とりあえず、試用してみましょう。
どうも、皆さんこんにちは、この小説の主人公です。名前はありません。作者にもらってないからです。
さっきの話を読んでいたり、この小説のタイトルを読んでもらっていたら分かっていると思いますが、どうやら僕は一つの世界の創造を任されてしまったようです。
というわけで、僕は今、神様に謎の空間に飛ばされてしまいました。この空間を例えるとするならば、新世紀エヴァンゲリオンで出てきた「自由の世界」みたいな感じ。
一回、不自由を与えてみましょうか。
すると、僕の足元には地面、そして重力が生み出されました。
なるほど、こうやって僕が思い浮かべることで、そこにいろいろ想像できるのか……。
僕はとりあえず手元に自分が思い描くエクスカリバーを想像してみます。
そこに描かれる画は白背景に線の上に立って、豪勢な装飾のついたエクスカリバーを持って僕がいるという何ともシュールな画が完成しました。
とりあえず、なんか一人は嫌だな……。誰か創れるのかな。
でも、なんか自分で作った人を友達とかにするのはなんか気が引けるというかなんというか……。
「神様―!みてるー?ちょっと誰かつれてきてよー」
僕は何もない空間でそんな風に呼び掛けてみました。
「どうした?」
意外にも返事は簡単に返ってくるようです。
「なんかー、人を用意してくれませんか?」
「人か?創ればいいだろう」
「なんか、自分で創った人ってなんか萎えるんですよ」
「……そういうもんか?じゃあ手の空いている天使を送っておく」
すると、通信が遮断されました。そう感じることができました。
それから数分後……。僕は暇だったので、この間にできることを確かめていました。
「神様は確か、僕に自分の望む異世界を創れ、とか言っていたよな……そして、この無限の線とエクスカリバーを創造することができた……つまり、今の僕には何でもかんでも創造することができる力が備わっているんじゃないか?」
そんな感じで考えてみました。この考えは今までの出来事、神様の言動からも一致しそうです。
まぁ、それを確かめる為には、何でもかんでも創造するっきゃないということでしょうか。とりあえず、何か創ってみましょうか。
イメージしてみましょう。とりあえず、異世界ファンタジーで出てきそうな……広大な大地を!
すると、僕の周りがブワッと緑色に染色されました。
見渡してみると、僕のイメージしてみた景色そのものです。
草や花、そして宙にはドラゴンが飛んでいます。あんなの日本にいるわけがありません。
魔法を使ってみたい!そう考えた僕は魔法をイメージしてみました。
───あのドラゴンに雷を落とすイメージで……!
ドゴーン!バリバリ!!
見事、雷が落ち、ドラゴンは焼けこげました。
「す……すげー」
まさに圧巻です。
*****
とりあえず、浮遊して、この創った世界を見てみましょう。
そこには如何にもちゃんとしたファンタジー世界が広がっていました。
冒険者がたむろしており、モンスターがいて、王都があって、王様や姫様がいる、そんな世界がいとも簡単にできてしまったのです。
*****
ちょっとわかったことがあります。
勿論、イメージをしてそれを創造する力が僕にはあります。しかし、細かな生態系とか社会とかそのようなものをすべて考えてしまえば、僕の脳はオーバーヒートを起こしてしまいます。だから、そのような部分はこの能力の中枢的な何かが調整してくれるようです。
そして、僕が生み出した生物にはもう自我が勝手についてきます。なので、例えば、僕が男女を一人ずつ創ったとして、僕はその女に交配を望みます。しかし、彼女にはとっくに自我があり、「僕との交配を拒み、僕の生み出した男と交配する」という選択をしてきやがるのです。
しかし、創る前の人間性をいじることは意識すれば可能なようで、例えば、僕にゾッコンなロリを創りたいと意識すれば、合法ロリセックスも可能というわけです。こんな異空間に法はありません。いや、僕はロリコンじゃないけどね⁉
人間性調整を意識しなければ、それは創造能力の中枢が勝手になんとかやってくれるようです。結構、都合の良いものです。
ちなみに世界を創ってしまえば、その世界は僕が意識せずともどんどん変わっていきます。のちに多少の手を加えることは可能なようですが、生物の自我までも変化させることは難しいようです。
多分、読者の皆さんは今、僕が何を書いているのかよくわかっていませんよね?大丈夫です。僕もこんがらがってきました。
創った創造物はパソコンのデータ保存と同じ要領で保存ができるようです。Windowsと同じような感じなので、Windowsが扱えれば、大丈夫です。消すことも可能ですが……まず容量が無限にあるので、創造物を消すメリットはあまりありません。
色々試していると、意外とややこしくて、疲れてしまいました。ちなみに先ほど登場した、通称「自由の世界」はどうやら、創造の上の白紙のキャンバスだったようです。そして、今僕がいるのは、パソコンで言うところのデスクトップ画面にあたる空間。「自由な世界」のような真っ白な感じではなく、日本の家の和室みたいな感じです。神様が用意してくれたのでしょうか。一応、部屋を自分なりにカスタマイズすることも可能なようですが、なんとなく気に入っているのでデフォルトのままにしています。あの神様、意外とデザインセンスあります。
そんな和室でリラックスしながら、これからどんな世界で暮らしていこうか、計画を練っていると……
「失礼します」
和室に、一人の女の子が入ってきました。
結構小柄で、乳は微妙にある感じです。カップ数は測れません。
そして、頭上には黄色い輪っかを浮かべた、金髪碧眼美少女です。
「どなた?」
「はい!仏様委託神からの連絡を受けて参りました!下っ端天使のツイと言います!」
「ああ、頼んでいた奴!」
「はい!仏様委託神から、情報連絡神、そして天使担当神の経由で私が貴方様の担当に依頼されたので、結構遅くなってしまいました!」
「神様、分業しすぎでしょ……界王神とか、破壊神とか、そんな感じの区別だけでよくない?」
「とりあえず、なんだか、一人で寂しいという報を受けましたので、ゲーム持ってきました!」
そう言って、彼女が取りだしたのは、「バーチャルボーイ」でした……。
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~知らない人のための「バーチャルボーイ」解説~
任天堂が1995年に発売したゲームハード、3Ⅾの今までに全くない体験ができるということで銘打って発売されたが、国内での販売台数は約14万台、全世界でも77万台しか売れなかった。「おもちゃとしては売れたほう」「任天堂の黒歴史」「はやすぎたVR」など、散々な言われようとなった。
このゲームの画面は赤と黒の二色で非常に目に毒である。
そして、このゲームはゴーグル型の本体に覗き込んでプレーするスタイルとなっており、首を痛める。そして、通信ケーブルポートはあるものの、その通信ケーブルが発売されなかった、加え、先ほどのプレイスタイルから、プレイヤー以外がゲーム画面を見ることはできないので、《《二人以上で楽しむことはできない》》。