ステータスオープン!!
気がつくと俺は水晶の前に立っていた。手には真っ白な美しい刀が握られている。感覚で理解することができた、これはセルフィッシュなんだと。
俺はこれから始まるであろう俺の物語に心を踊らせた。
自分の妄想に惚けていると、神官が口を開いた。
「神託を授かりました。あなたの天職は『魔導士』です」
武器に合ってねぇじゃねぇか。ふざけやがって。
俺が複雑な気持ちで水晶から離れると、帝国の騎士や神官から歓声が上がった。だがそれは俺に対しての歓声ではない。
「天職『勇者』が生まれたぞ!!」
「おぉー!!」
「トーナメント優勝候補だ!!」
「おい、勇者が持ってる武器、伝説の聖剣に似てないか?」
「マジかよ、才能があるってああいう奴のことをいうんだな」
次いで別の水晶からも歓声が上がった。
「天職『賢者』が誕生しました!!」
「え、勇者に続いて賢者も!?」
「見ろよ、あの杖」
「なんて神々しい魔力なんだ」
「あぁ、美しいな」
ま、まぁほら最初から天職に恵まれたやつって主人公にならないじゃん?全然羨ましくなんかないし……。ちょっと大罪武器にすればよかったなとか思ってないし。
その途端禍々しいオーラが部屋を包み込んだ。
そのオーラの中心にいたのは一人の男だ。いや、その男の持っている武器と言った方が正しいだろう。その男は少しイラついた様子で言った。
「サタン、行くぞ」
サタン……。サタンといえば憤怒の悪魔だ。ということはあれはほぼ間違いなく大罪武器だろう……。
え、俺選択間違えた?
そんなこんなで俺の異世界生活一日目が終わった。
異世界生活二日目。どうやら帝国にいる騎士や魔導士の指南を受けさせてもらえるようになったらしい。でも参加したくないなら参加しなくてもいいそうだ。
俺はとりあえず指南は受けずに、この世界の本を漁ることにした。理由はどっちの指南を受ければいいか分からないからだ。それだったら知識は本で得て、自分でやりたい特訓をするのがいいと思ったのだ。自分一人でやるのに限界を感じたら指南を受けるつもりだ。
俺がまず手に取った本は「魔道士大全」だ。この本には基礎的な知識から発展的な知識まで魔法に関する知識がたくさん載っていた。さらに現存する全ての魔法についての詳細も載っているという優れものだ。
この本の内容を超簡単にまとめてみた。
①魔法には一度武器に魔力を通してから撃つものと、体から直接撃つものがある。
②基本的に武器を通してから撃つ魔法の方が威力・弾速・射程ともに強い。しかし基本的には詠唱が必要になるので圧倒的に発生が遅くなる。
③魔法には種類があり、強い順に神級魔法・上級魔法・中級魔法・下級魔法に分類される。これとは別の括りとして、回復魔法・補助魔法が存在する。
④蘇生魔法や転移魔法などの大規模な魔法の行使には、それぞれの魔法に見合った対価が必要となる。
⑤魔法の行使には自身の魔力を消費する。天然の魔力を使うことはできない。
⑥産まれた瞬間から個人の保有する魔力量は決定する。魔力量を後天的に鍛えることはできない。魔道士の魔力量の平均は1514。
王様から自身の魔力量に関する情報はもらっていない。では確かめるにはどうしたらいいか。異世界のアニメや漫画が好きな人達なら分かるはずだ。あるだろう?自分の能力を可視化する魔法の言葉が!!
みんなもせーので言ってみよー!!せーの!!!
「ステータスオープン!!!!!」
辺りには静寂が響いた。なんでだよ、ただの痛い奴みたいになったじゃん。許せないんだけど。
とりあえず魔力量の検証は後日簡単な魔法を撃ちまくって、何回で魔力切れになるか計測することにした。今日はお試しの日だ。魔力量とかに囚われず、好きなだけ魔法と戯れたい。だから俺は窓の外に向かって初級魔法を使ってみた。
「大切なのはイメージ……」
本に書いてあった通り、手から魔力を放出させる時に出したい魔法をイメージするのだ。俺は自分の中に眠る魔力を感じた。
「ファイヤーボール」
すると俺の手から炎の球が放たれる。できた!!正直めちゃくちゃ嬉しい。ずっと憧れていた魔法使いになったんだ。今更ながら異世界に転移したという事実を実感した。俺は嬉しくなっていろんな初級魔法を撃ちまくった。
第1話少しだけ直しました。
読んでくれてありがとう!!
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