのは今回から行われるこの大会に出てもらいたくて、異世界から呼ばせてもらいました」
そう言うとアリスは四角いスマホのようなものをだした。アリスが画面をタッチすると、立体映像が出てきた。そこには第1回バトルオブライズと書いてあり、その下にはその内容が書いてある。
「バトルオブライズというのは、この国のシンボルヘルザ塔という塔を、最先端の技術でモンスターの出るダンジョンにし、挑戦者が攻略を目指すという大会なんです」
「その大会はゲームなの?」
「はいそうです。この大会は塔の中と周りにフィールドを作り、塔の中に入るとモンスターなどが出るようになっているんです。もちろんゲームなのでモンスターにやられても、死ぬことはなくゲームオーバーとなって、ダンジョンから退場になるというような感じです」
「そしてこの大会の優勝者すなわち、攻略者に与えられるネパーライズという、宝石をあなたに取ってもらいたいんです」
「なんでネパーライズという宝石が欲しいのか理由を教えてくれない?」
アリスは僕の質問に一回深呼吸をして、答えてくれた。
「ネパーライズという宝石は元々ヘルザ一族という私の祖先が持っていた宝石なんです。ですが文明が発達していくなかついていけなかった祖先はこの宝石を売ってしまったんです。私は売ってしまった宝石を取り戻したいんです。もちろん秋人さんには関係ないことは分かっていますでももしよかったら大会に出てもらえませんか……?」
「分かった。僕は大会に出るよ。楽しそうだしダンジョンで冒険できるなんて、滅多にないと思うし」
「本当ですか⁉︎」
アリスは僕の手をぎゅっと握りしめ、涙目で見てくる。
「うん。大会に出るよ。優勝できるかはわかんないけど」
「ありがとうございます。あともう一つ大会に出る冒険者は大体の人たちがグループで参加します。なので秋人さんにも何人か紹介しましょうか?」
「いやいいよ。1人の方が気楽だから」
「分かりました。でもモンスターは強敵もいるので気おつけてくださいね」
「大丈夫だよ。ゲームの世界なんだし」
「確かにそうですね。では会場に行きましょう」
「えっ、これから大会始まるの?」
「そうですよ。もうすぐ参加登録が終わってしまうので急ぎましょう」
アリスは僕の手を取って、また四角いスマホのようなものを取り出してアリスがスマホみたいなものをいじると僕の体が光りだした。