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惨面  作者: 死苔妖斎
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 翌日、私は1人で山へ向かいました。そう、あの廃神社に行くのです。


 半魚人から聞き出した情報によると、山の麓に暇そうなジジイが住んでいるらしく、その人に案内を頼むといいとのことでした。


 半魚人の言った通り、山の麓には背中に『暇』の字の巨大タトゥーのあるジジイが3人全裸で寝転がっていました。


「すみません、この辺りに廃神社はありますか?」


 私が質問すると、1人のジジイが「俺、行ってくるわ」のジェスチャーをして立ち上がりました。


「君みたいな人が最近多いが、あそこは呪われてるぞ。それでもいいのか?」


「いいのです」


 良いものが撮れれば呪いなんて怖くはありません。なんなら呪いも撮れ高です。


「ならついてきなさい」


 山を登るのは大変なので、ジジイにおんぶしてもらって登りました。40分ほど歩いたところで降ろされました。


「ここじゃ」


 私の身長の半分ほどまで伸びた草が一面に広がっており、真ん中のあたりにぽつんと小さな鳥居があるだけでした。建物は1つもありませんでした。


「ありがとうございました。帰りもお願いしますね」


「分かった。待っとる。暇じゃからな」


 無料タクシーとの会話を終え、神社に足を踏み入れます。所々硬い草が生えていますが、それもYouTuber魂で頑張ります。


 鳥居はそこまで古いものでもないようでした。ただ、近づいてみると、遠目で見た時よりだいぶ小さいことが分かりました。私のお乳あたりの高さしかありません。これではとてもくぐれません。なんのために建てたのでしょうか⋯⋯。


 本当に鳥居しかないので、撮影もすぐに終わってしまいました。正直期待外れでしたが、撮れ高は呪いの方に任せることにして帰ることにしました。


 無理タクシージジイのいるところへ向かっていると、足元にくしゃくしゃにされた紙が落ちているのに気がつきました。


 拾い上げて広げてみると、そこには白黒になった私の顔がありました。


「ひぃっ!」


 思わず落としてしまったので拾い上げ、もう1度見てみました。やはり私の顔です。こんな写真、撮られた記憶ないのに⋯⋯。


 あ、そうだ。半魚人が私に嫌がらせをするために置いていったのではないでしょうか。さすがの私もビビりましたし、効果てきめんですね。でもYouTuberとしては美味しい罠でした。ただ、自分の顔写真をぐしゃぐしゃにされるのは気分のいいものではないですね。


 私は紙を折りたたんでポケットにしまい、ジジイの背中に乗りました。


「ん? 兄ちゃん、なんか嫌な感じがするな」


「失敬だな!」


 乗りながら後頭部をボコスカ殴っていると、いつの間にかジジイ2台が停めてある麓に到着しました。


 心做しか乗ってきたジジイの頭が凹んでいるような気がしたので、板金屋を呼んで私はその場をあとにしました。


 その晩、私もあの夢を見ました。

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