『初・メッセージ記念短編』2/3:リア様のお気にいり
短いですが。
引き続き、S様よりのリクです。
いつも傍目はアンニュイ。本人は無気力面倒事嫌い精神むき出しのリア。
大切なものも嫌いなものもつくらない。
そんなスタンスで生きている彼女であっても、流石に人として生きていたので嗜好くらいはある。
例えば、脂っこい食べ物が嫌いだったり。
甘すぎるものが嫌いだったり。
癖のある食材が食べれなかったり。
台所に現れる、“黒い悪魔”が嫌いだったり。
まあ他にも人として最低限の嗜好はある。
そんなリアの、彼女自身特に意識はしていないものの、他から見れば嗜好とみなされる物がある。
「なあ・・・あれって・・・」
「そっとしておいてください」
集中していますから。
休日、昼食をとった後になにやらごそごそと動き始めたリアに、他の四人の視線が集中していた。
「あれ、出したり抜いたり、何してんだ?
「・・・調整、だろうな」
「あれで出来の良し悪しが決まるそうですよ」
「あの周りに並べたのは・・・」
「リアは配合まで拘るのか?」
「俺も、手伝いを拒否されました」
この過保護人間が手伝いを断念する程の情熱。
・・・それは相当だろう。
シェヴァ以外の三人は、リアの情熱を改めて認識した。
各々、茶を啜ったり、読書の合間に言葉を挟んだりの談話である。
それにしても、昼食を食べ終わってから約三時間。
普段、講義の開始後十分を待たず机に突っ伏しているリアがこれほどの時間集中し続けている。
それに見たところ彼女の作業は、まだ半分の行程に達していないように見えた。
四人の視線の先、少女が座るのは食卓の周りに並べられた椅子の一つ。大きめのテーブルに乗っているのは料理の盛られた皿ではなく、大きな布の上に並べられた綿、籾殻、香草・・・等々。
少女はその中から量の調節に細心の注意を払いつつ、一掴み、二掴みと傍らに置かれた編み籠の中に入れていく。
そして、一つの椅子にかけられた大きめの布袋。
何を隠そう、枕用の布袋である。
リアはそれに積める中身の配合を、調節しているのだ。
普段は視線が集まることを嫌がるというのに、今は傍観する者たちへとはちらとも意識を寄越さずに、枕の材料たちを前に何やらぶつぶつと呟いている。
リア本人は当然と思い、他者から見れば嗜好とみなされるそれは――
『枕』
に対する、並々ならぬ拘りだった。
連投します