表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ネコカブカラス  作者: 山崎 モケラ
7/15

4ヶ月目 闇夜

友人の落ち込みを救いたいけど、救う方法が。


どうすれば友人を助けられるのか。


悩む俺。

ついに!

ついにこの日が来た。



俺とマコトくんはお互い何故かお揃いのような黒いリュックを背負い、恭一おじいさんの車フアットにかしこまって乗っていた。



俺が助手席、マコトくんは後ろに。

2人して言葉少なめだった。



恭一おじいさんは少し笑いながら言った『そんなビビってんなよ。とりあえずリュックをおろせよ』



俺たちは照れ笑いしながらリュックを下ろした。



俺たちはすごく緊張していた。


なぜなら、ギターを見に都内のギターショップへ行くから。



下手くそで笑われるかな。

何も知らないと、ギターに触らせてもらえないかな。

気に入ったギターが全然無いかな。



嫌なことをいっぱい考えてしまっていた。



恭一おじいさんは笑いながら叫んだ。

『おい、お前ら!かわいいかわいい大好きな子に会いに行くぞーー!』



俺達はビクーーーー!っとしてしまった。

恭一おじいさんは何を言ってるんだろ?


おじいさんは続けた。

『ギターなんてね、選ぶのに正解はないんだよ。自分が惚れた子がその人の正しいなのさ』


『だから、緊張するな!かわい子ちゃんに会いに行くと思え!』そう言って、笑った。




車で山を降りて、どんどん街になり。

街が、都市になった。



大きなビルがたくさん。


人も車も。いっぱいでそれだけで、緊張した。



『マコトくん、緊張するねー』と、話しかけようとして俺はやめた。

マコトくんは笑顔で。楽しそうに笑っていて。

本当に好きな子に会いに行くように見えた。



俺はそれを見て、ホッとして『かわい子ちゃんかー!いるといいなー!』と、心の中で思った。




楽器街に着いた。




今まで見たこともないようなほどのたくさんのギター。


マコトくんは『うわーー!』と、言いながらドンドン店内に入っていった。


PPSのギターがきれいに飾られていた。



『これ、試したいんですけど』迷わずロン毛の店員さんに声をかけて、弾いてみていた。


安い方のも弾いてみて、しばらく考えた後。


俺に向かってニッコリ笑い『音が全然違うねーー!』と、嬉しそうに言った。


いくつかの店をまわり、他の場所の楽器屋さんにも行ってみて。



もう、3時になった。


『帰ろうかー』と、俺が言うと、マコトくんは

『うん。帰ろう。俺はまたここにくるよ。かわい子ちゃんに会えたんだ。』と、顔を紅潮させて言った。



『どのギター?』と、聴くと、38万円のPPSだった。

色もきれいな深い青だった。


『これ、お前のカラスが夜飛んでるようだろ。きれいだろ。

音も華やかな音がして、俺気に入ったんだ!』


『高いギターだなー』と、俺が言うと。

『高いけど、そのうちに買うんだ』と、言って笑った。


『でも』と、続けた『5万くらいのPRSでも、充分嬉しいんだけどな。うん。それでもいい!』そう言って笑った。



それから何度もマコトくんは、ギターの話をし続けた。


今は買えない。だから、手に入らない。

ではない。



マコトくんを見ててそう思った。



欲しいものが見つかった。欲しいものが分かった。

そして、欲しい音が見つかった。



それだけで、マコトくんは嬉しそうだった。




きっと、マコトくんは38万円のギターをいずれ買うだろう。

すぐにではないだろうけど。

最初は頑張って5万円のギターからかもしれないけど。



いいじゃないか。

38万円のかわい子ちゃん。



マコトくんと38万円のギターは、出会えるべきして出会った気がした。




マコトくんはその38万円のPPSのギターをカッコよく写真撮ってそして、スマホの待ち受けにしていた。


そして、俺に何度もその画像を見せて『きれいなバードインレイだよねー。きれいな色だよねー。きれいな形だよねー』と、嬉しそうに言っていた。



そんな日が続き。



