『B○○K○FFで買った桃太郎』
『むかしむかしあるところに、おじいさんとおばあさんが住んでいました。
ある日のこと。おじいさんが山へしばかりに、おばあさんが川へ洗たくに行くと、川上から
どんぶらこ、どんぶらこ
と、大きな桃が流れてきました』
……と、読者はここまで読んで、涙を流しました。SNSで、作者の経済状況が芳しくないことが仄めかされていたからです。あぁ、何という創作魂。食うや食わずの状況なのに、こんな傑作を描いているだなんて。
ちゃんとご飯、食べられているかしら。毎日ぐっすり眠れてるかしら。読んでる途中も、読者は気になって気になって仕方ありません。どうにかして売れて欲しい。もっと宣伝してくれたら、10冊は買うのに。読者はそう思いました。
『……おじいさんが桃を割ると、なんと中から男の子が顔を出しました。2人は男の子に桃太郎と名付け、大切に大切に育てました。やがて成長した桃太郎は、村を苦しめている鬼を退治するため、鬼ヶ島へ旅立つこととなりました』
……と、読者はここまで読んで、目頭を抑え、口から泡を吹き出しながら嗚咽を漏らしました。ネットニュースで、作者の健康状態が悪化していることが判明したからです。
もういい。
ボロボロになるまで描かなくて良い。お願いだから、ゆっくり休んでくれ。読者は咽び泣きながら、次のページをめくりました。
『道中、桃太郎は犬、猿、雉を仲間にして、鬼ヶ島に乗り込みました。村から奪った財宝で夜な夜な宴会していた鬼たちは、桃太郎に成敗されてしまいました。財宝を取り返した桃太郎たちは、村へ帰り、おじいさんおばあさんといつまでも幸せに暮らしましたとさ。めでたしめでたし』
何という感動!
何という衝撃!
読者はとうとう上着を脱ぎ捨て、走り出しました。身体中を電撃が走って、身震いが止まりません。
あの経済状況で。
あの健康状態で。
作者はここまで物語を描き上げたのです。読者は膝を突き天を仰ぎ、熱にうなされたように慟哭しました。
この感動を誰かに伝えたい。もっともっと、この物語を多くの人に読んでもらいたい。読者は早速レビューサイトに、感情の赴くままに感想を書き連ねました。
※
今世紀最高傑作 ⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎
紛うことなき傑作。
特に作者がSNSで”売れてないからもっと買ってください”と宣伝するシーンは、涙無しでは見られなかった。ぜひ読んで欲しい。何なら読まなくても良いから、1人10冊は買って欲しい。
作者の持病が悪化し、だんだん机に向かうのが遅くなっていくところなど、がんばれがんばれと、心の中で何度も神様に祈りました。続きが読みたい、だけど、自分のことをもっと大事にして欲しい……私は何というわがままな読者なんでしょうか。
最後のページをめくった時、それまでの作者の苦労が走馬灯のように頭の中を駆け巡り、もはや立つことすらままならず、その日は仕事を休んでしまいました……。
作者ががんばったので、星5です!
なお内容については、特に印象に残ったシーンはありませんでした。




