プロローグ
現実でも、夢の中でもチャンスは一度きり。
そのたった一度きりのチャンスで、悔いのない道を選ぶことは容易なことではない。
チャンスを掴んだとて、必ずしも思いのまま物事が進むわけではない。
たった一度きりの現実でチャンスに恵まれなかった俺たちは、たった一度きりの夢の中でチャンスを得た。
俺はとてつもなく幸運で、そしてとてつもなく幸福だった。
君と出会えたことが。
けれど俺は絶望した。
そのかけがえのない君が、目覚めたときにはもういない。
君が確かに存在していた証を見つけたくて探した。
ようやく探し出したのは君の名前が記された小さな墓石。
広大な海を背に、君の死した証は立っていた。
君は確かに存在した。
君に連なる人とも出会った。
ああ、確かに君はいた。
けれど、太陽のように暖かかった君が、温もりのない小さな墓の下に永久に眠っているなど到底受け入れられようか。
その現実が途方もなく苦しくて。
けれど、唯一俺にできることは、生きて償うこと。
多くの子どもたちに出会った。
君のように友だちに恵まれなかった子、私のように辛い過去を背負った子。
そんな子どもたちに救いの手を差し伸べ続けた。
それが君が与えてくれたこの命に課された使命だと思った。
その思いを胸に、君の分まで生きて。
君の生きるはずだった時間を生きて。
生きて。
生きて。
ようやく、俺は生まれ変わることを赦される。