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弐:人が狐をとらえた話

 昔、このあたりには鳥やなんやを狩る猟師がおりました。そう、狐なんかもね。

 今でもありますあの湖、あの葦の陰に縄で輪を作った罠を仕掛けておりますとね、魚を捕らえに来た鳥や、その鳥を狙う獣が引っかかるのです。

 ある日のこと、そんな若い猟師が罠の様子を見に行った時の話です。

 湖にしげる葦の陰から、助けを求める女の声が聞こえるじゃあありませんか。

 それはもう猟師は慌てましたとも。自分の仕掛けた罠に誰ぞが、ましてや女子供がかかってケガでもしようものなら大変です。

 駆け寄ってみるとまさに心配の通り、うら若き乙女が罠に足をとられ、ずぶ濡れ泥まみれで突っ伏しておりました。

 何者かのいたずらで動けなくなりました、と泣く乙女を励ましつつ猟師は足首に絡まった縄をとこうとしゃがみ込みましたが、まあそこからが驚きです。

 娘の細く白い脛をたどり罠にかかった足首から先、そこにあったのは狐の足でありました。捕らえられて気が()いてでもいたものか、それとも変化(へんげ)とはそういうものなのか。上手く化けきれてはいなかったのですね。仰天した猟師が娘の顔を見返しましたが、こちらは気付いていないのか泣き止まぬ様子。猟師も困ったことでしょう。さて、その後に煮て食われたか焼いて食われたかは存じません。

 ただ、この猟師はその後なぜかぱったりと殺生をやめ、この付近に小さな茶屋を建てて旅人相手の商売を始めたそうです。

 そしてその嫁御は常に片足を引きずっていたと言いますが、ええ、そういうこともあるのでしょうねえ。

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