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Q.A.彼女の治療法

作者: 雨傘無晴

俺は、そこで背伸びをする。

今日は、バイトも早く終わった。ああ、なんてラッキーなんだろうな。

俺はウキウキで家に帰り、大好きな彼女に呼びかける。「ただいま」と。

すると、小走りで走ってきた彼女が、「おかえりッ・・・おかえりなさい・・・」と言って抱きしめてきてくれた。・・・まだ、こんな調子なのか、だが、それを治すのも、彼氏の役目のような気がする。


彼女、藤沢春香は、所謂陰性の統合失調症だ。昔は、そうでもなかったらしいんだが、どうやら彼女の家庭環境に問題があったっぽい。統合失調症自体、なんで発症するか分からないらしいんだが、多分、父親から坊領区や性的な虐待を受け続け、次第に精神を病んでいってしまったのだろう。付き合った当初から、彼女に笑みはなく、あったとしてもどこか遠慮と恐怖が滲んだ顔だった。だが、そんな彼女に、どこか惹かれた自分がいた。


春香とは、大学に入ってすぐに出会った。校門の前で、馬鹿みたいにあたふたしていた俺に声をかけてくれたのが、彼女だった。と、言っても、その時にはすでに発症済みだったらしく、すごく無気力そうな、蒼白な顔だった。しかし、そんな感じながらどこか儚い美しさを感じて、俺はそこから一目惚れをした。

大学で、毎日のように声をかけた。何かあるたびに、彼女に話しかけた。最初は、鬱陶しさも感じていただろう。傍から見たらストーカーでしかない。多分見かけたら俺も通報してた。

けど、いつからかな。少しずつ心を開いていってくれた。俺に見せる笑顔も、なんだか増えた気がする。


ある時、たまたま、一緒にご飯を食べていた時だった。彼女が何か袋を落とした。拾おうとすると、彼女が「あ、見ないで・・・」といって俺の手を払いのけるようにそれを拾った。その時、哀れなことに否定された拒絶されたと感じた俺は、思わず無理やりその袋を見てしまった。

それは、抗うつ剤だった。


「あ・・・その、ご、ごめッ」

「・・・見ないでって、言ったのに・・・。無理やり引っ手繰るなんて」

その声には、かすかに怒りが込められていた。そりゃ、当然だろう。

「・・・で、引いちゃったの?」

と、彼女が聞いた。

「いや・・・同じだなって思ってさ。俺も、あるんだよ。精神疾患」

すると、彼女はすごく驚いた顔をした。当然だろう、こんなに陽気を装っているんだから。

「俺さ・・・躁うつ病なんだよ。何とかうつの方は抑えているけど、家に帰るとどっと襲って来てさ」

俺の手首には、何度も引っ掻き、傷をつけた跡がある。それを、彼女に見せ、俺は言った。

「ほら、この通り。・・・だからさ、俺は引いたりしないし、むしろ・・・なんていうんだろ?仲間がいてほっとしてるっていうか」

その時、彼女の顔は、驚いたような、何か言いたげな様な、表現に困るけど、いろんな感情が入り混じった顔をした。

「・・・じゃあさ、私の愚痴、聞いてくれるの?なんにもつまんない話だけど。誰も、聞いてくれようとしなかった愚痴、あなたなら共感してくれるの?」

「共感は、内容によるけど、苦しみは、分かるはずだよ」

そういうと、彼女はほっとしたように愚痴を語り始めた。


春香の過去は、ひどいもんだった。父親は飲んだくれのバカ親。家でごろごろしている父親の代わりに、母親が仕事をしていた。じゃあ、家事は誰がしていたかというと、春香だ。小学校からずっと、そんな生活だったらしい。

そして、中学校3年生のときに、父から処女を奪われた。発育が、よかったかららしい・・・。そこから、ずっと性的な虐待を受け続けた。しかし、怖くて、そして何より母に迷惑をかけたくなくて、誰にも相談していなかったらしい。

母親についに話したのは、そこから2年後。高2のとき。リストカットをしているところを、帰ってきた母親に偶然見られたらしい。そこから、すべてが変わった。すぐさま離婚、からの母親との二人暮らし。やっと、平穏は訪れた。

だけど、心の傷がすぐに癒えるわけじゃない。それに、女の子として、一生消えない傷も負わされた。しかし、母に迷惑をかけたくないという理由で、国公立志願で受験を頑張りすぎたらしい。今はもう、何もしたくないとのこと。


似ていた。俺と、似ていた。性暴力はなかったが、その代わり俺の背中には、今でも残る煙草の跡。だから俺は彼女に言った。

「・・・じゃあ、俺達、付き合わない?」

と。

突然何を言い出すんだ?と、身構える彼女。

「身構えんなよ。違うよ、言っただろ?俺達仲間だって。2人でいれば、もしかしたら傷を舐め合うことができるかもしれないから。それに、俺、前から君のこと好きだったんだ。だから・・・お願いします」

彼女は、それを了承した。今思えば、彼女はこんなときどうすればいいか分からなかったんだと思う。ずっと、父に支配されて、男を信用してもいいか分からなかったんだと思う。しかし、彼女に、断るという言葉はなかった。だから断らなかった。最初、俺に対して愛なんてなかったんだろう。要は強迫観念。逆らったら痛い目に遭うという、強迫観念。


しかし、そこから少しずつ仲を深めていった。彼女の母とも、会って話した。お互いに苦労を知り、涙を流しあった。

そして、そこからさらに半年後、同居を許してくれた。会って、一年の時だった。


彼女は今でも、薬を飲んでいる。俺は今でも、リスカをやめられない。きっと、お互いにお互いを治療は無理だろう、専門家でもあるまいし。

でも、この日々で、少しずつ、リスカの量も、薬の量も減ってきていた。お互いに、慰めあえているのだ。




気分で書いて途中で何を書きたいのか分からなくなってしまいました。

しかし、これの自体設定は好きなので、もしかしたら改変版を出してちゃんとした物語を書くかも

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