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別の世界ではただの日常です

捨てよう

作者: 茅野榛人

「あーマジでキモい、あの店員」

「え?」

 今、私は職場の仲の良い同僚を自分の家に呼び、サシで飲んでいる。

「今日さ? コンビニ行ったらさ? 男の店員に、『綺麗だね、また僕に会いに来てよ』って言われたの!」

「えー! 何それ怖い」

「私その店員キモすぎて怒る事も出来なくて……はあ……夢に出てきそう……もう二度とあそこのコンビニ行かない」

「……捨てよう」

「ん? 何?」

「自分の中で店員を捨てるのよ」

「店員を捨てる? どう言う事よ」

「紙とペン持ってない?」

「……あるけど」

「紙一枚と、ペンくれない?」

「……分かった」

 同僚に言われた通り、落書き用に使っているコピー用紙を一枚と、ペンを用意する。

「これで良い?」

「大丈夫、この紙に、あの店員の顔を描くの、確か絵描いてるよね?」

「描いてるけど……店員の顔描くの?」

「気持ち悪い要望かもしれないけど、やってみてくれない?」

「うーん」

 店員の特徴をなるべく反映させた絵を描く。

「こんな感じかな……出来たよ!」

「ふーん、こんな感じなんだ」

「出来たけど……それをどうするの?」

「捨てるのよ、貴方が」

「え?」

「この絵に、本物の店員の魂が乗り移っていると思って捨てるの、破ったり、くしゃくしゃにしたりしてからね?」

「……あー……そう言う事……」

「やってみなよ、スカッとするよ?」

「……」

 私は描いた絵に本物の店員が乗り移っていると思い込んでその紙を破り、くしゃくしゃにしてからゴミ箱に放り込んだ。

「どう?」

「……確かに……これ良いかも」

「でしょ? 実は私もこれやってるの、嫌な事とか、嫌な人の事を白い紙に書いて捨てると、本当にそれをこの世から捨てたみたいな感覚になるのよ、私は絵描けないから文字だけど」

「私は……あの店員を……この世から捨てた……へへ……良い事聞いちゃった……」

「でしょ? 嫌な事は、捨てよう!」

「だね! 捨てよう!」


 翌日、ニュースであの店員が死んだ事が判明した。

 何だか本当に私が店員をこの世から捨てたように思えた。

 しかしこれは、偶然では無かった。

 私は同僚から聞いたあの方法を度々やっていたのだが、全てその通りになった。

 嫌な事は全て私から退き、嫌な人は皆死んだ。

 私は嫌な事を捨てる事が出来る能力を手に入れたのである。

 私にとって嫌な事はとことん捨てて、排除する。

 あ……車が目の前に……。


「インターネットで知ったんだけど、白い紙に、ペンで自分の嫌な事を書いて捨てると、本当に捨てる事が出来るらしいよ」

「本当? 都合良過ぎじゃね?」

「いやそれがね、一回それを実行すると、守り神が居なくなっちゃうんだって」

「へえ……って駄洒落?」

「やっぱそう思うよね……あ……そう言えば今日……また女性社員が亡くなったらしい……」

「え! 嘘! 二人目だよ?」

「もしかしたら……実行しちゃったのかも……」

「やめてよ……」

「冗談よ」

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