今日もいつも通りマコトくんが恭一おじいさんのギターでお弁当持って練習しに来て笑って帰った夜、夜の11時くらいに俺のスマホが鳴った。



着信の相手は、マコトくんだった。



夜遅く珍しいな。

ギターのことかな?と、クスリと笑って電話に出た『あ!なになに?!ギターのこと?』



マコトくんのお母さんだった。

取り乱した声で言った。



『マコトが自殺未遂をした』



俺は頭の中が真っ白になり、とりあえず起きていた恭一おじいさんに話した。


動揺して涙も出なければ、怒りの感情も出なかった。


ただ、なんでなんだ。あんなに夕方、楽しそうに笑ってたじゃねーかよ。


と、頭の中でぐるぐるしていた。



マコトくんのお母さんの話によると、薬をたくさん飲んだらしい。

寝ながら吐いてるところを見つけた。そう言っていた。



救急車で運ばれて、胃洗浄して。さいわいに吐いてたし。大丈夫。

今夜は入院だけど。


体は大丈夫だからと、言った。



え。カラダは?じゃ、ココロは?どうなの?

そっちが俺はすごく心配だった。



病院に入って無事だったのなら、カラダは大丈夫だろう。

でも!

ココロは??



恭一おじいさんは、明日マコトくんのお母さんから連絡くるだろう。

マコトくんから電話がくるかもしれない。



その時に、なるべく冷静に話を聞いてあげろ。と言った。


だから、今夜は眠れないだろうけど休みなさい。





マコトくんは次の日、退院しなかった。

マコトくんのお母さんから連絡があり、入院先の病院は精神科だと、教えてくれた。

会いにも行けないことが分かった。



電話が公衆電話からかかってきた。

俺は慌ててでた。


マコトくんかも!



電話はマコトくんだった。


かぼそい声で『ごめん。ごめん。』と、繰り返した。


俺は、泣けてきて。マコトくんを責めたり怒ったりもできず。あんなに怒ってやろうと思っていたのに。声で出てきたのは。


『生きててよかった』と、泣きながら一言だけだった。


そして『退院はしばらく先だから。恭一おじさんにも練習、しばらく行けないって言っておいて』と、頼まれた。



その電話があり、2ヶ月が過ぎて。


マコトくんは退院してきた。

すぐに会いにきてくれた。



やつれたようだった。




顔は笑っていたんだけど。

なんだか、心が笑っていないように見えて。

そして、驚いたことを言った。


『ギターやめようかと思うんだ』




なんでも、ギターは絶対に買わないと、あの夜お父さんに怒って言われてしまったらしい。

ギターばっかり弾いて、遊んで。


お前なんか、ろくなもんにならない。



そう言われてしまったよー。と、笑いながら涙を流していた。



俺はマコトくんのギターの音がとても楽しそうで、好きだから、やめて欲しくないと思った。


なんて言えばいいだろう?


ギターを買ってあげるといいのかな?まだ、手持ちのお金少し残ってるし。ギターなら、買えそうだ。



そんな思いがグルグルした。



恭一おじいさんも黙って話を聞いていた。



マコトくんが帰って、その夜。


俺は恭一おじいさんに言った。


『ギターをプレゼントすれば、マコトくんが弾けていいかなー?立ち直るかなー?』



すると、恭一おじいさんはハッキリ、それは解決にならないよ。と、言った。


『買ってあげるのは簡単だけど。


マコトくんのココロはポッキリ折れてしまったから、それではダメなんだ』と、言った。


そして『お前らしいやり方があるはずだよ』と俺の目を見て言った。



俺は一晩考えた。



そして、出た答えは。



俺でも驚いてしまい、単純で簡単で、笑ってしまいそうになった。



次の日も、ギターを弾かないと言う目がうつろになってしまったマコトくんが来た。



俺はマコトくんに言った。



『あのさ。ギターを怒られずに弾けるようになるアドバイスがあるから黙って聞け』と、言った。



急にマコトくんはハッとした顔になり



『なになに?!どんな方法?!』と、叫んだ。



俺は一言で答えた。



『明日から学校に行け』



最後まで読んでいただきありがとうございます

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